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また…また戻ってきてしまった
どうして?
そもそもどうして僕は7年前にこれたんだ
神様がくれた最期のチャンスだと思って僕はあかりを救った筈だったのにもう一度チャンスをくれるというのか?
僕はあかりを家まで送りとどけた
現にあかりは殺されなかった
そこまでは良かったんだ僕は本来殺される筈のあかりを救ったのだから
でも代わりに遼君が殺された…!!
これじゃあ意味がないんだ
僕があかりを救ったから遼君が犠牲になってしまったとしか思えない
誰かを助けるために別の誰かを犠牲にしなくちゃいけないなら意味が無い少なくとも僕は全員助ける道しか選べない
でもそんな遼君が…
考えてもいなかった運動神経が良くて頼り甲斐のある遼君が殺されてしまうなんて…
考えが甘かった…今日あかりを遼君を殺したのはおそらく同じ通り魔…遼君といえどまだ10歳だ
あかりを救えばそれで誰も死なないと思っていた
そんな都合のいいようにはいかないか
奴は”誰でも”良かったんだ
だから今回僕といたあかりではなく1人の遼君を狙ったんだと思う
くそ電話の内容をしっかり覚えておくんだった
遼君が殺されたという事しか分からない
あの時あかりはまだ他に何か言っていた
その情報があれば犯人や時間帯場所が絞れたかもしれない
犯人を確保しないと遼君のような新たな犠牲者が出かねない
3度目は許されない
犯人に関しては何も分かってはいない
7年後も犯人は捕まっていなかったのだから
名前も顔も分からない奴をどう捕まえるというんだ
分かっているのは今日あかりを1人で帰せばあかりが狙われ
あかりを1人にしなければ遼君が狙われる…
同じ行動をしなければイレギュラーが起こると考えるのが自然だろう
だとしたら今日も同じ行動を取ればまた犯人も同じ行動をとってくるはず
でも…でもまたあかりを遼君を危険に晒すのか?
犯人を特定したとしてそれであかりや遼君を助けられなかったら?…また戻れる保証なんて一切ないんだ
落ち着け…
本来あかりが狙われる所を遼君が狙われた
つまり犯人に計画性はないんだ
最初から狙いをつけて綿密に練った計画ではない
恐らく犯人は単独犯で1人の子が狙いやすかったから犯行に及んだそれだけの事
でもどうやって犯人を捕まえる?
僕が7年後から来たと言っても大人は信じてくれるはずがない
仮に僕がその話を聞いたとしても子供の戯言だと思うだろう
それくらいこの頃の子供というのは冒険心に溢れていていろんな物語を創り出す
だったらこの話を信じてくれるのは…
“今ここにいる…”
どうやって信じてもらおうか
思い出せはしないかあの日の記憶を
あの日写真を撮った後
僕達はそのまま公園で駆けっこをした
そして汗をかいて熱くなったからアイスを食べて休憩したんだ
何か何か使える事はないか
そうだ雨が降ってきそうな天気になったから
いつもより早めに帰ったんだ
「なんか今日熱くね?なぁ…」
「「アイスでも食わね?」」
僕は遼君に被せるように大きな声を出した
驚いた顔で遼君がこちらを見ていた
「何だよー気が合うじゃねーかハル」
僕の肩に手を回して嬉しそうな遼君
喜んでるから良いけど本当は汗かいてるからやめて欲しいな
「違うんだ僕は今日起きる事を知ってるんだよ
この後は天気が悪くなる」
「何言ってんだ今日は晴って予報だったろ?」
「ハル君って未来からきたとか言うタイプだったっけ?」
ともえちゃんも遼君も不思議な顔でこっちを見ていた
違うんだ違うんだ遼君、ともえちゃん…
あぁー駄目だ駄目だこんな事では信じて貰えない
小学生を騙す事すらできないのか僕は!!いや、まぁ騙してはいないんだけど!
