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明日も笑って  作者: 皐月
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読めなかった….まさか皆んながいるところで堂々と反抗に及ぶなんて

油断をしているつもりはなかった

6月8日を迎えられた事にホッとした瞬間は確かにあるがそれでも僕は警戒を怠るつもりは…


あの瞬間僕は見た

霊に取り憑かれたサラリーマンと同じ顔をしていた先生を

単なる事故の可能性も勿論ある…でもそうじゃないと僕の直感が全身に立つ毛がそう告げている

悲鳴、ブレーキ音、ゴムの焦げた匂い…迫る車全てが鮮明に思い出せる僕には何もできなかったそしてそのまま…

恐らく先生はともえちゃんを道に突き飛ばした?

そうじゃないとあんな道の真ん中で転ぶような事になるはずが無い


まだ目の前で元気に笑っているともえちゃんを見ると怒りと申し訳なさで気持ちがぐちゃぐちゃになってしまう

ともえちゃんを殺すつもりはなかった

それでも結果として僕のせいでともえちゃんが死んだんだ

僕が余計なことなんてしなければ…

こうなるなんて知らなかったんだ


僕は逃げられないんだ

この時間の牢獄に囚われ数々の悲劇を作り出してしまった


僕が焦りと不安と後悔に押しつぶされ

頭を抱え込んで蹲っていると

ぽんぽんと肩を叩かれた


「どうしたのはる君!元気出してよ!!」

顔を上げると目の前には花が咲いていた


いつもそうだった僕が人知れず落ち込んでいるとあかりにだけは気付かれてしまう

あかりは気づいてなんていないのだろう

その笑顔で勝手に救われてる人間がいるなんて


最初にここに戻ってきた時

挫ける心も弱音も後悔すらもう捨て置いたはずだった

僕にしかできないから

皆んなを救う為強くあろうともがいた…

でも何もうまくいかなかった

僕が友達の命と引き換えに手に入れた情報ではまだ足りない


ごめん皆んな僕は弱い人間なんだ

だから…だから僕はここにいる

皆んながいないと明日も笑えない、1人じゃ何も成せないような弱い人間が僕なんだ

僕には明日も皆んなが必要なんだ

だったら考え続けろ、思考を放棄するな


今までの経験を全て使え、先生は幽霊に取り憑かれていた?

だとしたら何処で?

僕は今まで犯人は無差別に人を殺したいのかと思っていた

じゃあ何故僕の周りの人ばかり狙われるんだ?

犯人がいるとしてそいつは僕達に恨みを持っている?

サラリーマンは校庭の霊に取り憑かれた

僕には校庭の霊がそんなに悪いようには見えなかった

やはり誰かが意図的に霊を操り取り憑かせたのだろうか

少なくとも犯人は狙いをつけている、そして自分の手はできるだけ汚したくなかった

あの日双葉先生は校庭にいた…

でも先生も霊に取り憑かれていたし

いや、もし先生が犯人で霊にも取り憑かれていなかったとしたら…

駄目だやっぱりおかしい

先生に僕達を恨む理由がない

それに僕は優しい双葉先生を信じている…


「…おーい!はる君〜?」


気がつくと目の前であかりが手を振っていた

僕が勢いよく立つとあかりに頭が当たってしまった

あかりは痛いと口を膨らませて拗ねてしまった


幸い時間はある

大丈夫!昨日の今日より、今日の僕の方が上手くやれるさ

僕は今までのように僕が未来を知っている事を信じさせた


***


「霊媒師さんに聞きたい事があるんです」

少女の霊が成仏した後僕は思い切って聞いてみた


「なんじゃい?聞きたいことってのは?」


「双葉先生に霊は憑いていましたか?

