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俺の妹が幼女でかわいすぎて神。マジ神。幼女神。妹幼女神。  作者: 坂東太郎
『第三章 駄々をこねる妹がキュートすぎてお兄ちゃんはふしぎなおどりを踊った』
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第一話 怖くて逃げ出しちゃう妹もかわいい


「ただいまー」


「ただいま、お兄ちゃん!」


「おかえりヒメ!」


「へへー、お兄ちゃんもおかえり!」


 ちゃんとただいまの挨拶ができたうえに、俺におかえりって言ってくれたヒメを抱きしめる。

 かわいすぎる妹が誘拐されないで無事に帰ってこられてよかった!

 ヒメに何かあったらお兄ちゃん悔んでも悔みきれない。生きていけない。


 エコバッグを置いてヒメの靴を脱がせる。俺の靴も脱ぐ。

 小さなリュックを外してヒメに渡す。

 ヒメは両手でぐっと抱え込んで、リビングにたたっと走っていった。


「ほらヒメ、荷物置いたら手洗いうがいしようなー」


「はーいっ! ヒメ、ぱしゃぱしゃがらがらーってする!」


 元気よく返事する妹がお利口さんすぎる。

 「ぱしゃぱしゃがらがら」って言い方がかわいいから今後手洗いうがいはぱしゃぱしゃがらがら。


 二人でぱしゃぱしゃがらがらを済ませて、スーパーで買ってきた食料を片付ける。

 ヒメはその間、ダイニングの姫シートに座って足をぶらぶらさせてた。

 リビングのソファじゃなくてこっちなのは、「お兄ちゃんとおはなししたいから!」らしい。うれしすぎてニヤける。


「ごっ、ごごっごっごっはっんー。きょうのごはんはなっにっかなー♪」


「ヒメは何が食べたい? ハンバーグ? グラタン? シチューもいいなー」


「えっとねー、ヒメ、おさかながいい!」


「そっかそっか、じゃあ今日は焼き魚で、副菜もヒメの好きな和食にしよう」


「やったあ! あのね、ヒメね、お兄ちゃんのごはんおいしくてすき!」


「くっ、生きててよかった! 料理を勉強しまくってよかった! 俺はおいしそうに食べるヒメが大好きだぞ!」


「えへへー」


 ちょっと照れたのかヒメがぐねぐねする。

 お姫様のリクエストに応えられるように今日の料理もがんばらないと。

 けど、その前に。


「ヒメ、まだ夕方前だし先に髪切っちゃおうか」


「えっ」


「春だって言っても夜は冷えるしな、切ったあとはそのままお風呂入って、ご飯はそのあとで」


「かみ……きるの……?」


「ほら、ちょっと量多くなってきたしな、軽くすいて整えよう」


「うう……はさみ? ちょきちょきする?」


「少しだけだから。ちょっとがんばればかわいいヒメがもっとかわいくなっちゃうなー」


「ヒメ、きらなくてもいいとおもうなあ」


「お兄ちゃんはもーっとかわいくなったヒメが見たいなあ」


「うう……」


 両手でもふっと頭を押さえるヒメ。

 うつむき加減で上目遣いで、ちらちら俺を見てくる。小動物っぽい。かわいい。


 かわいくてお利口で聞き分けのいいヒメだけど、弱点はある。


 ヒメはハサミが苦手だ。

 特に、髪を切る時のハサミがダメだった。

 耳元でジョキジョキ音がするのが怖いらしい。


「そうだ! 音が怖いなら、スマホでお歌を見ながらやる? 歌ってくれるかな?」


「こわくないもん」


「お兄ちゃん、ヒメのお歌が聞きたいなあ。ダンスも覚えたいなあ」


「うー」


「髪を切ってもっとかわいくなったヒメとお出かけしたいなあ。明日はお休みだしどこに行こうか」


「うう……」


 ハサミは怖い、けどワガママ言ってお兄ちゃんを困らせたくない、お歌やお出かけ楽しそう。

 いくつもの感情が渦巻いて、眉をへんにょりして口をとがらせてちょっと涙目なヒメもかわいい。

 怖いのにがんばろうとしてる妹が健気すぎてお兄ちゃん誇らしい。


「がんばって髪を切ろう? お兄ちゃんもがんばるから。ヒメがもーっとかわいくなるようにがんばるから」


 ヒメを怖がらせないようにゆっくり動いて、ヘアカットセットを取り出す。

 髪を濡らすための水スプレー、クシと髪止めクリップ、服を汚さないためのカット用ケープ。


 それと、ハサミと、すきバサミ。


 おそるおそるこっちを見たヒメが、二つのハサミに目を丸くして。


「うー! やー!」


 ばっとイスから飛び降りて、だだっと駆け出した。

 ドアを開けて階段を上がっていく。


「あ、ヒメ!」


 追いかけて階段を上る。

 ヒメの部屋のドアが、バタンと音を立ててしまった。


 いつもはお利口さんなのに、めずらしく感情が振り切れたんだろう。


「イヤなことはイヤって意思表示できるようになっててすごいぞヒメ!」


 あんなに大人しかったヒメが!

 自己主張できるようになるなんて!

 妹の成長が見られてお兄ちゃん胸がいっぱいです。あとで父さんに自慢しよう。


 ただ。


 ヒメの部屋の、扉は開かない。


「ヒメ……お兄ちゃん嫌われちゃったかな……」


 けど、やっぱり髪は切った方がよくて。

 ヒメはかわいいからいまもかわいいけど切った方がかわいくなるしもう少し経ったらもさもさかわいくなっちゃうわけで。

 もさかわいいのもかわいいけど今っぽくないと保育園でなんか言われちゃうかもしれない。

 お兄ちゃんとしてはかわいいヒメをもっとかわいくしてあげたい。


 ノックをしてもヒメの部屋の扉は開かない。


「くっ、このままヒメに会えなかったら! どうしよう!」


 ヒメがショックを受けたからか、それとも俺の涙雨か。

 さっきまでお天気だったのに、外は雨が降り出していた。




「考えろ。考えるんだ俺。無理やり入るんじゃなくて、ヒメが自分から出てきてくれる方法を」


 ヒメが部屋に閉じこもった。


 世界を揺るがす大事件を前に、俺は自分の部屋の本棚を漁っていた。

 本棚を埋める育児本の数々も、なんかこれじゃない気がする。

 レシピ本を見ても、料理じゃつられなかった。お菓子もダメだった。


「ヒメが、(ゴッド)かわいい妹が、部屋から……ん? (ゴッド)かわいい? 神? そうか!」


 思いついて、とある本を探す。

 そうだ。

 ヒメは俺の妹で神だ。

 神級のかわいさつまり(ゴッド)かわいいけどそれは置いておいて神だ。


 そう、「閉じこもった神様に自分から出てきてもらう方法」はある。

 俺だって知ってる。


 俺は、一冊の本を手に取った。


 現代語に訳された、古事記。

 閉じこもった神様に自分から出てきてもらったエピソードが収録された一冊を開く。

 さっと目を走らせて、俺はガッツポーズした。

 これならきっとヒメも出てきてくれるはず!


 名付けて——



「『天岩戸(あまのいわと)作戦』だ! 待ってろヒメ、お兄ちゃん立派にウズメるからな!」




今週もう一話更新、したい(願望


悪ノリと勢いで書きはじめた本作、

「面白い」「続きが気になる」「妹かわいい」と思ったら

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