何かもっと決定的な何かはないのか
もっと信じてもらえるような
まずい…
何も思いつかないまま商店の前まで来てしまった
“チリンチリン”
“ガラガラガラ”
“ガリガリガリガリ”
このまま美味しくアイスを頂いて帰るわけにはいかない
「そういえばうちさぁ…」
ともえちゃんがかき氷を食べながら喋り出した
「幽霊見ちゃったんだよね学校で…
だから近所の霊媒師に見て貰おうと思ってて、赤い服を来た髪の長い女の子で見ただけですごい怖かった」
自然と口から出た
そうだこんな事を言っていた
幽霊なんて当時は信じなかったが今なら信じられる
「え?何で知ってんの?
ちょっと怖いんだけど」
自分が言おうとしていた事を僕に言われたともえちゃんは凄く驚いている
「僕は信じるよ幽霊を見たって事
なぁ頼む、僕の事も信じてくれよ
僕は本当に今日起きる事を知ってるんだ」
“ゴクリ”全員が息を呑み僕の顔を見ている
これは手応えアリ
僕は今日アカリが狙われる事を伝えた
勿論殺された事は伏せて
僕は言った僕達でコイツを捕まえて懲らしめてやろうと
皆んなノリ気だった
それもその筈である何てったって皆んなまだ冒険心に溢れる少年少女なんだから
危険を犯して悪党を懲らしめる事に興味がないわけがない
あかりが殺されたのは4時ごろだろうか?
この時僕は…何をしていたんだ
あかりの家までの距離を考えると
この30分の間にあかりは襲われたと考えてるのが妥当だろう
つまりあかりが通るこのルートのどこかにアイツはいるはず
「犯人は恐らくここからあかりの家までの道中にいるはず」
あかりは首を絞められて殺された
だから犯人は凶器となる物を持っていないはず
狙われるのはあかりだというのに
本当の事を言えない事に心が痛む
「あかり…本当にできるか?」
僕はあかりに改めて聞いた
リスクを取らなければ犯人の尻尾は掴めやしない
もう絶対にあかりを死なせはしない!
「大丈夫怖くない、はる君も遼君もともえちゃんだっている
絶対に犯人を懲らしめよう!!」
右手を握りしめガッツポーズを取るあかり
気高に振る舞ってはいるがやっぱり手は震えている
なんて愚かな事を聞いてしまったのだろう
怖く無い訳が無いのに
僕は震える手を見て改めて自分に気合を入れ直した
犯人は野放しにできない
まぁ今はまだ何もしてないから犯人でも何でもないんだけどな
僕達の作戦はこうだ
犯人と思われる奴があかりに手を出そうとした瞬間
僕と遼君とで逆に犯人に襲いかかる
遼君にはバットで武装してもらっている
どんな屈強な人でもバットで殴られたら流石に無傷とはいかないだろう
ともえには大声で叫んで大人を呼んでもらう
問題は大人がいるような場所で犯人があかりを襲うかどうか
大人の人に来てもらえないとどうなるかわからない
かなり杜撰な作戦だがパッと思い付く限りではこれが限界だった
勿論かなりのリスクがある事は承知だが顔も名前も分からないまだ何もしてない犯人を捕まえることなどできやしない
(「おい、アイツじゃねーのか」)
遼君が小声で話す
僕達は物陰に隠れながらあかりが帰る通路を見張っていた
遼君が指差した方向には50歳くらいの小太りなおじさんがあかりの横を通り過ぎようとしていた
僕は遼君が手に握りしめたバットで今にも襲い掛かりそうなのをがっしり止めた
(「早まるな遼君、何もしてない人をいきなりバッドで殴ったら僕達が捕まるよ」)
遼君は気が早くて困る
結局おじさんはあかりに何もする事なく通り過ぎていった
その後は誰とも会うことがなく
何も起こらないままあかりの家が近づいてきたところで
巴が1人の男性に気がかかったらしい
(「あの人なんかおかしい気がする」)
(「どの人の事?」)
(「ほらあの40歳くらいのサラリーマン
なんか…なんか背中に見えへん?
