5 VS序列2位エイル・クラッカー
「さあ、来いよ」
エイルが手招きした。
挑発するようなポーズだ。
「君の得意な魔法をなんでもいいから撃ってこい。俺は見事に防いでみせよう」
「攻撃させてくれるんだ? サービスいいな」
「俺は後輩に優しいんだよ」
エイルが微笑む。
「ジャネットに使った【サンダー】は見ていたが……俺には通じないからな」
野生の獣を思わせる獰猛な笑顔だった。
サービスなんかじゃない。
こいつは、絶対的な自信を持っている。
同時に、俺の力を測りたくて仕方がないんだろう。
「じゃあ、軽く」
俺は右手を突き出した。
「【ファイア】」
得意と言えば、これだ。
下級の火炎魔法。
前世の記憶が覚醒してから最初に撃った魔法――。
「な、なんだ、これは……!?」
途端にエイルの表情が凍り付いた。
「さっきの【サンダー】と比べても、一段と――」
「炎の方が雷より得意なんだ」
俺はにっこり笑った。
まあ、いちおう手加減はしてある。
全力で撃ったら、いくら防御結界が敷かれた模擬戦用のフィールドとはいえ、相手に大怪我をさせかねない。
下手をしたら殺してしまう。
「ちいっ、【アクアシールド】!」
エイルが魔力の盾を出現させた。
単なる盾じゃなくて、水属性を備えた盾。
俺が火属性の【ファイア】を撃ったから、それに対して有効な防御を瞬時に選択したんだろう。
オーソドックスな戦い方で、その選択自体は正しい。
ただし――、
じゅうううっ……!
「馬鹿な!? 俺の盾が一瞬で蒸発――!?」
「その程度の水じゃ俺の炎を止めるには力不足だったな」
爆発と共に、エイルは吹き飛ばされた。
俺が手加減したのと、【アクアシールド】に触れた際に熱量の大半が失われていたため、小爆発程度だが。
「くっ……」
エイルはすぐに立ち上がって来た。
吹っ飛ばされた瞬間に風魔法を発動し、空中で体勢を立て直して着地したのだ。
判断力も、魔力の発動速度も、十分に一流のようだった。
「やっぱり、強いな」
俺はエイルを見て言った。
「……こっちの台詞だ」
エイルの顔はすっかり青ざめている。
「お前の魔力……どうなってるんだ……!? 本当に人間か――」