陰キャボッチは暴力的な王子様に転身する。
反響あれば続き書きます。
【連載版】ボクが勇者?国を救え?はは、ご冗談を。~国を追放されたボクですが、実は勇者でした。今更戻るわけないだろ!俺は自由に生きるんだ!!~
もよろしければどうぞ。
・・・何でボクは我慢してるんだろう。
放課後の学校の教室。ボクはふとそう思った。
机の上に置かれた破れた教科書を眺めながら、棒立ちするボクの様子を見てクスクスと嘲笑うクラスメイト達。
元々、人と話すことが苦手だったボクが、高校でも孤立するのは時間の問題だった。僕自身もそれで良いと思ってたし、友達を作るってことにも対して興味はなかった。
「おっと、わりぃ。手が滑ったわ」
「きゃー、やだー。きたなーい」
「おいおい、そこまでやるかよギャハハ」
「・・・」
クラスの不良グループたちが、わざとらしく机の上にジュースを零す。
一応謝ってきてはいるが、その不良は終始ニヤニヤ歪んだ笑い顔を浮かべている。ボクは無言でずぶ濡れになった教科書を拾い上げ、後処理をする。
「んだよ。だんまりかよ!何とか言えや!」
「そのすまし顔がむかつくんだよ!」
「・・・」
ボクの行動が気に入らなかったのか、ますます絡んでくる不良たち。
・・・ボクがイジメられるようになったのは半年前からだ。人と話すことが苦手なボクは、まず最初に孤立した。クラス内でも空気のように扱われてたと言ってもいい。
しかし、それはいい。ボクとしても、一人でいるほうがとても楽だった。
ただ問題はしばらくしてからだった。そんなクラスで孤立してるボクを、クラスの不良たちが目を付けたのだ。
最初はからかってきたりバカにしてきたりするだけだったのだが、ボクが何も反応しないのを良いことに段々とその行為がエスカレートしていった。
物を隠すのは当たり前、体操服や教科書を破かれるのもこれが初めてではない。極めつけは・・・
「何とか言えってつってんだよオラァ!」
「・・・グッ」
「おぉ、決まった!島田の腹パンっ!」
「うっひょー!痛そーー!!」
ボクは、鳩尾を殴られうずくまる。イジメがエスカレートした末に、とうとう暴力も使ってくるようになったのだ。
ボクが殴られて、喜ぶ不良たち。そんな様子を見てるクラスメイト達も嘲笑の笑みを浮かべている。
まるでボクがイジメられてるのを見て、日頃の欝憤を晴らしてるかのように笑ってみてるだけだ。
・・・何でボクはここまで我慢してるんだ?
自分でも何故ここまで、やりたい放題されてるのにやり返さないのか不思議なほどだ。
昔からそうだった。嫌なことをされても、やり返そうという気が起きなかった。だけど嫌なことをされる度に、心の中にモヤモヤが少し・・・少しずつだが積もっていくのを感じていた。
「オラオラッ!」
「いいぞ、もっとやってやれ!」
「痛いでちゅかー?痛いでちゅかー?」
「ギャハハ!」
うずくまるボクを、不良たちは取り囲み面白半分に蹴りを入れてくる。
蹴られる度に、心の中のモヤモヤが大きくなっていく。このイジメられてる半年間で、ボクの心の中のモヤモヤはとても大きくなっていた。そう、心が壊れそうなくらいに。
・・・我慢なんてする必要があるのか?
