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明日も笑って  作者: 皐月
3/7

5

“はぁっはあっ”


息ができる!息が吸える


目一杯空気を吸い込みゆっくりと吐き出す

何回かこれを繰り返して心を、体を落ち着かせる


間違いない、僕は殺された

認識が甘かったと言わざるをえない

子供の力では成人男性に勝つなんて無理だ


鮮明に思い出す首を絞められるあの感覚

僕の首など容易に覆ってしまう大きな手を

息を吸おうともがいて自分の喉から聞こえる息が詰まったかのような音を

…しばらくは忘れられそうにないな

僕は震える手で首を優しくさすった


ともあれ僕達は犯人を特定する事に成功した

元々通り魔事件で被害者と犯人を結びつけるのは難しい中で

顔も名前も分からない犯人を見つけられたのは上々だと言えるだろう

7年後もできなかった事を僕はやってのけたのだ

それでもリスクに見合うもの。では無かった

偶々僕はまた戻る事ができたが…

戻れなかったら…

とにかく2度とあんな思いはごめんだ

僕はこの世に1人とていないだろう死を知っている人間になってしまった

光栄だなんて思えない別になりたくも無い唯一の称号を手に入れてしまった訳だ


あのサラリーマンは幽霊に取り憑かれあかりに襲いかかった

この推論が当たってるとするならば

あのサラリーマンに動機はないしかも

あかりを襲う1秒前もおそらく襲っている瞬間その時すら

彼にはあかりを殺す気が全く無かった

“彼自体には”

記憶があるかどうかも定かではない

仮に今回僕達がサラリーマンを止める事に成功しても根本的な原因である霊を何とかしない事にはきっと別の犠牲者が出るだろう


やはり…除霊か?

え?でもどうやってすんだそんなの?

幽霊?お化け?そんなもん退治できるものなのだろうか

ともえちゃん幽霊見えたって言ってたし

何か知ってないかな


***


「えっ?じゃあ本当に今日起きる事を知ってるの?」


皆んなは首を傾げているが信じてはくれたようだ


「だからそう言ってんじゃん」


良かった今回は前より早く説得できたまだ時間が残っている


「マジかよ」

遼君は驚いているが単純な遼君の事だきっと全てを信じてるに違いない

そこが彼の良いところである


「それで…ともえちゃんが言おうとしていた幽霊の話なんだけど…何処で見たの?」


「うちは校庭で見たよ

なんか凄く怒ってるみたいだった」


「え?何?幽霊?お前らマジで言ってんの?」


「はる君?」


普段僕はオカルトの話なんてしないし

どちらかといえば科学的にどうこう言う人ではあるからな

たぶん皆んなの目には幽霊なんて存在を信じるタイプには見えていないだろう

そりゃこうなるか


「そこにいるかいないかは置いといて今日その幽霊が僕達に

悪戯するんだよ

だから皆んなで何とかしないと」


僕は何を言っているんだろう、今日起きる事を知ってるだの

幽霊がいるだの、一体何処の馬鹿がこれを信じるんだ


「まぁでもハルが言うならいるんだろうな」

遼君は頭に腕を組みながら頷いている


なんか分からないけど信じてくれたよ!


「はる君は嘘つかないもんね」

あかりの真っ直ぐな瞳が僕を見つめる


お前達…!!ピュアだ!!命に変えても守りたいこの少年少女達のピュアな心を


「それで…ともえちゃん除霊ってどうすればできるかとか知らないかな?」

僕はハニカミながら言うことしかできなかった


「えぇっ!?そんなんうちも知らん

でもうちの近所のばぁばなら知ってるかも

霊媒師だって言ってた」


婆さん霊媒師…なんだ凄く胡散臭い…でもこれしかない、か


「じゃあ霊媒師さんのとこに案内してよともえちゃん」


***


ここか、ともえちゃんに案内してもらった先にあったのは何て事ない普通のボロ屋

…年季が入ってるとこだけはぽいな


“ピンポーン”


「すいませーん?八雲さんいらっしゃいますか?」


「あらあらともえちゃん、どうしたんじゃ」


中から数珠を下げた胡散臭い婆さんが出てきた


ん?待てよこの婆さんなんか見覚えあるような…

そうだ!!街中でいきなり声かけてきたあの婆さんだ!

