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第七話 英雄よ、反撃の狼煙を掲げよ



 私はガルクと共にダンジョンから帰還した。すると、多くの冒険者に囲まれて拍手喝采を浴びる。どうやらドラゴン退治の一部始終を見ていた冒険者…恐らく私がポーションを無理矢理飲ませた男性…が私達の闘いの様を広めたらしい。恥ずかしいけど、悪い気はしない。


 私とガルクはその場で結婚したことを打ち明けた。拍手喝采が更にヒートアップする。何故か地団駄を踏む男性冒険者が複数いたけれど。


 するとその場の勢いに任せてかガルクが口づけをしてきた。大勢の前でやるのは恥ずかしいけれど、それでも受け入れて目を閉じる。周りが騒ぎ立てるのがよく分かった。


 流石に長いことする訳にもいかないのかすぐに離れた。そこで物足りないと思ってしまった自分が恥ずかしい。その様子を知ってか知らずか、ガルクが




「後でもっとしてあげる」




 と耳元で囁くのだから心臓のバクバクが止まらない。ガルクが笑っている。やられっぱなしだった私は一矢報いるつもりでガルクの耳元で囁き返した。




「…ありがと」




 ガルクが仰け反った。私なりに精一杯色っぽい声を出したのだけど、どうやら効果は抜群だったようだ。お互い真っ赤になりながら、ふと周りを眺める。


 周りではタッグを組む冒険者達が各々向き合っていた。男性同士でお互いに謝罪するもの。女性同士で抱き合うもの。男性が女性に告白するもの。多種多様だった。告白した人達が大抵フラれているのは笑ってしまったけど。


 ソロプレイ主流のこのゲームに本来有り得なかった光景が目の前に広がっていた。




「なんか、晴れやかな気分だね」




 ガルクが話しかけてきた。




「そう…ね…」




 その光景を見つめながら、私は一つ決意をしていた。




 二人で手を取り合いながら私達は宿屋に戻った。シュルツさんがお出迎えしてくれる。




「おかえりなさい。二人とも、おめでとう」




 結婚の話はここまで伝わっていたらしい。シュルツさんにそう言われて少し頬を赤くしてしまった。




「ログアウトで良いかな?」




「はい、お願いします」




 シュルツさんにそう言って、ガルクと向かい合う。




「じゃあ、また明日」




「うん…また明日ね」




 私は名残惜しい気持ちをかかえながら、そっと目を閉じる。最後にガルクがさっと口づけをしてきた。それだけで限りないほどの満足感が全身を駆け巡った。








 私は目を開けると機械を外した。周りを見ればすっかり夜になってしまっていた。私はベッドから起き上がると、一目散に一階へ駆け降りた。


 廊下にお母さんがいた。あまりに急に降りてきたからかビックリした目でこちらを見つめてくる。




「お母さん」




 まともに話しかけたことなどいつ以来だろうか。




「…今まで無視してごめんなさいっ!」




 私は頭を下げた。目には涙が浮かんでくる。お母さんの顔は下を向いているから見えない。




「…お母さんの方こそごめんなさい。菜生が誰よりも努力していることを分かっていながら、何も言ってあげられなかった…」




「でもっ、ご飯を作ってくれたり、服を洗ってくれたり、ゲームを買ってくれたり…お母さん無しでは生きていけないのに、私は…」




「あまり自分を責めないで頂戴。テストではいつも満点に近い得点だったじゃない。それはエラいことよ」




 …ゲームに全てを捧げていたとはいえ、いや寧ろ捧げたいからこそ、テストでは常に高得点を取って、母親に文句を言わせないようにしていた。




「でもあれは…ゲームをする為であって…」




「それでも良いのよ。菜生が裏でちゃんと勉強してること、お母さんは分かっているから。でも日付が越えるぐらいにはちゃんと寝なさいね。勉強する為でもそんな時間まで起きてるのは関心しないから」





 私はいよいよ涙腺を抑えられなくなり、お母さんに抱きついて泣きじゃくった。今までこれほど泣いたことは無い。お母さんは私の頭を撫でてくれた。たった二人だけの家族が復活した瞬間だった。




 その日の晩御飯は私の大好きなチーズハンバーグだった。

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