6 魔力で劣る者の戦法
「……癪に障るが認めるしかないな。確かに――お前の魔力は、この俺を大きく上回っている」
エイルは悔しげな顔で言った。
「おそらく、この魔法師団の誰よりも……それも圧倒的に魔力が高い」
「素直だな」
天下の最強魔法師団に所属する次期エースが、こんなにあっさりと『俺の魔力の方が上』だと認めるとは。
ちょっと意外だった。
同時に、厄介だとも思う。
むしろ変にプライドに固執するタイプの方が、よっぽど与しやすい。
「事実は事実として受け止める。そのうえで対策を立てる――ここのメンバーなら当然のことだ」
エイルがふんと鼻を鳴らした。
「プライドや体面など二の次。俺たちは常に結果を求められるんだ。成功と勝利――それだけが俺たちの存在価値だからな」
「なるほど……ご立派だ」
うなる俺。
「俺とお前の魔力差を把握したうえで――いくぞ!」
エイルが突っこんでくる。
「魔力の大きさが、勝敗に直結するわけじゃないことを教えてやる!」
「接近戦で来る気か――」
俺は接近戦はそこまで得意じゃない。
遠距離から大火力でブッ飛ばす――という身も蓋もない戦法が一番得意なのだ。
字面を見ると、本当に身も蓋もないが……。
とにかく、間合いを近づけさせないほうがいい。
「【サンダー】!」
雷撃を広範囲に放ち、弾幕代わりに撃ちまくる。
「俺を近づけさせない気か」
エイルがつぶやいた。
「だが、そいつはさっきのジャネットとの試合で見せてもらったぞ――」
どごぉっ!
俺の雷撃が、奴を直撃した。
そのまま吹き飛ばされていくエイル。
「よし――あ、あれ?」
が、吹っ飛んでいったのは、どうやら幻像だったらしい。
じゃあ、本体はどこに……!?
「こっちだ」
すぐ目の前にエイルがいきなり出現した。
「えっ……!?」
いつの間にか接近を許していたことに驚く。
といっても、瞬間移動のような魔法じゃない。
少なくともこのゲームに瞬間移動のような魔法は存在しない。
今のはたぶん――。
「【視覚迷彩】【気配隠蔽】【高速接近】――複数の魔法を組み合わせれば、これくらいのことはできる」
エイルが淡々と告げた。
コンボ魔法――か。