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俺の妹が幼女でかわいすぎて神。マジ神。幼女神。妹幼女神。  作者: 坂東太郎
『第二章 神かわいい妹を自慢しまくるお兄ちゃんはシスコンかもしれない』

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第一話 写真と動画の妹もかわいい


「はあ。なんで俺は高校にいるのか」


「そりゃ高校生だからだろ? どうしたミコト?」


「高校に行かなければ、いまごろ妹と一緒にいられるのになあって」


 はあ。

 気が重い。

 ヒメはみんなと仲良くお昼ご飯食べられてるかな。

 友達にイジメられてないかな。

 ちゃんと一人でお昼寝できるかな。

 授業がはじまれば集中するけど、休み時間はどうしてもヒメのことを考えてしまう。


「まーたそんなこと言って。『なんでも知ってて尊敬されるお兄ちゃん』になるんでしょ?」


「なんで知ってんだ千花(ちか)? まさか俺の心が読めるのか!?」


「え? ミコト、それマジで言ってる?」


友也(ともや)まで!?」


「ミコトがいつも自分で言ってるじゃない、何回聞かされてると思ってるのよ」


「だよなー。それで学年トップクラスだってんだから。正直ちょっと引く」


「こんなの、クラス全員知ってるんじゃないかな。なんなら、『おなしょー』のみんなも『おなちゅう』のみんなも知ってると思うよ」


「ミコトは昔っから変わらないんだな」


「そうよ、小学校の頃から……ううん、ヒメちゃんが生まれた時からずーっとヒメちゃんひとすじ。そりゃヒメちゃんはかわいいけど」


「違うぞ千花! ヒメはかわいいんじゃない! (ゴッド)かわいいんだ!」


「うわあ……どんどん悪化してんなこれ……」


「はいはい、かわいいかわいい。それで今日は? お母さんにお迎え頼むなら連絡入れとくけど?」


「今日は大丈夫、部活は軽めだから。いつもありがとな、今度おばさ……百華(ももか)さんにもお礼言っとかないとなあ」


「まあいいんじゃない? お母さんもヒメちゃんがかわいくてしょうがないみたいだし」


「だろ!? ウチのヒメは世界一かわいいんだ! この前なんてほら」


「まーたはじまったよ、って写真も動画もまた増えてね? ヒメちゃん以外なくね?」


 さっとスマホを取り出す。

 小さな画面に写るのは、宇宙一かわいいヒメの姿だ。

 昨日の夜の、撮れたての動画だ。


「わ、踊ってるヒメちゃんって初めて見るかも」


「なあミコト、これなんで後ろから撮ってんだ?」


「ヒメは恥ずかしがりだからな、撮るって言うと踊ってくれないんだ。だからこう、気づかれないようにこっそりと」


「盗撮じゃないそれ」


「へー。ウチは弟二人だかんなー、ぎゃーぎゃー騒いでばっかりだったよ」


「ほら、こっちは『一人で寝られるようになったけどちょっと寂しくてぬいぐるみを抱きしめないと寝られない』ヒメだ」


「それも盗撮じゃない。んー、ヒメちゃんちょっと髪伸びた?」


「あー、切り時かもなあ。今日帰ったら前髪整えて、少しすくか」


「すく?」


「友也くんもやってるでしょ。なんて言ったらいいかな、バッサリ切るんじゃなくて髪の量を少なくする、みたいな」


「はあ」


「ヒメの髪はちょっとくせっ毛でボリュームが出やすいんだ。もこもこのヒメもかわいいけど、最近はすっきりさせる方が流行ってるから」


「器用ね、ミコト……ヒメちゃん限定で」


「女の子って大変なんだなあ。オレも弟たちも、ちっちゃい頃はみんな丸刈りだったぞ」


「はあ、つらい。離れ離れな時間がつらい」


「はいはい。そんなんじゃ、いつかヒメちゃんの『なぜなぜ攻撃』に応えられなくなるわよ?」


「くっ、なんでも知ってる兄でありたい! 勉強からは逃れられない運命(さだめ)なのか」


「いまからこんなんで大丈夫か? 大学ってもっと遅くなったりするんだろ?」


「学部にもよるけど、必修で遅い講義があったりするみたいねー」


「…………え? いまよりも、遅く? これよりもっと、ヒメと過ごす時間が……減る……?」


 衝撃の事実に愕然とする。

 いまでさえ、朝と、午後遅くと、夕方と、夜しか一緒にいられなくて、あとは寝顔を見ることしかできないのに……。

 もっと、減る?


 考えろ。

 考えるんだ俺。


 ヒメともっと一緒に過ごせるようにするには……大学に行かない?

 ダメだ働いたらもっと時間はなくなる。


 いっそ働かない……?

 生活費は父さんと母さんから送られてくるわけで。

 ずっと5歳のヒメと、ずっと一緒に……ダメだ「お兄ちゃんは何してる人?」ってヒメの友達に聞かれてヒメを困らせてしまう。


 くっ、何か、何か方法は……。


「そうだ!」


「わっ!? どうしたミコト急に!?」


「どうせヒメちゃん関係でしょ。それで?」


「なあ千花! 大学って高校と違って、誰でも敷地に入っていいんだろ!?」


「え? ま、まあ女子大でもなければ大丈夫なんじゃない? 学食が人気だったり、博物館? とかある大学もあるみたいだし」


「よし! よしよしよし! 俺ちょっとまこっちゃん先生に進路指導の面談をお願いしてくる!」


「……なんか、嫌な予感がするわねえ」


「こいつまさか」


「第一志望は! 妹を連れて行ける大学にする!」


「マジか……シスコン極まり過ぎだろ……」


「学生のうちにダブルハッピー婚? 授かり婚?って聞いたことあるから、子連れでもいけなくはないと思うけど……」


「じゃあ俺、まこっちゃん先生に相談してくる!」


「やべえ……やべえ発想に気づいちゃったミコトならほんとにやりそうな気がする……難関大学でもなんとかしちゃいそうだし……」


「ミコト、ひとまず落ち着きなさい。ほら授業はじまるわよ。相談は次の休み時間か放課後にしておきなさい」


「そうだな! 授業をサボったらヒメに叱られちゃうもんな!」


「はあ……基準はぜんぶヒメちゃんか……」


「はあ……ほんとにもう……」


 絶望の先に希望はある。


 きちんと調べれば、高校生活より充実した大学生活が送れるかもしれない。

 ヒメともっと一緒にいられるかもしれない。


 来年はヒメが小学校?

 準備はしてるけど、ヒメはずっと5歳だから……。

 俺が大学生になってもまだ5歳なら、義務教育ははじまってない。


 きっと大丈夫だ。

 なにしろ「俺が大学生になった時」の話をしてるのに、友也も千花も「その頃にはヒメが小学校に行くはずの年齢だ」って気づかないぐらいなんだから。


 希望がふくらむ。

 夢が広がる。


 俺は、めずらしく上機嫌のまま、その日の授業を乗り越えた。


 待ってろヒメ、お兄ちゃんもっと一緒にいられるようにがんばるからな!



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