そして、モヤモヤはボクの心の許容量を超え、遂に臨界点を迎える。
・・・そっか。そもそも我慢する必要なんてなかったんだ。
「ギャハハハ・・・はぇっ?」
俺の中で何かが弾けた気がする。さっきまでうずくまっていた俺は、何事もなかったかのように立ち上がる。
面白おかしく俺を蹴っていた不良たちは、突然のことに呆気にとられる。突然、雰囲気の変わった・・・豹変したと言っても良い俺に戸惑っているようにも見て取れた。
「て、てめぇ!誰が立っていいっつ・・・グガッ!?」
「・・・あ?」
気を取り戻し、再度突っかかってくる不良の一人の首を片手で掴む。
不良は何とか振りほどこうともがくが、もがけばもがくほど力を込めてやった。
「お、おい・・・何かおかしくないか?」
「椎名のやつ、あんなだったっけ・・・?」
俺の突然の豹変を感じ取ったのか、周囲から眺めてたクラスメイト達が慌ただしくなる。
・・・チッ、うるせーな。
「グガッ!?ガガッ!?」
「あっ、お前のこと忘れてたわ」
「ギャッ!!」
掴んでいた不良を、ジュースで水浸しになった机に思いっきり顔から叩き付ける。
叩きつられた不良は相当痛いのか、床でのたうち回ってる。・・・こいつもうるせーな。
「うるせーんだよっ!」
「ガフッ!?」
「あぁ?お前漏らしたのか?きったねぇな」
声が癪に障ったので、腹に一発蹴りをかます。すると不良の股間から水が・・・どうやら蹴りのショックで漏れたようだ。
「お、お前、こんなことしてタダで済むと思ってんのか!?」
「そ、そうだ!椎名の癖に生意気だぞ!」
さっきとは打って変わって静まり返った教室内に、残りの不良たちの威勢のいい声が飛んでくる。
もっとも威勢がいいのは声だけで、腰がひけているのを俺は見逃さなかった。
「俺だったら何だっつぅーんだよ?」
「そ、それは・・・」
「お前らには、大分世話になったからな。たっぷりお礼してやるよ」
「「・・・うっ」」
俺は不良たちを睨む。睨まれた不良たちは、恐怖で足がすくみ立っているのがやっとの様子だ。
まぁ、だからって許してやらないけどな。
「とりあえず、これは今日のお礼だっ!」
「ガバッ!!」
「ちょ、ちょっと待ってくギャッ!?」
二人に鳩尾を当てる。おぉ、綺麗に入ったからこれは痛いぞ。
現に二人は、お腹を押さえ床で悶絶している。
「今日はこれくらいにしてやるけど、明日もってお前まさか・・・」
「えっ、この臭いって・・・」
「・・・うそ、漏らしたの?」
「く、くさぁ・・・」
不意に香ってきたすえた臭いに、思わず顔を顰める。どうやらどっちかが大きい方を漏らしたようだ。
多分、うずくまりながら泣いてる方だと思う。
臭いが周囲で固まっているクラスメイト達まで届いたのか、突然慌てふためきだす。そりゃそうだよな。いい年こいた高校生が、漏らすなんて想像もつかないしな。
「・・・アホらし、帰るわ」
大と小を漏らした元イジメっ子を見下しながら、俺は教室を出ることにした。
俺が去った教室からは、元イジメっ子たちの嗚咽と騒がしいクラスメイト達の騒音だけが残っていた。
「・・・ふぅ」
家に帰った後、湯船に浸かりながら俺は放課後の出来事を振り返る。
俺がやったことに対して、後悔は微塵も感じてはいない。
ただ思うのは、俺はなぜあそこまで我慢をしていたのか。ただそれだけが今も気になった。
自分の中にある凶暴性にも驚いたが、どちらかと言うと今の自分の方が本来の自分だと感じる。今までは、何か・・・無理やり抑え込められていたような感じがする。
「今となっちゃ、関係ねぇけどな」
途中で俺は考えることを辞めた。考えても仕方ないことだからだ。
解き放たれた以上は、もう我慢するつもりもない。俺は俺の好きなようにやるだけだ。俺は傍からみたら、竦み上がりそうな獰猛な笑顔を浮かべる。まるでそれを阻止するやつは潰すと言わんばかりに。
「くくっ、明日が楽しみだな・・・っと?」
ふと、鏡に映った自分を見る。髪は伸びすぎてボサボサだし、眉毛の手入れも一切入っていない。
俗にいうクラスの片隅に一人はいる陰キャそのものの容姿だった。
「髪はとりあえずワックスで整えるとして・・・眉くらい手入れするか」
俺はおもむろにカミソリで、眉を整える。一瞬、髪も自分で切ろうかと考えたがすぐにやめる。
初心者が切ったとこで変になるだけだ。とりあえずワックスで整えるだけで、休みの日に切りにいこう。
「こんなもんか」
再度鏡を確認し、自分の出来栄えに満足する。
「よっし、明日は何しよっかなー」
明日は不良たちでどう遊ぼう・・・俺はワクワクする胸を抑え、上機嫌で浴槽から上がる。
「・・・ウィーっす」
「「「・・・」」」
俺は挨拶をしながら教室の中へと入っていく。クラス中の視線が俺へと向けられるが、俺はそんなもの気にしないとばかりに自分の席へと向かう。
不良たちの姿を探すが・・・まだ来てないみたいだな。
「えっ、あのイケメン誰?」
「転校生かな?やばっ、ちょーイケてる」
「ちょっと。誰か声かけてきなさいよ」
遠巻きに女子たちの声が聞こえてくる。えっ?俺って気付いてないの?
