憂鬱と涙
目が痛い。まぶたが重い。泣き疲れたんだ、この四肢が埋まっているかのようなだるさも、それから来ているんだ。そう気がつくのにも時間が必要なくらい、私の脳はもう、あれだ、オーバーヒート?分からない。何が言いたかった、何を考えていたんだっけ、私。22歳という年齢からは想像もつかないほど、私は幼くて、それでいて、弱い。すぎると付けてもいいほど、弱い。なのに、それを補えるほどの可愛さも、陽気さも、健気さもない。どうかしている。どうかしてほしいよ、本当に。
「ミヤシタちゃん、本当に大丈夫?」
「あっ、大丈夫です。ありがとうございます」
「本当にね、体は大切にね?」
「ありがとうございます、すみません」
「すみませんなんていいのよ、ほら、この仕事ってさあ、若い子なんてほぼ入ってこないじゃない?だからね、ミヤシタちゃんみたいな女の子、女の子っ言ったら変だけどさ、貴重なのよね。辞めてほしくないの」
「辞めるなんてそんな、私まだ、入って2ヶ月ですし、そんなこと考えてないですよ」
「そりゃあ、辞める子は辞める寸前まで、辞めますなんて顔しないからね」
「私、そんな顔してました?」
「ふふっ、どうでしょう。どうだと思う?」
「……そう言われるってことは、してました、よね?」
「まっ、気も力も抜いちゃってさ、軽く頑張ろ?」
軽く頑張るなんて器用なこと、できない。それに言うほど若くもない。女の子、それも少女と呼ばれるような年齢だった頃。そこから私は進んでいない、進めていない。進んでいなくて、進めていなくて、それだけだ。上がっても下がっても右にも左にも、どこにも動いていない。ここにいて、ここにいるだけ。ずっとそれだけ。私って何なんだ?こんなに何もない存在って本当に、私くらいな気がする。やばい。泣きの気配。ここで泣いちゃいけない。化粧も崩れるし、患者さんもいるし、看護師さんも、あっ、ああ……。
「ミヤシタちゃん、どうしたの?」
「ごめ、ごめんなさい。ごめんなさい」
「いやちょっと、ごめんなさいじゃなくて、どうしたのって」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」
「ちょ、ミヤシタちゃん?ミヤシタちゃーん!」
走る走る走る。サカモトさんごめんなさい!やっぱり私、辞める顔してたみたいです。もういい!バイトもやめよう。このバイトも。私に働くなんて無理なんですよ!神様は私に、労働の才能なんて、いや、才能なんて大袈裟なものじゃなくて。労働という概念すら、私には植えつけてくれなかったみたい。
「お先に失礼します!」
バックれを、しかも仕事中にバックれるようなやつが最も言うべきではないセリフを置き土産にして。
「ひゃっほー!」
私は職場だった場所を飛び出した。なんか、どこまででも行けそうな気がする。