それと…」


「ふむ、それと?」


「霊を意図的に怒らせたり操る事ってできるんですか?」


「小僧お主がそんなことをするようなタイプには見えんが

霊を意図的に怒らせる方法も操る事もできる

お前さんそんな事を知って何かしでかすつもりじゃないだろうな?」

霊媒師さんの声は静かだが言葉には力強さを感じた


「誓って悪い事はしません」

僕はキッパリと答えた


「そうか、ふむ…あぁ先生の事じゃが今のところ霊は憑いてはおらん

….じゃがこのさ先もそうとは言えん

さっきも言ったが精神的に不安定な人間というのは霊に取り憑かれやすい

それでなんじゃが先生に関してはよく分からないんじゃ

あまりにはっきりと二重に見えるものじゃから不安定なのか安定している状態なのかなんとも言えんのじゃ

すまんのう、力になれんくて」

霊媒師さんは申し訳なさそうに言った


「い、いや全然!ありがとうございました」

僕は深々とお辞儀をした


「小僧、いや小僧と呼ぶべきではないかも知らんが

あんまり気負いすぎるんじゃないぞ」

霊媒師さんは僕の背中を叩き校庭を後にした


この人は本当は全部気付いていたのかもしれない

僕が精神的に参っていた事も

もしかしたら未来から来た事すら

霊媒師さんに本当のことを話せなくて申し訳ないな

困った時に本当の意味で助けになってくれる

頼れる人だ


でもこれでハッキリしたやっぱり霊をけしかけた何者かが存在する可能性が高い

取り敢えず先生には気をつけてもらわないと

同じ明日を繰り返す訳にはいかない


「じゃあ皆んな明日学校で」


「あかりちょっと待ってて、職員室行ってくる」


「分かった」


職員室の窓をノックする


「はいはいどうしたの?」

事務の人が窓を開けて顔を出してきた


「双葉先生いますか?」


「あー、双葉先生ねちょっと待ってて」


事務の人が奥の方に先生を呼びに行ったがそのまま戻ってきた

どうやら双葉先生はいないようだった

もう帰ってしまったのだろう、仕方ない明日の朝言うしかないな


***


考えなくてはならない事が多すぎる

家のベッドで寝転びながら何となく写真が見たくなった

今日撮った写真を胸ポケットから出そうとして初めて気がついた事がある

胸ポケットには写真が4枚入っていた

全部あの時の写真だけど僕の表情だけが変わっていく

とびきりの笑顔の僕

戸惑ったような笑顔の僕

ぎこちない笑顔の僕

そして…笑う余裕もない僕

僕が戻る時写真も一緒に戻っているのだろうか

とびきりの笑顔の僕はきっと本当の意味で初めて撮った写真だろう…僕にもこんな顔ができたんだな


さて、このままだと明日先生が取り憑かれる可能性が高い

時間を考えると先生が取り憑かれたのは自由時間の間…か?

霊媒師さんは霊に取り憑かれにくくするには自分が今精神的に不安定な事を自覚し、強く意志を持つしかないと言っていた

気負いすぎるな…か

もっと助けを求めてもいいんだろうか


自分が起こした行動の結果が生むイレギュラーが

新たな悲劇を生むのではないかと恐くなってしまう

これ以上誰かが死ぬのはごめんだ


僕には霊が朧げにしか見えない

先生に憑いている霊を僕は確認する事ができなかった

ともえちゃんは僕よりはっきりと霊が見える

明日はともえちゃんと一緒に先生から離れないようにして、万が一ともえちゃんに霊が見えるような事があればそこに近づかないようにしないとな


よし、明日やる最低限の事は決めた

あとは今ある情報でどれだけ犯人を絞り込めるかだけど…

まず犯人は僕達に恨みが有る可能性が高い

少なくとも僕達を知っている人である

これは今まで僕達4人のうちの誰かが被害に遭っているからそう断言してもいいだろう

そして霊を操る術を持つ

僕の知ってる人でこの条件に当て嵌まる人は1人だけ

霊媒師さんだけだ

でもあの人はそもそも今回僕達が会いに行ったのがファーストコンタクトなはず

あの人が僕達に恨みを持つはずがない

あんなに良い人を疑うなんてまずできない


霊を操る事ができる人なんて本当に知らない

操る方法すら知らない


これまでの出来事全てに関係している人…

僕の推論はいつも同じ人に辿り着いてしまう

思考がロックされてしまっているのかもしれないな

双葉先生を疑うなんてどうかしているのに

先生が僕達の事を大事にしてくれているのは肌に感じるくらいなので間違いない、でないとあれほど小学生の皆んなから慕われるような事にはならないだろう

それこそ先生がシリアルキラーでもない限り…


“ふぅ”僕はゆっくりと息を吐き強張る体の力を抜いた


僕の思うようなシリアルキラーなら自分の手で直接殺したいとか思うだろうし、それだと霊を使ったりするのはなんかイメージと合わないんだよなぁ


僕は考えに耽っているうちに眠りについた


***



2度目の6月8日だ

ぐっすりという訳にもいかなく、かなり疲れが溜まってしまっている


僕は体を伸ばして気合いを入れた


***


「おはようともえちゃん」

学校に来て1番に声をかける


「おはようハル君」


「ちょっといい?」


僕はこっちきてよと手を動かした


「おいハルが告白しようとしてるぞ!!」

クラスメートの1人がそう叫んだ


皆んなが一斉にこっちを見る

ともえちゃんも驚いた顔で僕を見てる


「違うって!!!ほんとにちょっとお願いがあるだけだって」

僕は間髪入れずに返した


「ほんとにーー??」

なんか知らないけどあかりのやつはちょっと不機嫌だ


「ほんとだってほんと!」


「なら良いけど!」

そっぽを向くあかり、ふふっと笑うともえちゃん


なんだなんだ!?