これは胡散臭いとか思っててごめんなさいだわ

きっとこの人は本物の霊媒師に違いない


「霊媒師って本当なんですか?」

遼君がちょっと訝しりながら聞くと


「なんだい坊主達、冷やかしかい?」

霊媒師さんがギロリとこちらを睨んだ


たぶん相当な冷やかしを受けてきたんだろう

普通に生きてきた人ならまず霊媒師なんて存在認めはしないだろう最初は疑ってかかるものだ

ともえちゃんと喋ってる時は優しそうだったけどやっぱりちょっと怖い人かもしれない

霊媒師さんは僕達3人の顔をひと通り睨め終わると


「何だい坊主も見えるのかい?」

と僕の方を向いて言ってきた

よく分からないがそういうものを感じ取れる人なんだろう


「えっいや俺は見た事ねぇっす」

遼君は手をふりながら答えた


「あんたじゃないよそっちの坊主だよ」


「あ、はいすいません」

遼君は完全に霊媒師さんにビビっている


「はい、お願いがあって来ました」

僕は畏まった声で言った


「そうかい、入りな中で話を聞くよ」


婆さんは体をどけて中に入りなと手を動かした。が…

暗い…先が見えない

それこそ本当に幽霊でも出そうな雰囲気だ


「はる君!」


あかりが腕に飛びついてきた

怖いと思っていたが自分以上に怖がるあかりを見ていると何故か怖くなくなってきた


***

暗くて少し長い廊下を抜け

霊媒師さんに通された部屋もなんて事ない普通の部屋だった

特にお札が貼ってあるという訳でもなく

奥の部屋の扉だけお札が貼ってあったが、なんか怖くてあの部屋に何があるのか聞く勇気は持てなかった


僕は見たものとやりたい事を霊媒師さんに伝えた


「除霊がしたいじゃと!?」

霊媒師さんが声を荒げながら言った

怒っているのか驚いたのかどっちか分からないが

たぶんこれは両方だろう除霊っていうのはあまり良くない事だったのかもしれない


「良いか坊主、自分から何かをしてやろうなんて霊は殆ど居ない、まして人に危害を加えられるような霊はわしもほとんど見た事がない

除霊とは霊を無理矢理天へと送る方法じゃ、正しい除霊法で行わなければただ霊を苦しめ怒らせる事になる


…駄目だね、お前達に教えて一朝一夕にできるような事じゃない」

霊媒師さんは口をへの字にまげて難しい顔ををしている


塩を撒いたりだとかそんな簡単な方法ではうまくいかないか

それでもどうしてもあの霊だけは除霊しなくてはならないんだ

そうでないと僕はまた誰かを見殺しにする事になる


「どうかお願いします!!どうしてもやらなきゃいけないんです!!」


僕は頭を下げた

霊媒師さんはしばらく黙り込んだ

その間も僕は頭を下げ続けた

周りの皆んなは僕があまりに必死なので呆気に取られている


僕の必死さが伝わったのだろうか


「…良いだろう、ただし除霊は行わない

それにわしも同行する」

と霊媒師さんは言ってくれた


「除霊をせずにどうやって霊を滅するのですか?」

僕は聞いた


「滅するなどとは物騒な

成仏させるんじゃ

霊の声に耳を傾け霊の願いを叶えてやるのじゃ」


なるほどよく聞くような聞かないような話だ

霊のお願い事を叶えてやる事で霊はこの世の未練を果たしそれに満足して成仏する


ずっと側で静かに話を聞いていた遼君だったが怯えつつも興味はあるみたいで

「じゃあさ霊に取り憑かれたりしたらお祓いってどうやってやるんすか?」

と霊媒師さんに聞いた


「あそこのお祓い部屋でやるのさ

よかったら見るかい?あんたには悪霊がついているよ

