第三話 that Figure is Miserable and Adorable
太陽…とは言ってもデータとして存在しているだけ…に照らされながら私はガルクと共にダンジョンへ向かう。
数日前に新たなダンジョンが実装されてから、私とガルクは毎日そこの攻略に勤しんでいる。歴代最強と称されるダンジョンであり、行方不明者や大怪我をして帰ってきた者が続出している。それでも報酬が美味しいので潜る冒険者は後を立たない。
ダンジョンの入り口にあたる洞窟まで来た。このダンジョンは洞窟型で、迷路のように広がっている。多くの人間によってマップも作られているけど、何層も折り重なる空間の全容は未だ不明。一層で他のダンジョン一個分とまで言われている。
私とガルクが赴くのは第四層。最近になって第三層から第四層降りる階段が発見されて、まだまだ未開拓の層。だからこそ冒険する価値があるというものだ。
幸い、第三層までは大したモンスターが出なかったのでスムーズに降りて行けた。
「第四層到着、と」
ガルクが地図を見ながら言う。ガルクがいる明確な利点は方向音痴な私に変わって地図を見てくれること。
「昨日は西へ行ったよね。カリン、今日は何処行く?」
「南に行く」
「了解」
そして私達は今日も第四層の探索を始めた。
暫く進むと、小さな広場に出た。地図には載っていない場所らしい。何か意味があるのか考えていると、
「オオオオオオオオオオ!」
「!?」
背後からモンスターの声が迫る。咄嗟に振り返ると、オークがいた。だが第一層のオークは茶色なのにこのオークは水色。強化個体だろうか。
水色のオークは持っていた棍棒でガルクに殴りかかる。ガルクは盾を出して防戦する気。その姿勢が苛立った私は思いっきり地面を蹴ってガルクとオークの間に割り込むと、剣を抜きオークを横一線に切り裂いた。
オークは攻撃力こそそれなりに高いが防御力は低い生き物だと知っている。だからさっさと攻撃してしまう方が早い。そう思っての判断だった。
ところが、オークは一瞬左に傾いたものの倒れることはなく、無理に動いた反動で前のめりに体制を崩した私に向けて棍棒を振り翳してきた。
私は動揺を隠せない。いくら魔法をつけなかったとはいえ、オークが私の斬撃を耐える訳がないと思っていた。まずい。思いっきり一撃を食らってしまう。
「しゃがんで!」
後ろからガルクの声がする。体制の維持もままならない中辛うじてしゃがむと、頭上を火の玉が通過しオークに炸裂した。
オークの体は燃え始め、あっという間に倒れてしまった。私は体制を崩しながらも次の一撃に備えたけど、オークはもう動かなかった。
オークの体が塵となり、ドロップ品が出てくる。拾ってみると「オークロードの皮」と表示された。やはり強化個体らしい。
「ガルク、オークロードなんてモンスター知ってる?」
「いや…聞いたこともないな」
これまで第四層に潜った冒険者なんて幾らでもいる。にも関わらず見たことのないモンスターが出てきた。そこから考えられる可能性はレアモンスターか、それとも…
「…ボス部屋が近いってことかな」
「そうかもしれないわね」
そう、この層のボスが近い可能性。このダンジョンは各層にボスがおり、それを倒さないと下の層に降りる階段が出現しないということはこれまでの階層で分かっている。当然そんな重大な役割をしているモンスターなので、並大抵のモンスターは比にならないレベルで強力なボスである。最も、それでもソロプレイを貫くのがこのゲームの冒険者なのだけど…
その時、広場の奥の薄暗い通路から悲鳴が聞こえた。