「あかりちゃんちょっとお願いがあるんだ

あかりちゃんって僕より見えるよね幽霊が?」


「どうやろ、まぁそうかもしんない」


「じゃあさ今日先生に幽霊がついてないか見てよ」

僕は両手を前に合わせてお願いした


「でもハル君うちら昨日女の子の霊成仏させたんとちゃうんか?まだなんかあるん?」


「…いや別にどうって訳でもないんだけど

ちょっと嫌な夢見てさ」


「そうなんどんな夢?」


「え、あんまよく覚えてないんだけど…確か先生に良くないことが起こったんだよね

だからちょっといいかな?」


「まぁそんくらいうちに任せぇ」

ともえちゃんはやる気十分だといわんばかりに胸を張っている


「ありがとう、助かった」


「…アイス」


「ん?」


「今度アイス奢ってや」


「分かったよ、奢るから、本当に任せたよ!」


会話が終わった後教室に戻ったともえちゃんは何やら女子に詰められていたチラチラとこちらを見つめるクラスの視線が痛い

普段は高校の教室で大人しくしている空気みたいな存在なので慣れていないのだ


先生に伝えないと

先生に霊だの何だの言っても信じてもらえないし

まぁとにかく気をつけてもらうか

先生が教室に来るより早く僕は廊下で先生を見つけ話に行く


「双葉先生ー?」


「あら、ハル君どうしたの?」


「先生最近疲れ溜まってないですか?」


先生が驚いたように固まってる


あ、あれなんか僕変な事言ったかな


「ハル君普段から大人びていたけど

今日は一段と…なんか営業の人みたいね」

先生はフフっと笑った


「最近疲れて記憶がないとかそんな事ないですか?」

僕はそんな事気にせずに聞いた


「あら、どうしてそんな事を聞くの?」

先生とは思えないくらい冷たい声がした


「いや心配してるんですよ、先生最近元気なさそうだったから

とにかく気をしっかり持ってください!」

僕は足早にその場を去った


1時間目は算数だ

「ともえちゃん先生に憑いてる?」


「憑いてない」


2時間目は国語だ

「先生に憑いてる?」


「憑いてない!」


3時間目は理科の実験だ

「先生に…」


「憑いてない!!

休み時間の度に聞かなくても

憑いてたら教えるから黙って!」


しつこく聞いてともえちゃんを怒らせてしまった


「ごめんよ」


でも心配だったんだよ


“キーンコーンカーンコーン”


「あぁもう授業始まっちゃうじゃん

教室移動だよ」


そうだった3限目は理科の実験だった

確かガスバーナー使うんだったっけ

僕達は走って理科実験室へと滑り込んだ


理科実験室では4人くらいで1グループになって実験をする

僕はあかりと同じグループだ


「はい、今日はガスバーナーを使った実験をします

火を使う危ない実験なのでよーく動画を見てください」

双葉先生はそういうと10分ほどの実験動画を流した


ガス調節ネジに空気調節ネジ

あったなーそういうのもう全然覚えてないや


「何か分からないところありましたか?

…オッケーじゃあみんなやってみてください

あ!ガス漏れには気をつけてくださいね」


「はる君覚えてる?最初どうするんだっけ?」


「最初はガス管が閉まってるか確認でしょ

それで次は…」

僕は動画のまんまをもう一度あかりに教えた


「さすが!」

手を叩いて褒めてくれるあかり


「いや、覚えてない方が問題だろ!」


ふと先生の方に目をやると先生は目を開いてこっちを見ていた


うっあの顔やめてほしいな

実験だから先生も気を張っているんだろうけど

一瞬幽霊が憑いてるんじゃないかと


「はる君火つけるのこわいよー」


「しゃーないだろ、僕達もやんなきゃいけないんだし」


“ボッ”マッチに火が付く…オレンジ色の光は僕の視界を埋め尽くした

































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