はらってあげよう」

不敵に笑う婆さんの指差した部屋は僕が先程怖いと思ったお札が貼られた部屋だった


「えっ…」

遼君から聞いたこともないような凄く小さな声が聞こえた


「嘘じゃ、憑いとらん安心せいハハハ!」

霊媒師さんは遼君を揶揄う事を楽しんでいるようだった


怯える遼君は僕も見た事が無かったので面白いと思った事は言わないでおこう言ったら怒り出しそうだ


「あ、あのそれでお金って…」


ともえちゃんの一言で大事なことに気付く

どうしよう何も考えてなかった


「ガハハハ!ともえちゃんや!!わしは本当に困ってる子供から金を取るほど性根が腐っちゃいないよ!さっさと霊の元に連れてきな!」


無償の親切ほど怖いものは無いというが

霊媒師さんから怖いものは何も感じなかった


ともえちゃんの先導の元僕達は学校へと足を運んだ

校庭の端に植えられた桜の木には新緑が生い茂り

人がいない校庭にはチラホラと顔を出してきた蝉の声だけが響いている

まだお昼頃だというのに閑散とした学校は不気味さをか持ち出していた


学校の門をくぐると僕達に気付いたのだろう

双葉先生がこっちに向かって歩いてきた


「あら、はる君達今日は学校休みだけどどうしたの?」


学校が休校でも先生達は学校に来ているのだろうか


二葉先生は思いやりのある先生で生徒皆んなから好かれている

僕達の学校は田舎という事もありひと1学年に2クラスあるかないかといった所だ

僕達の代は2クラスだけで1クラス30人ほど

僕達は皆んな同じクラスだ


「校庭で遊ぼうと思って」


「そうなのそれは良いね、ところでそちらの人は誰かのおばあちゃんなのかな?」


学校に部外者を連れてきたってバレると怒られるよな?


「僕の知り合いの人で子供だけで遊ぶと危ないからって

学校まで着いてきてくれたんです」

僕は流れるように嘘をついた


詐欺師の才能が…いやないな小学生を騙すのに苦労したんだから


「あらそうなの!初めましてこの子達の担任をしてる双葉というものです子供達が迷惑かけてすみません」


霊媒師さんも僕の話の内容に合わせてくれた

先生と社交辞令ほどの会話をすませた後


「先生は幽霊とか見えるのかい?」

と霊媒師さんが聞いた


「え!?幽霊!?い、いや私そんな怖いもの見えないですよ!

見えたとしても見たく無い…」


先生が嘘をついてる様子もないし

そもそも双葉先生は嘘をつけない性格だ


「今から校庭で遊ぶの?

遅くまで遊びすぎてお婆さんに迷惑かけないようにね」


「「はーい」」


「霊媒師さん双葉先生になんかあるんですか?」

僕は聞いた霊媒師さんがわざわざ幽霊が見えるか聞くんだから何かあるんだろう


「ふむ。幽霊とは肉体を持たない精神体なのじゃ

その幽霊が人に危害を加えるには肉体を持つ精神体を媒介に、俗に言う憑依って事をするしかない

そして幽霊が取り憑く人間というのは存在がぶれた人間じゃ

まぁだからなんじゃ、精神体が不安定な人間じゃな

よく聞くポルターガイストはまぁ危害を加えるまでにはいかん事がほとんどじゃ

わしには先生の軸が二重に見えたんじゃ」


霊媒師さんは小学生の僕達にも分かるくらい分かりやすい説明をしてくれた


「じゃあ先生は幽霊が取り憑く事のできる人に見えたって事ですか?」


「なんというかそういう精神体がハッキリとしない人間はまぁいる事にはいるんじゃがあの先生は精神体が不安定というかハッキリと二重に見えた…わしも初めて見るタイプじゃから断言はできん」