赤い服をきた…」)
ともえが指を刺した方向には確かにサラリーマンがいた
(「何言ってんだともえ、
こんな時にびびらすな
あんなサラリーマンが犯人なわけないだろう)」
(「いや、やっぱりおかしい
僕にも微かだけど何か見える
2人とも準備してほしい」)
そのサラリーマンはあかりの横を通り過ぎようかという時ぬるりとあかりに近づいた
勿論周りに人が居なさそうな所で
何て事だ…あんな無害そうなサラリーマンがあかりを遼君を!!
それに背中のアレは一体!?
「ンッ!」
あかりの声にならない悲鳴が微かに聞こえる
ソイツはあかりの口を塞いだ手をそのまま首に回した
こんな家の近くであかりは襲われたのか!
「急げ!!」
遼君が叫ぶ
あまりに唐突な犯行に身構えていたのに反応が遅れる
直前まであった勇気はどこにいった
「おいお前こっち向けこら!あかりに何してんじゃボケ!」
僕よりも足の速い遼君はバッドを握り宙へと飛んだ
果敢な遼君の姿に僕もやらないとと気合を貰う
振り向いた男の顔がはっきりと見える
大きく見開いた眼と目が合った気がした
怖いのだ。とても正気の人間の顔には見えない
それに…それにやっぱり背中に”何か”が見える
何かはぼんやりとしかし確実に男に重なっていた
飛びかかる遼君が振り下ろしたバットは男の頭に目掛けて弧を描く
“ガキン”
しかし彼の渾身の一振りは片腕で塞がれてしまう
“ドカッ”ズザザァァ”
まだ宙に浮いている遼君を
奴は蹴飛ばし
遼君はアスファルトに叩きつけられバットは奪われてしまった
それでも奴の意識をあかりからこっちに向けさせる事にはせいこうした
その隙にあかりは喉元を抑えながら逃げ、ともえと共に大人を呼びに行った
「「助けてください!!!」」
2人の声は響き渡るが人が来る様子はない
にしてもコイツやっぱり様子がおかしい
遼君はかなり運動神経が良いそれにいくら小学生とはいえ
バッドでの1振りを顔色も変えずに塞ぐなんてできるのだろうか?
塞いだとしても痛いはず…多少のけ反るなり痛がるなりするものだろう
そして何よりコイツあかりに襲いかかる前と今の様子がどう考えても違いすぎる
はぁはぁと息遣いも荒く大きく開いた両目はとても人間だとは思えない
まさかコイツ…憑かれている?
男の顔が僕に向く
恐怖で心臓が跳ね上がると同時に身構える
鮮明に見えた男の背後にいる赤い服の少女
“ダダダ”
男がこちらに向かっている
後は大人が来るまで時間を稼げばいい
逃げて逃げて逃げ続けて
頭では分かっているし恐怖で体は固まっている
でも…でもそれ以上に僕はコイツを許せないんだ
例え操られているのだとしてもコイツは目の前であかりを殺そうとし遼君を蹴飛ばした
「逃げろ馬鹿野郎!!」
遼君の叫び声で我に帰る
僕らしくなかった勝てない相手に1人で戦おうなんて
踵を返し足を踏み出す
奥にはこっちに向かって走っている2人と大人の人が見える
良かった見つけられたんだこれで僕達の勝ちだ
“ゴンッ”
鈍い音が響く
目の前に迫る地面
僕は地面に倒れていた
起きあがろうとして上手く立たない
あれ…何処が地面だ
頭が痛い、視界が回る何が、何が起きた!?
何か頭が生暖かい
霞む視界に入り込む赤
血?これは僕の?アイツの?
「ハルゥー!!!」
遼君が地面で足を引きずって叫んでいるが彼もすぐに動ける状況じゃないだろう
“ガ、ガフッ”
体が宙に浮く感覚がする
息ができないアイツが首を絞めているのか
腕に力が入らない
僕を呼ぶ声がだんだんと遠くなる
苦しい、アイツらはこんな思いをしながら…
ちくしょう…ちくしょう!!!
***
「ちょっとはる君も笑って!
表情固いよどうしたのそんな驚いた顔して
じゃあ撮るよ!
はい、チーズ!!
良い写真撮れた!後”4”枚しか撮れないや」




