4 次期エース登場
「ジャネットが……こんなあっさり……!」
「彼女の【ミラージュボルト】は幻影といっても、本物に限りなく近い威力を持つ雷撃なのに――」
「ああ、本物と分身合わせて七つの同時雷撃攻撃を、たった一発の、それも最下級雷撃魔法の【サンダー】で吹っ飛ばすとは」
「あの子の魔力、ちょっと異常だな……」
百戦錬磨にして一騎当千のはずの魔法師団の団員たちが、ざわめいていた。
敗れたジャネットもサバサバした顔で、
「あーあ、格好悪い。でも完敗ね」
と、俺に手を差し出してきた。
「これから君が同僚になるなんて頼もしいわ。よろしくね」
「よろしくお願いします」
俺はその手を握り返した。
「さすがだな」
と、クーデリアが歩み寄る。
「みんなも見た通りだ。これで彼を学生だと侮る者は、もういないと思う。我らと同等の――それも即エースになってもおかしくない逸材だ」
その言葉に団員たちが一様にうなずく。
「それを踏まえた上で――次は誰だ? 誰でもいい。レイヴンとやってみろ」
「――じゃあ、俺が」
即座に進み出たのは、黒髪の勝ち気そうな青年だった。
今の試合を見ても、まったく臆した様子がない。
「この魔法師団のエースが誰なのか、はっきりさせないとな」
「エース……つまり、あんたがナンバーワンなのか?」
「いずれな」
俺の問いに、青年が笑った。
ということは、やっぱり現状ではクーデリアが最強なんだろう。
「言っておくが、彼――エイルは、いずれ私を超えるかもしれない逸材だ。レイヴンも気を抜くなよ」
クーデリアが言った。
「なるほど。才能あるんだ」
「……馬鹿にしてるのか」
エイルがムッとした顔になる。
「いや、分析してる」
何せ魔法師団のキャラは、本編では速攻で死んでしまうカマセ役だからな。
実際の実力がどの程度か、図りづらいんだ。
カマセといっても『シナリオの都合』で全滅した側面は大きい。
本来の実力は高いはずだ。
さっきのジャネットだって、俺が瞬殺したとはいえ、ゲーム内で実装されていれば、それなりの強キャラだったはず。
そしてエイルは、それよりさらに上の実力を持っているんだろう。
気を引き締めてかからないと、な。