・・・ただ髪をワックスで整えて、眉も綺麗にしただけだぞ。俺は呆れつつ、自分の席に座る。
「えっ、何で椎名君の席に・・・えっ?」
「あのイケメンって椎名君なの?」
「うそ・・・でもかっこいい・・・」
俺が自分の席に着いたことで、ようやくクラスメイト達は俺と認識できたようだ。
でも言われてみれば、俺と分からないのもしょうがないのかもな。昨日までの俺は、髪がボサボサで目元が分からないほどに髪が長かった。傍から見たらそれは、不潔にも根暗にも見えてたいただろうしな。
「ね、ねぇ・・・」
「あ?」
不良たちが来るのを席でぼーっと待ってたら、女子生徒の一人が話しかけてきた。遠巻きに覗いてる女子グループの一人だろう。
・・・今思うと、高校に入って女子に話しかけられたのって初めてだな。まぁ、別に何も感じないけど。
「あ、あなた本当に椎名君なの?」
「違うってんなら、俺は誰なんだよ」
「い、いや・・・雰囲気変わったなって思って」
「・・・まぁ、心境の変化はあったかな」
「そ、そうなんだ・・・」
「 ?何だ、ジッと見つめて」
「う、ううん!なんでもない!じゃぁ、またね!」
・・・こいつは結局何が聞きたかったんだ?女子生徒は、顔を真っ赤にしたかと思うと自分のグループに戻っていってしまった。
まぁ、いいや。不良たちを待つ良いヒマつぶしにはなったかな。
「キャー、亜紀どうだった?」
「近くで見てもすっごいかっこよかった!」
「「キャーッ!!」」
「しかもあの危ない雰囲気たまんない!」
「「わかるわかるー!」」
遠くから何やら盛り上がってる声が聞こえる。ドラマの俳優の話でもしてるのかね?
あー、早くアイツら来ないかなぁ。
「おい!このクラスに椎名ってやつはいるか?」
結局、不良たちは昼休みになっても来なかった。その代わり、見知らぬ不良が俺の元へやってきた。
・・・誰だアイツ?
「お、おい。あの人って三年生だよな?」
「確か暴走族に入ってるって噂の・・・」
「な、何でそんなやばい先輩が椎名君に・・・?」
ほうほう、三年生か。通りで知らないはずだ。何だって俺はクラスメイトの名前すら知らない。
興味もなければ覚えるつもりもなかったしな。
「おい!いねぇのかっ!?」
噂のヤバい先輩は、痺れを切らしたのか怒鳴り散らしてらっしゃる。
アイツらが来ない間、こいつでヒマつぶしするのも悪くないかもな。
「椎名は俺だけど、何か用?」
俺はおもむろに立ち上がると、噂の先輩の元へと向かう。
「ちょ、ちょっと椎名君ヤバいって・・・」
「せ、先生呼んだ方がいいのかな」
クラスメイト達がなぜか俺の心配をしてくる。・・・こいつら、俺が散々イジメられてた時は、嘲笑ってみてるだけだったのに。今更何のつもりだ?
俺は、クラスメイトの声を無視して先輩の元へ向かうことにした。
「てめぇが椎名か?」
「さっきから俺って言ってんじゃん。バカなの?」
「・・・てめぇ、あんまナメてんじゃねぇぞ」
俺の言葉が癇に障ったのか、凄んでくる先輩。後ろにいるクラスメイトが息をのむが、俺には何も感じない。
「舐めるなんて汚いことしねぇよ。それで何なの?要件聞いてるのに耳聞こえないの?」
「ぐっ!こ、こいつ・・・まぁいい。ちょっとツラ貸せや」
あ、眉間に青筋だった。
「顔が貸せるわけないじゃん。そんなことも分からないの?まぁ、ついて行くわ」
「ぐぐっ!こっちだ!さっさと来いやっ!!」
教室内で暴れるのが流石に不味いと思ったのか、先輩ははちきれんばかりに血管を浮かばせながらも俺を連れ出す。
行先的に屋上かな?それにしてもこいつ、煽り耐性なさすぎだろ。煽ってて面白いわ。
屋上に着くと、俺が待ち焦がれた不良達がいた。今日は来ないのかなぁって思ってたら、そこにいたんかい。
「てめぇ、俺の可愛い後輩に恥かかせてくれたらしいじゃねぇか」
「そ、そうなんです。柏木先輩!」
「俺らの仇とってくださいよ!」
暴走族と噂の先輩に媚びへつらう不良たち。俺にずっと偉そうにしてたアイツらも、こんな態度取れるんだなぁ。
「何見てんだよ!オラァ!」
「柏木先輩が来たからにはお前はもう終わりだよ!」
「そのツラ、ぼこぼこにしてやんぜ!」
おうおう、昨日の今日なのに強気だねぇ。先輩ってのはそんなに強いのかね。
「まぁまぁ、黙れよウ〇コマンども」
「ぐっ!ざけんじゃねぇ!」
「殺すぞ!」
「あ、お前はお漏らしマンだったな。スマンスマン」
「ぐぐっ!てめぇもう許さねぇからな!」
「てめぇも同じ目に合わせてやる!」
