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俺の妹が幼女でかわいすぎて神。マジ神。幼女神。妹幼女神。  作者: 坂東太郎
『第四章 神かわいい妹のためならお兄ちゃんはなんでもできる』
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第二話 動物園ではしゃぐ妹もかわいい


「この次のバス停で下りるぞー」


「はーいっ! ねえねえお兄ちゃん、おしていい? ヒメ、ボタンおしていい?」


「よし、ヒメ隊員に任せる! しっかり押すんだぞ!」


「はい、お兄ちゃん隊長!」


「それまだ続くんだ……」


 俺のヒザの上でびしっと手をあげたヒメが手を伸ばす。

 ボタンに指をかけて、ヒメは真剣な顔で前方を見つめる。


「ふふ、なんで子供って降車ボタン押したがるんだろうね」


「何言ってんだ、千花も押したがってただろ」


「え、ええ?」


「子供の頃、ウチの母さんと百華さんと出かけた時なんて張り切りすぎて一つ前でボタン押しちゃって大泣きして」


「わー! わー! 聞こえない!」


 隣に座る千花は耳をふさいだ。

 二人掛けの座席に三人で座ってるせいでヒジが当たる。

 でも、俺のヒザの上に座ってるヒメは動じない。

 じっと前を見つめてる。


 バスが動き出して、次の停留所の表示が「市営動物園正門」に変わると、ヒメはすかさずボタンを押した。

 停留所を出発したらすぐ押してもよかったのにちゃんと確認する妹が慎重えらい!

 千花が騒がしくても乱されない集中力がすごすぎる妹の才能がこわい!