なるほど先生が幽霊に取り憑かれる危険性があるなら早目に成仏させないといけないな


校庭に入ると霊媒師さんは桜の根元を見てこう言った


「あー…おるさね

赤い服を着た可愛らしい女の子じゃないか

こんな子が人を傷つけるとは思えないけどねぇ」


どうやらお婆さんは幽霊を見つけたらしい

僕にも何となくそこにいるっていう事はわかるのだが

見た目や雰囲気などまでは感じ取れない

お婆さん曰く幽霊は人間が死に近付き霊体に寄った時や

幽霊自体の感情が高まった時より見えやすくなるらしい

前回僕がハッキリと姿を捉えられたのもそういう事だろう


お婆さんは数珠を手にすると

目を瞑ってしゃがみ込み合唱をして

幽霊と対話し出した


お婆さんの話によると

この幽霊はどうやら僕達と似たような年齢で

まだまだ遊び足らないようだ

そこで僕達はこの幽霊と遊ぶ事にした


いつもは頼りがいのある遼君が子鹿のようにぶるぶる震えながら言った

「じゃ、じゃあよ缶蹴りしよーぜ」


暫く缶蹴りで遊んだ

途中で勝手に動く缶に驚いた遼君が気絶しそうになっていたりした

あまりに遼君が怖がるもんだから僕達はそれを見てゲラゲラ笑っていた

そして隠れんぼをした


「じゃあ今度は遼君が鬼ね」


「はい時間切れ、遼君の負けー」

あかりが楽しそうにいう


遼君が何処かぼーっとしている

そう言えば先程まで感じ取れたはずの幽霊の気配を感じない


「幽霊は成仏したみたいだ

俺は見たんだ笑顔で消えていく女の子を

見つけてくれてありがとう…そう言ってるみたいだった」

遼君はぽつりと呟いた


「あの子も楽しんでおったよ」

お婆さんは見た事ないほど優しい顔をしていた


「お婆さんありがとうございました」

僕達はお婆さんにしっかりと礼を言った


ふと校庭脇の道路に目をやると柵の向こう側にあのサラリーマンがとぼとぼと歩いていた

やはりあのサラリーマンはここで幽霊に取り憑かれてしまったのであろう


前回サラリーマンに取り憑いていた霊を成仏させる事に成功したこれで誰かが襲われる心配はないだろう

ただまだ気がかりなところがある


先程の霊媒師の婆さんも言っていたように

僕にもあの子供の霊が人に取り憑くほど凶暴な霊には思えなかった、もしかしたら誰か霊をけしかけた奴がいるのかもしれないその少しの可能性が頭から離れない


何しろ僕が後何回やり直せるのか分からない

それにもし、もしこの1日1日、繰り返す今日という日は時間が巻き戻っているという訳では無かったら?

毎回別の世界線に飛ばされていたのだとしたら?

あかりが遼君が僕がいない世界線を僕が作ってしまったのだとしたら…残された人は僕のように苦しむ事になる


「ハル大丈夫か?」

遼君が僕を心配している


…僕は今この目の前にいる皆んなを救う事に集中しないと


「ちょっと考え事してて、大丈夫だよ」


僕達は校庭で少し遊んだ後それぞれ帰路についた


「はる君また明日ね」

手をふるあかりに僕はぎこちない笑顔で別れの挨拶をした


家に帰ってからも電話1つに心が落ち着かない

大好きな唐揚げを食べている時ですら巡り回る思考を止める事ができない


繰り返す今日という日はあまりに長い

身体的疲労は感じないが精神的な疲労を凄く感じる

そういえばずっと寝てない気がする

寝たらどうなるんだろう

明日になってそれで僕は明日を生きるのか、それともこの世界から覚めてしまうのか

そんなくだらないことを考えているうちに僕は深い眠りについた


差し込む光で目を覚ます

ゆっくりと身体を起こす

朝はまだ少し寒い

6月8日…僕は明日を迎えたんだ

頭が冴えてくると

静かな緊張が僕を襲う

皆んなは無事なんだろうか


朝ご飯を食べて学校に行く準備をする

背負われたランドセルに違和感を感じつつ僕は集合場所へとついた


「おはようはるくん!」


「あぁあかり、おはよう」


あかりの顔を見てホッとする

小学校の歳上の子も年下の子も驚くくらいすらすらと名前が出てきた

そうだったいつもここを通ってたんだ

毎日通っているこの道も7年後には全く通らなくなってしまった

踏み出す一歩一歩を噛み締め、過ぎ去る街の風景を懐かしんでいる間に学校についた


「皆さんおはようございます」


「「二葉先生おはようございます!」」


元気な挨拶で小学校の1日は始まる


「ハルおはよ!」


ともえちゃんも遼君も学校に来ていた

良かった元気そうで

学校で皆んなの顔を見るのも久しぶりだ


待てよ…今の僕なら…

今の僕なら苦手だった英語の授業も無双できるんじゃないか?