あはは、コイツらも煽り耐性がないな。面白いわ。しばらくウ〇コマンって呼んでからかってやるか。
「ウ〇コマン?お漏らしマン?何だそりゃ?」
「せ、先輩、なんでもないっす!」
「そうっす!アイツが適当こいてるだけです!」
必死にゴマかす不良達。ははぁーん。昨日の件は、まだ上級生には伝わってないのか。
「あー、そいつら昨日俺に負けてウ〇コ漏らしたんだわ」
「えっ、マジかお前ら!?」
俺の発言に、不良達から距離を取ってドン引きする先輩。可愛がってる後輩が、ウ〇コ漏らしたって知ったら引くわな。
「ち、違うんですよ!」
「そ、そうですよ!アイツのふかしですよ!」
「そ、それよりアイツやっちゃってくださいよ!」
「お、おう。そうだな。俺もアイツは気に食わねぇしな」
ウ〇コマンの衝撃から、本来の目的を思い出した先輩が俺に向き直る。
ウ〇コマンのワードの強さは、それほど強い。
「大人しくしとけば、すぐに楽にしてやんよ」
「はぁ?大人しくボコられるバカがいるわけないだろ?頭大丈夫?」
「て、てめぇ、さっきから言わせておけば・・・!」
我慢の限界がきたのか、先輩が俺の顔面目掛けて殴りかかってくる。
しかし、俺はそれを片手で易々と受け止めてみせる。
「・・・はっ?」
まさか受け止められると思ってもなかった先輩が、茫然とした声をあげる。
「まぁ、これも一発は一発だ・・・なっ!」
「ガフッ!?」
お返しに殴りたかったであろう顔面に、俺の拳をめり込ませる。
先輩は顔を抑えはしたものの、膝をつくようなことはしなかった。・・・ほう、なかなか鍛えてるようじゃん。
「・・・お、お前。ナニモンだよ?」
「は?いきなり何よ?」
何者も何も、椎名光輝高校二年生十六才だよ。
「ふざけんじゃねぇ!お前なにか格闘技やってるだろ!」
「あぁ、そういうことね」
やっと先輩の言いたいことが分かった。俺の拳が重すぎるってことね。
実は祖父が武術を嗜んでいて、幼少の頃から中学まで徹底的に鍛えられたもんだよ。
祖父はとても厳しい人だった。少しでも型や礼儀作法を間違えると、気を失うレベルの折檻をされたほどに厳しい人だった。
・・・あれ?そういえば、俺が我慢するようになったのもそれくらいからだな。
「余所見してんじゃねぇ!!」
「・・・おっと、危ない」
「くそっ!当たらねぇ!」
昔のことを思い出してると、先輩が殴りかかってきた。俺はそれを余裕のある動作で避けていく。
その後も先輩は拳を繰り出してくるが、俺に当たることはない。当たったとしても、あんまり痛くはなさそうだけども。
「先輩、打たれ強いみたいだし、ちょっと強めに殴るわ」
「・・・へっ?ちょっと待ってそれってどういうグボラッ!?」
俺は、先輩の腹目掛けて強めに殴る。先輩は綺麗な九の字に折り曲がりそのまま気絶した。
「・・・せ、先輩が負けた?」
「うそだろ・・・この辺じゃ敵なしの先輩が?」
「ゆ、夢かこれは・・・」
まさか俺が勝つとは思わなかったのだろう。不良達が現実逃避を始めてる。
というより、あの先輩そんなに強かったの?通りで打たれ強いなとは思ったけど。
「さっ、次はお前たちな」
「「「ひっ、ひぃぃ!!」」」
でもそれはそれ、これはこれ。俺は不良達に向き直る。さて、どうしてやろうかな。また漏らさせようかな。
「・・・す」
「す?」
「す、すいませんでした!」
「今までのことは謝る!許してくれ!」
「もう絡んだりしません!すいませんでした!」
土下座して俺に懇願してくる不良達。まさかここまでしてくるとは思わなかったな。
「・・・ふふ」
「ゆ、許してくれるんですか・・・?」
「ありがとうございます。ありがとうございます」
「本当にすいませんでした」
思わず笑ってしまった俺を見て、不良達は許されたと思ったらしい。
次々と悪かっただのありがとうだの戯言を繰り返してる。
「何勘違いしてんだ?俺がいつ許すって言ったよ?」
「「「・・・えっ?」」」
俺の言葉に、不良達の顔が再度絶望に歪む。
「さて、何して遊ぼうかね。・・・とりあえず、もっかい漏らしとく?」
「「「た、助けてー!」」」
とりあえず、不良達にはもう一回漏らしてもらった。何をって?大きい方だよ。
明日も不良達で遊んでやろう。
クラスメイト達は・・・まぁ、見てただけだし今回は多めに見てやろう。次はないけどな。
「はぁ、明日から楽しみだな」
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