「ちゃんと押せてすごいぞヒメ!」


「えへへー」


「立派よヒメちゃん。あの頃の私よりも……立派みたい……」


「すぐ下りられるように準備しとこうな」


「はーい」


 って言っても、特に荷物は広げてない。

 ウチの最寄りのバス停から市営動物園までは、バスで30分ちょいだ。

 水分補給に水筒のお茶を飲んだぐらいで、オヤツも食べてない。


 ヒザの上で、俺からちょっと体を離したヒメが小さいリュックを背負うのを手伝う。

 とりあえず俺のリュックは手に持つ。

 準備を終えると、しばらくしてバスが止まった。


「到着だ! 下りるぞヒメ隊員! 千花隊員!」


「はいっ、お兄ちゃん隊長!」


「は、はい…………お兄ちゃん隊長。ねえこれ私もやらなきゃダメ?」


 ヒメをヒザから下ろして、手をつないで通路を歩く。

 乗客のお爺ちゃんお婆ちゃんはニコニコと、人によっては手を振ってヒメを見送ってくれる。

 ヒメイト候補はまた増えたらしい。

 ヒメの魅力は神レベルだからね、仕方ないね。


 バスを下りる。

 大型バスの降車場になってて歩道は広い。


「んふふー、たのしみだねお兄ちゃん!」


「そうだなヒメ。今日の動物たちはかわいいかなー」


「えっとね、いつもかわいいとおもう!」


「どうかな、髪を切ったヒメは昨日よりかわいいからなあ、動物たちも前よりかわいくなってるかもしれないぞ?」


「えー?」


「ミコトのデレっぷりがすごい。学校じゃ女子が髪切ってもスルーなのに……」


 俺がヒメの右手を、千花がヒメの左手を握って歩く。

 正門は目の前だ。


 市が運営してる動物園は、いつもそんなに混雑していない。

 開園直前は多少は列ができるらしいけど、10時をまわったいまはチケット購入の列もない。


 ヒメが見上げてきたから、さっと抱えてあげた。

 窓口のおば……お姉さんに自分で言いたいらしい。

 大人ぶる妹がおませかわいい。


「ちけっとおねがいします!」


「はーい。何枚かしら?」


「こどもいちまい、おとないちまい、お兄ちゃんいちまい!」


「あらあら、仲良し兄妹なのね。お兄さんは」


「大人です。高校生なので」


「はい、じゃあ1000円ね」


「ヒメちゃんの中でお兄ちゃんは別枠なんだ……」


 窓口のお姉さんは、ヒメを否定することなくサッとチケットを用意してくれた。

 無料の子供用チケットを一枚、(お兄ちゃん分を含む)大人のチケットを二枚。


「千花、頼む。一番外側のポケットに財布入ってるから」


「はいはい」


 俺はヒメを抱っこしてるから手がふさがってる。

 千花に頼んで財布を取ってもらう。そのまま払ってもらう。


 今日はぜんぶ俺の奢りだ。もとい、ウチの家計からの奢りだ。

 昨日、母さんと百華さんが話してそういうことになったらしい。

 百華さんと千花にはいつもお世話になっております。


「はい、1000円ちょうどね。こちらチケットです」


「ヒメ、お願いできるかな?」


「うんっ! ありがとうございます!」


 窓口のおば……気遣いできるお姉さまにお礼を言ってヒメがチケットを受け取る。

 ヒメを下ろすと、得意げに見上げてチケットを差し出してきた。


「はいっ、お兄ちゃん! 千花ねえ!」


「ありがとう、ヒメ」


「ヒメちゃん、ありがとう」


「ヒメのチケットはなくさないようにポシェットに入れておこうか」


「はーい!」


 人がいないのをいいことに、売り場の前でゴソゴソしてチケットをしまう。

 ヒメは大事そうに左手でポケットを押さえる。

 右手をつないで、俺たちは市営動物園に入場した。


 あ、チケット売り場のすぐ横が入場ゲートになってて、特にもぎりとかないタイプの動物園です。

 広いは広いけどしょせん市営なんで。


「さて、姫。今日はどこからまわる?」


「えっとねえ」


「なんかいま『ヒメ』の発音おかしかったような……」


 入場してすぐの園内案内図の前で、俺たちは立ち止まった。


 休日にヒメとお出かけする、至福の時間のはじまりだ!

 寝起きのヒメ、朝ご飯を食べながら楽しみだねって連呼するヒメ、持ち物に悩みながら準備するヒメ、そわそわするヒメ、朝イチから至福の時間は継続してるけどな!





「ぞーさーん! ぞーさーん!」


 最初に向かったのは、市営動物園の目玉。

 アジアゾウの丘だ。もとい、アジアぞーさーん! の丘だ。


「ふふ、ヒメちゃんはしゃいでるねー。……ミコト?」


 今日はゾウが、いや、ぞーさーん!が柵の近くに来てくれてる。

 おかげでヒメのテンションが高い。


 ぐっと足を伸ばして、両手をババッと広げてぞーさーん!の大きさを体で表現している。


「静かだと思ったら……堂々と撮れば?」


「それはあとでな。いまこの瞬間、自然体のヒメを撮るんだ」


「あっうん。ねえ、さっきから連写音すごいんだけど?」


「当たり前だろ! いまこの瞬間の連続を! 撮り逃すわけにはいかないんだ!」


「それもう動画で撮ればいいんじゃない?」


 腕を広げたヒメを背後から、ぞーさーん!の大きさもわかるように低めのアングルで。

 さっと移動してキラキラ輝く目とニッコニコの笑顔とぞーさーん!が一緒に入るよう横から。

 ダダッと駆けて、ぞーさーん!のななめ後ろにまわり、丸太みたいな足ごしにヒメのキュートな姿を。


 千花を連れてきてよかった。

 二人だと、ヒメのそばを離れるアングルの写真は撮れないから。

 ヒメは(ゴッド)かわいいからちょっと離れたら誘拐されかねないので。


 千花がいるっていっても、心配だからすぐ戻る。

 ヒメは変わらず、ぞーさーん!の柵の前にいた。よかった。


「おっきいねえ! ぞうさんおっきいねえ!」


 くっ、ぞうさんほど大きければヒメはこんなに笑顔になるのか!


「くっ、ぞうさんほど大きければヒメはこんなに笑顔になるのか!」


「ミコト? あれ、なんだろ、二重音声っぽい、疲れてるのかな私」


「何を食べれば大きくなれるのか。牛乳? いや違うぞうさんは草食で、紹介文によれば干し草に野菜にカブに果物? 手に入るな、んじゃあとは量を」


「なんでゾウに対抗しようとしてんのよ……」


「お兄ちゃん?」


「ヒメ、俺がぞうさんぐらい大きくなったらどうだ? うれしいかな?」


「んっとね、お兄ちゃんはお兄ちゃんがいい!」


「うぇへへへへ、そっかあ。じゃあお兄ちゃんは大きくなるのやめよう」


「うん! ぞうさんはおうちにはいれないもん!」


「たしかに! ヒメはかしこいなあ!」


「デレすぎて顔が崩れてるわよミコト……」


 デレデレになるのも当然だろう。


 俺は俺のままがいい。

 ヒメは俺の存在を肯定してくれた。


 つまり、ヒメが俺の存在理由(レーゾンデートル)だ!

 どうしよう俺の妹が哲学的かわいい!

 


「うう……がんばれ私。こうなるってわかってたじゃない、いっそもう楽しんでいくのよ。そうよ、デートじゃないんだから!」





次話はたぶん週明けに。


悪ノリと勢いで書きはじめた本作、

「面白い」「続きが気になる」「妹が哲学的かわいい」と思ったら

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[良い点] 可愛い。とにかくかわいい。
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