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俺の妹が幼女でかわいすぎて神。マジ神。幼女神。妹幼女神。  作者: 坂東太郎
『第一章 妹は毎日かわいすぎて神』
3/16

第二話 通園途中の妹もかわいい


「いってきます」


「いってきまーす!」


「ほらヒメ」


「えへへー。お兄ちゃんのて、つめたいね!」


「ヒメの手があったかいんじゃないかなー」


 家を出て手を繋ぐ。

 保育園までは歩いて15分ぐらいだ。

 急いでる時は自転車を使うこともあるけど、ヒメはこうやって俺と手を繋いで歩きたがる。

 妹に望まれるなら、時間がかかったって問題ない。

 ヒメを保育園に送ったあとに学校に向かっても、充分間に合うしね。


 俺が小学校に通ってた頃も、中学生の頃も、高校二年になったいまも。


 学校がある日は毎日、5()()の妹を保育園に送ってる。

 8()()()()()()


 俺が小学校にあがった時から、妹はずっと5歳だ。

 けど、俺以外のみんなは、妹が歳を取らないことに違和感を覚えないらしい。

 父さんも母さんも、ご近所さんや時々お迎えしてくれる幼馴染の一家も、保育園の先生方も、みんな。


 それどころじゃない。

 妹が通うのは()()の保育園だ。

 保育園や市役所、妹が来年度から通うはずの小学校、どこからも何も言われない。

 まわりは歳を取るのに、書類上は、妹は5歳を繰り返してる。

 永遠の幼女な妹かわいい。


「きょうはこっちのみちからいく!」


「はい、ヒメのおおせのままに」


「えへへ……ありがとうお兄ちゃん!」


 交差点を曲がっていつもの道から外れる。

 といっても、曲がるタイミングが違うだけで遠まわりするわけじゃない。

 この程度のワガママは叶えてあげるのがお兄ちゃんの務めだろう。

 それに……。


「あっ」


「どうしたヒメ? ああ……」


 何かを見つけたのかヒメが急に立ち止まる。

 まるい瞳がへにょっと垂れる。


 歩道の脇に、横たわった猫がいた。

 車に轢かれて誰かが植え込みの近くに寄せたんだろう。


 血まみれで、ちょっとだけ胸が上下に動いてる。

 まだ生きてる、みたいだ。


「お兄ちゃん……」


「ちょっと待ってね」


 涙目で見上げてくるヒメの頭を撫でる。

 俺は猫の横にかがみこんで、ヒメとお揃い——大きさは違うけど——のリュックをおろした。

 中から「汚れてもいいバスタオル」を取り出して、猫を隠すように広げる。


「人は……いないな。ほら、ヒメ。いいぞ」


「ありがとう。んんっ」


 俺の隣にしゃがんだヒメが、タオルの陰から猫に手を伸ばす。

 いつもはふにゃふにゃでどこを触ってもやわらかいヒメの体が固くなる。


 と、ヒメの()()()()()


 光が離れて、猫の体に当たる。

 バスタオルで見えないからたぶん、だけど。


「どうだ?」


「ん! もうへーき!」


 泣きそうだったヒメの顔は、いつも通りの明るい表情に戻っていた。

 バスタオルをよける。


「にゃあ!?」


 さっきまで死にかけだった猫の傷が、()()()()()()()

 まるで、最初から怪我なんてしていなかったかのように。


 猫は目を丸くしてシュタッと立ち上がる。

 ぐるぐるまわって自分の体を確かめて、ときどき舐めて首を傾げる。


「よかったな、猫。これからは車に気をつけるんだぞ?」


「あのね、くるまがいないかたしかめて、あおになったら、おててをあげてわたるんだよ!」


「そうそう、ヒメはえらいなあ」


「にゃ、にゃぁ」


「ほら、もう行くといい。助けてくれたヒメに感謝するように!」


「にゃっ!」


「えへへー。どういたしまして」


 ひと鳴きして、猫は去っていった。

 足を引きずることもなく、ささっと元気に。


 愛くるしい俺の妹は神様なんじゃないかって思ったきっかけは、ヒメが歳を取らないしまわりがそれを受け入れてるから、だけじゃない。

 それだけならありえるかもしれない。ないか。仕方ないね俺の妹は特別だもんね。


 ヒメの希望通りにまわり道すると、ときどきこういうことが起こる。

 猫や犬や小鳥が怪我をしてて、ヒメが治す。

 初めて見た時は驚いたけど、いまではもう慣れた。

 人に見られないように、目隠し用のバスタオルを常備してるぐらいだ。


 手が光るし怪我を治せる妹は、神様なんだろう。天使でもある。かわいいから。


「さ、行こうか。助けてあげてえらいぞ!」


「ほんと? ヒメえらい?」


「ああ、しかもやさしい!」


「えへへー。もう、お兄ちゃんたらー」


「そしてかわいい! ヒメだけにお姫様かわいい!」


「んふー」


「おっと、時間ギリギリかな。ほら、ヒメ」


「はーい」


 しゃがんだまま手を伸ばすと、ヒメは大人しくハグしてくれた。

 ()()を起こしたとは思えないほどちっちゃくてやわらかくていい匂いがして、高校って妹を連れていったらダメなんだろうか。

 じゃなくて。


「よいしょっと。しっかり捕まってるんだぞー」


「うんっ!」


 ヒメを抱っこして歩き出す。

 早足のせいかちょっと揺れてヒメが俺にしがみつく。



 ずっと5歳の幼女だろうと、奇跡を起こそうと、神様だろうとどうでもいい。


 ヒメは、俺の妹だ。



「……ありがとう、お兄ちゃん」


「ほらほら喋らない、舌噛んじゃうぞ」


「はーい!」


 元気にお返事できてどうしよう俺の妹がお利口さんで神様で(ゴッド)かわいい!





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― 新着の感想 ―
[一言] 初見です。 この兄、気づいてはいけないことに気づいてSAN値消し飛んでないかな……こわひ(ぶっちゃけホラー路線かと思いました)
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