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俺の妹が幼女でかわいすぎて神。マジ神。幼女神。妹幼女神。  作者: 坂東太郎
『第三章 駄々をこねる妹がキュートすぎてお兄ちゃんはふしぎなおどりを踊った』
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第三話 一生懸命踊る妹もかわいい


 天岩戸(あまのいわと)作戦は成功した。

 しかも予定外に千花と百華さんが来てくれたおかげで、「廊下は狭いからなあ」とリビングまでヒメを抱っこしてこれた。

 ありがとう千花、百華さん。


「じゃあ、せっかくだからテレビで再生しようか」


 腕の中の姫に聞いてみると、ヒメはコクっと頷いてくれた。

 なんだろ、まだ引きこもったこと? 逃げたこと? への罪悪感があるみたいだ。

 お兄ちゃんはヒメが意思表示できるようになってうれしいんだよって伝えたいけど、まずはヒメの気持ちを落ち着けてからの方がいいだろう。

 つまり——


「よし! お兄ちゃん張り切ってウズメっちゃうぞ!」


「うじゅめ?」


「あのね、なんか『踊る』のを『ウズメる』って言ってるみたい」


「ふふ、ヒメちゃんも一緒に踊りましょうね」


 ヒメを抱えたままリモコンを操作する。

 四人で踊るには狭いと思ったのか、百華さんはソファの前のローテーブルをどけてくれた。

 千花は、母さんの部屋から持ってきたベリーダンス用の腰巻きスカートをズボンの上に巻いて、百華さんとヒメにも巻きつけていく。


「わわっ! きらきらだ!」


「おおー、似合うぞヒメ! キラキラなヒメがもっとキラキラしてお兄ちゃんもうまぶしくてしょうがない!」


「ミコトのヒメちゃん愛が増してる気がする」


「ほらヒメ、こうやって踊ると、スカートがしゃらって鳴るんだ。すごいだろ?」


「お兄ちゃんすごい!」


「そりゃあ、お兄ちゃんはヒメのお兄ちゃんだからな!」


「もう突っ込まなくていいかなあ」


 母さんの巻きスカートは大きかったけど、千花が髪留めクリップでヒメにつけてくれた。

 これで準備は万端だ。


 遠い目をした千花を無視してリモコンのスイッチを押す。


 リビングの大きなテレビ画面いっぱいに、四人? 四体? のキャラクターが映し出された。


「わっ! とらじろうだ!」


「よーし、はじめるぞ!」


 ヒメがとことこ歩いてテレビに近づく。

 俺はヒメのうしろで、千花と百華さんは両横だ。


 前奏がはじまると、ヒメは真剣な顔でトラジローと同じポーズで構えた。

 組んだ手を腰の前あたりに持ってきて腕で輪っかを作るのがポイントだ。

 ヒザは軽く曲げてちょっとひねり気味に。はあ、もうかわいい。


 腕と体をぷるぷる揺らして、曲に合わせてヒメが踊り出した。

 まんまるな目でじっとテレビを見つめて、口がちょっととがってる。

 真剣な表情で踊る妹がかわいすぎる。史上最高のウズメだ。ウズメストだ。


「えっ? あれ? ヒメちゃん? ミコトもお母さんも? あれ?」


 ヒメの振りは完璧だった。

 なにしろ、5()()を繰り返してるもので。

 とうぜん、俺も完璧に踊れる。

 なにしろ、ヒメと一緒に8()()()踊ってきたもので。


 けど、完璧な振りで踊るヒメと俺を見て、千花は首を傾げてる。

 気持ちはわかる。

 俺も8年前、いや、もうちょっと前かな、最初は戸惑った。


 なにしろ——


 ヒメと、テレビに映ったトラジローを見る。

 振りは完璧に揃ってる。


 まるで、()()()()()()()()()()


「ぎゃく? ううん、合ってる、のかな?」


 トラジローが()()を上げると、ヒメが()()を上げる。

 右足は左足、左手は右手。


 ヒメとトラジローのダンスがシンクロする。


「そうそう、これで合ってるんだ。鏡の前で踊ったらこうなるだろ?」


「ふふ、懐かしいわねえ。ミコトくんも千花も、子供の頃はこうだったものね」


 俺と百華さんは、ヒメと揃って同じ振りだ。

 踊るキャラクターたちと鏡写しだ。


 千花は、右手を上げたら右手を上げるんじゃないの?って動揺して、踊りについてこられないらしい。

 ちなみに、さっきまでは俺もそっちで踊ってた。

 お兄ちゃんたるものどっちでも踊れないとね!

 ヒメと並んで踊る時は反転バージョンで、向かい合って踊る時は普通の振り付けで!

 混乱させたくないし、何よりヒメと揃って踊りたいからね!


「そ、そういうものなのね。えっと、右が左で左が右で、あれ?」


 千花も俺たちに合わせようとして、うまく踊れてない。

 わかっててもすぐできるもんじゃない。

 だから俺はヒメが寝静まった夜中や軽運動部で練習してるわけで。


「無理しなくていいぞ、千花。ヒメの視界に入らなければヒメも混乱しないからな」


「それはそれで負けた気になる。くっ、見てなさいミコト、私も仲間に入ってみせるわ!」


「ヒメイトの入会基準は甘くしたところだ、がんばれよ千花」


「ヒメイト……ちょっと複雑だけどヒメちゃんはかわいいもんね……」


「お兄ちゃん。ヒメ、もう一回やりたいなあ」


「もちろんだ! 次はどの曲にする? 同じ曲にするか?」


「わお!」


「よーし、じゃあ躍り疲れるまでみんなでウズメるか!」


 お姫様のご要望に応えて、同じ曲をリフレイン設定する。

 また前奏がはじまって、ヒメが真剣な表情に戻った。

 乗ってきたのか小さな口が半開きで、ちょっと小声で歌ってる。天使(エンジェル)かわいい。


「ほら千花、振りを覚えるチャンスだぞ。よかったな」


「そうねよかったわねもうこうなったらやってやるわよ! 『文化部なのに運動部』の吹奏楽部の体力と運動神経を見てなさい!」


「あらあら。千花、楽しまないと楽しめないわよ?」


「ええ……? 哲学……?」


「そうだぞ千花、せっかくヒメと一緒に踊れるんだ! ちゃんと楽しまないと全世界八百万のヒメイトに嫉妬されるぞ!」


「はいはい気の持ちようね。わかったわよ楽しんで踊る、じゃなかったウズメるわよ!」


 吹っ切れたのか、千花は多少のミスを気にせず踊り出した。

 ヒメは脇目も振らず一心に踊ってる。

 運動してふにふにほっぺがちょっと赤くなってきてる。



 けっきょく、ヒメの息が上がるまで、俺たちは踊り続けた。

 最終的には千花も反転バージョンの振りを覚えて、四人揃って踊ってた。


 きっとヒメはこうやって保育園の子たちを巻き込んでるんだろう。


 さすがヒメ、みんなのアイドル! 偶像どころか生身だもんね!






モデルとなった曲も歌詞も振り付けもありません!

ご理解のほどよろしくお願いします!


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― 新着の感想 ―
[良い点] いつも読みながらほっこりしてます(笑) 思考を放棄せずに、全力で肯定するって良いですね。 [一言] ぺこぱの、絶対に否定しないネタに通じる微笑ましさがあるのかなーと感じました。
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