今日の授業は算数国語に理科の実験、午後からは課外学習か

英語ねぇーじゃん…

どうりで皆んな今日は浮き足だってるわけだ


え、この頃まだ割り算か

そういやこんなお話あったななんて感慨に耽っている間に

あっという間に時間は過ぎていく


昼休みはいくつかのグループに分かれてはいるもののどこも同じ共通の話をしている

そう、課外授業の話だ

今日の課外授業は街を支える仕事を学ぼうというものだ

僕達の街には歴史的な建造物が多く立ち並ぶ小さな観光名所があってそこでは毎朝朝市なども開かれており、県外からもお客さんがくるくらいには有名だ


「ハル自由時間何するよ?」


遼君が僕の机に両手をついて身を乗り出しながら聞いてきた

勿論ともえちゃんもあかりもいる

どうやら皆んなわくわくしているようだ


「そうだな〜自由時間って言っても殆ど無いしな〜

あかりは何かしたい事とかある?」


「美味しいもの食べたい!」

満面の笑みのあかり


「うちも食べたい!」

ともえちゃんも大賛成のようだ


「うし!決まったな!!じゃあ名物のソフトクリームでも食うか、今日も今日とて熱いからな!」


***


僕達は観光名所になっている道沿いへとやってきた

昔ながらの建物が立ち並ぶその場所はそこだけ時間が巻き戻ったようで、江戸時代に行ったような感覚を味わえる

近い所だったので皆んなで歩いてきたが遠足に行くような気分を久々に味わえた


道には様々な出店が立ち並んでいたが平日の午後という事もあり観光客などはあまり見られなかった

ここの特産物を使った昔ながらの餅や蕎麦屋やアイスなど様々な食べ物の匂いは僕の食欲をそそった

先生の引率の元いくつかのお店に入り、特産物を紹介してもらったり、商品の作り方等を教わった

そして、とうとう


「はい、それじゃあ自由時間です

30分たったら”絶対に”この場所に戻ってきてください

分かりましたか?」


「「はーい」」


「よし!ついに来たぜこの時間が!」

ガッツポーズをとって喜ぶ遼君の額から汗が飛んでいる


「アイス!!」

あかりも目をキラキラさせている


「あかりって昨日のチェキ持ってる?」

僕は聞いた


「持ってるよ!写真撮る?」


「撮ろうよ、折角だし」


「あら、写真撮るの?良いねー」

二葉先生がにこやかに微笑みながら言った


「はい。先生も一緒にどうですか?」

僕は言った


「そうね、こんな機会もうあるか分からないしね」

先生は少し寂しそうに言った


「はる君願い事考えた?」


「願い事?」

先生が不思議そうに呟いた


「このチェキは撮った人の願いを叶えてくれるらしいんです

そうだよなあかり?」

僕は答えた


「うん!おじいちゃんに貰ったんだけど

おじいちゃんも知らない人から貰ったって

チェキが人を選ぶんだって言ってた!」

あかりが元気に教えてくれた


「そうなの?面白い話ね」


僕も初めて聞いた話だ

ありえない話だけど、ありえないことに僕は今ここにいる

僕が戻ってきたのとも何か関係があるかもしれない


僕はチェケを構えた

あれ?こんなに枚数が減ってたっけとは思ったがさほど気にはならなかった

撮影場所はこの道の入り口

よく観光客がここで写真を撮っているのを見かける


「遼君もうちょっとしゃがんで!

そうそう良い感じ

皆んな笑って!じゃあ撮るよ」


7年後も皆んなが幸せでありますように

そう願った


僕はタイマーをセットし、ダッシュで皆んなの元へと駆け寄った

全員でチェキから写真が出てくるのを覗き込みながら待っていると…”ウィーン”という音と共に黒い写真が出てきた

最初は黒かった写真は時間が経つにつれ鮮やかな色を映し出し

全員が笑顔の素敵な写真へと変化した


出てきた写真を手に取り先生の方を見た僕は

「先生これあげます」

と写真を差し出した


先生は本当にいいのか何度も何度も聞いてきたが最後にはにこっと笑って

「ありがとう!本当に嬉しい!!」

と言ってくれた


写真を撮った後僕達は当初の予定通りアイスクリームを食べる事にした

ジリジリと刺すような陽射しに参っていた僕達はアイスクリーム屋を見つけると日陰で休む事にした

ここの特産品の米を使ったアイスクリームは濃厚で熱い日に食べる事で格段と美味しく感じられた

休憩後ちょっと散策してるだけで自由時間の30分は夏のアイスより速くとけてしまった


「遼君達もいるねー?」

双葉先生の点呼が始まった


「はい、いまーす」


とても楽しかった

時間が溶けると感じるのはそれほど楽しかったという事でもある


「オッケー。皆んないるね!じゃあ帰りましょうか」


勿論帰りも徒歩だ

行きはあんなに元気だった皆んなも疲れたのだろう

汗をかきながらダラダラと歩いている

小学生の頃って学校でも学校外でも本当に遊んでばっかだったんだなと思っていた時…


「ともえちゃん危ない!!」


そう聞こえた

全てがスローモーションのように鮮明に頭に焼き付いている

振り返ると転んだのだろうか

道の真ん中へと放り出されていたのはともえちゃんだった

悲鳴と甲高いブレーキ音が鳴り響く

運転手の悲痛な顔が目に入る…

嗚呼この運転手はこの罪を一生背負う事になってしまうのか

ともえちゃんは体が硬直して動かないでいる

でもそんな出来事より忘れられない事が、脳に鮮明に焼き付いている事があった

最初に叫んだ人の顔…

あの人と同じ顔をした先生の顔を


***


「ちょっとはる君も笑って!

表情固いよどうしたのそんな驚いた顔して

じゃあ撮るよ!

はい、チーズ!!


良い写真撮れた!後”2”枚しか撮れないや」


状況が飲み込めないでいた

今の状況は分かるが…僕はまた戻ってきた









































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