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リリス・ラズリス Lilies Lazulis  作者: 青海夜海
第一章 群青の孤独
1/26

群青の空の下を知る者

初めまして青海夜海です。

此度、【リリス・ラズリス】を投稿しました。

ラブコメとシリアスとSFもどきを搭載した一品です。

十代の少年少女の群像劇を楽しんでもらえれば幸いです。

 

 銃声が鳴り響いた。


 風を切り空間に逆らい時空を超えて紅の花を咲かせる。

 建物も影に滑り込むように隠れた男だが死神の刃から逃げ切れなかった。迅速を越えて弾丸が男の肩を貫く。


「ぐっ……!」


 男は顔を顰め右手で左肩を抑えるが出血は死の宣告のように真っ赤な花池を作り出す。すぐに付け焼刃な知識で腰に佩くナイフで服を切り裂き包帯のように肩を巻いて止血。

 どれだけ意味があるかわからないが、やらないよりマシだ。

 男は右手にナイフを持ち直し建物の影から敵の存在を確認する。


「くそ!なんで俺がこんな目にあわなきゃいけねーんだよ」


 不満と怒りと恐怖に男の眼は血走り、荒い息は瀕死の獣のよう。十九歳の男は知らなかった。殺されるというのがこれほどまで理解し難い絶望なのだと。


「クソッ‼」


 吐き捨てた男はどうするどうすると頭を巡らせ、ふとその軽音は静謐の中で波紋のように感覚を硬直させた。


 コツコツ。


 靴がコンクリートの地面を叩く音。脚が地面を歩く音。ただ、こちらに向かってきているだけの音。

 男は思考できない頭でただ目にするために振り返り、そこには銃を持つ女がいた。

 男よりも若く綺麗な女。もしも現実世界で何もなく出会っていたら声をかけたかもしれないほどに美しい女だった。

 だけどその美しさは彼女本来のものであり、何よりこの場で圧倒的な美を集めているのは男の意識を釘付けにしているのは。


 死を纏ったクロユリのような存在だからだ。


 その女を言い表せることができる言葉は一つだけだった。

 男は無意識に呟く。


「――死神」


 すると、女はその口元を緩め黒油の髪を払い黒曜の瞳で男を定める。

 そして銃口を平然と向けた。

 男は本能に従った。このままでは殺されると本能が逃げ出すのに男の身体すべてを従わせ、無様に走りだす。


「ぁ……ぁぁあ!……ァァァァァァァァ⁉」


 意味のわからなくなっていく世界で迷路のように複雑な団地を縦横無尽に駆ける。狂気に晒され狂気に陥り叫ぶ。

 死にたくない。逃げろ逃げろ逃げろ!死にたくない!死にたくない!死にたくないっ‼

 それ以外に何も頭に入らないはずなのに、死神の声はよく耳に通った。


「貴方が悪人でよかったわ。だって、私の心が痛まないもの」


 心底心凍える声音は重圧を冷酷とし、声の方角の頭上を無意識に仰げば銃を構えた死神がこちらを狙いすまして羽ばたいてきた。

 弾発。男の右太ももが貫かれた。二発の弾発。音と共に男の脇と左肩が悲鳴を上げる。


「ぐえぁっ⁉くそッ!クソ女ァァァァァァ‼」


 宙より落ちてくる死神目掛けて男は懐にしまっていた計十本のナイフを一斉に投擲した。しかし、死神は空中で巧に身体を捻り手に持つ拳銃でナイフを往なし男に迫る。


「は?」


 人間技じゃない動作にうそだと言わんばかりに頭を振る男目掛けて死神は左手に創造したマスケット銃を両手で持ちそのまま男の頭をぶっ叩き、ふらつく男に着地からの回し蹴りで吹き飛ばした。転がっていく男は建物の壁に叩きつけられ血反吐を吐く。


 コツコツ。


 死神の足音は意識が朦朧とする男の前で止まり、見上げた男の額にマスケット銃が宛がわれ、そして女が女子高生だということを知った。


「サヨウナラ」


 銃声が鳴り響いた。

 そして紅の花が咲き散った。


2話から本編開始です。


感想レビュー等、励みになりますのでよろしくお願いします。

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