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第7話 街道でテンプレと遭遇し、新たな幼女に出会った。

 村人達に見送られながら村を出た俺は、身体強化の魔法を使って森の中を進んでいた。


「お、もう出た。本当に近いな。」


 身体強化のおかげか、15分ほど歩くと森の外に出た。

 そこは草原のような場所だった。


「このまままっすぐだったな。」


 森を出てそのまままっすぐ進むと、草原の中に土がむき出しになった場所が見えてきた。

 それがまっすぐどこまでも延びている。


「これが街道かな。さすがに舗装とかはされてないわな。ええと、西に歩いてきたわけだから、北は右か。」


 俺は右に進路を変え、今度はゆっくり周りの景色を楽しみながら歩く。

 周りは草原なので見晴らしがいい。

 遠くに山が見えるな。大分大きそうだ。しかし、ほんとに見渡す限り草原だな。モンゴルとかこんな感じかな?

 そんなことを考えていると、後ろからガタガタという音が聞こえてきた。

 振り向くと、馬車がこちらへ向かってきているようだった。

 俺は端に寄って進路を開ける。

 馬車は一度速度を緩め、御者が俺に会釈する。


「あ、すいません。トリアの街はこっちであってますか?」

「あっている。徒歩なら一時もあれば着くだろう。」

「ありがとうございます。」


 言われた通りに歩いて来たが、やっぱりはっきり正解が得られると安心感が違うね。

 馬車はそのまま先に行ってしまった。

 黒っぽい木材で出来たえらく豪華そうな馬車だったな。横に家紋のようなものも付いていた。騎馬も四人ほど追従していた。

 この世界ではああいうのが一般的なんだろうか。騎馬はよくある冒険者の護衛任務かな?やばい、俺、馬乗れない。


「しかし天気がいいなぁ。ここが異世界で、街道は比較的安全だけど、危険もあるってことを忘れちゃうなぁ。」


 俺は良さそうな一本の木の下に腰を下ろす。

 ここでマリィの作ってくれた弁当を食べるつもりだ。

 村を出てからアイテムボックスに移しておいた弁当を取り出そうとしたところで手が止まる。


「なんだ?」


 遠くの方で黒煙が上がっている。


「さっきの馬車が向かった方角だな。」


 気になった俺は立ち上がり、身体強化を使って黒煙の上がる方へ走った。



「見えた!あれはさっきの馬車か。」


 ようやく見えてきたのは、さっきの黒い馬車とそれを取り囲む集団。

 集団の人相は悪く、綺麗とは言えない格好で、手にそれぞれ武器を握っている。

 馬車の護衛達も武器を構え、集団と向かい合っていた。護衛の一人は地面にうずくまり、近くの木がプスプスと焦げている。黒煙の正体はあれか。


「あれは、もしかして・・・。」


 俺はさらに近づいてみた。


「くそっ!魔法を使える盗賊がいるなんて!」

「数が多すぎる!まずいぞこれは!」


 やっぱり!

 盗賊に襲われる馬車を発見するイベントだ!

 護衛側は、倒れた護衛を除くと三人。

 対する盗賊側は二十人ほどいる。

 護衛は腕がたつのかもしれないが、さすがに二十人相手では分が悪いみたいだ。


「ストーンボール。」


 俺は自分から一番近い盗賊に、土魔法を撃ってみた。

 拳大の石を飛ばす、初歩的っぽいやつだ。


 相手は人間なので限界まで手加減した石は、放物線を描き盗賊の頭部に命中した。

 ゴッという鈍い音と共に盗賊が倒れる。


 あれ?

 そういや拳くらいの石が頭に当たったら死ぬのでは?

 そう思い倒れた盗賊を見ると、手足がピクピクと痙攣している。

 よし、生きてるな。セーフ。

 どうやら人殺しはしていないようだ。

 人殺しと言ってもここは異世界ファンタジー。そのうちどうしようもなくて、人を殺すこともあるかもしれない。でも今はまだその時ではない。主に俺の心の準備的に。


 盗賊の一人が倒れたことで、隣の男が倒れた男に駆け寄り、そして周りをキョロキョロと確認し始めた。

 バレる前にやれ。その精神で俺は再びストーンボールを撃ち出す。ただし今度は数十個。


「敵だ!攻撃が来るぞ!」


 だがしかし。俺の魔法が放物線の頂点に差し掛かった辺りで、先ほどの男に気づかれてしまった。

 振り返り、男達はバラバラと飛んでくる石を避ける。何人かは咄嗟の事で、飛んでくる石に気づかず命中した。

 そして腕利きっぽい護衛達がこの機会を逃すはずもなく、頭上に気を取られていた盗賊を切り伏せた。

 残った盗賊は、いちにー・・・八人だ。

 護衛は三人でもやれると踏んだのか、盗賊達に攻勢をかける。

 俺はそんな護衛を援護すべく、邪魔にならないようにまだ護衛と距離のある盗賊達の足元に、土魔法で小さな落とし穴を作り足を引っ掻けさせて転ばせた。

 護衛と戦ってる盗賊に変なことして、思わぬ動きをした盗賊に護衛がやられるなんてことを防ぐためだ。

 そうして数分後、見事に護衛達は全て倒された。


「助かった。礼を言おう。」


 護衛のリーダーと思われる男が俺に話しかけてきた。


「見事な魔法の使い方だった。私は領都騎士団第二部隊長のサリオスだ。君は冒険者なのか?あまり見かけない顔だが。」

「あ、ユートです。冒険者になりたいななんて思って、今からトリアの街に行くところだったんですよ。」


 領都騎士団?冒険者じゃなかったのか。


「そうなのか。君の腕なら試験も余裕でクリア出来るだろう。」

「サリオス隊長!」

「どうした?」


 部下と思われる護衛が声をかけてきた。


「リンディが、息はありますが酷い火傷で・・・。トリアまでもちそうにありません・・・。」

「なにっ?そうか・・・。」


 部下の報告にサリオスは悲痛な顔をする。


「あの、ちょっといいですか?」

「なんだ?」


 俺はサリオスに断って、倒れた護衛の所へ向かった。


「うわっ、これは酷い。女の子なのに・・・。ハイヒール!」


 俺の手から暖かい光が放たれ、リンディと呼ばれた少女に降り注いだ。

 少女か・・・。幼女じゃなくてもパンツに防御力はあるのかな?なんて考えている内に、リンディの火傷がみるみる治っていく。


「!?」

「これでよし、と。女の子なので念入りに治しました。意識は失ってますがもう大丈夫だと思いますよ。」


 振り替えるとサリオスを始め、他の護衛の二人も固まっていた。


「まさかこれほどとは・・・。君はヒーラーだったのか?」

「え?いえ、違いますよ?特に職は決めていません。」


 取り敢えず、ヒーラーを名乗る予定は無い。ヒーラーと言えばかわいい女の子がいい。


「いや、しかし・・・。神殿の司祭級の回復魔法だと思うんだが・・・。いや、詮索はやめておこう。そうだ、ちょっと待ってくれ。」


 サリオスが部下に指示を出し、紙とペンを持ってこさせる。

 紙はあるんだな。それともあるにはあるけど高級品かな?


「君には必要ないかもしれないが、何度も助けてもらった礼だ。」


 サリオスが紙を差し出してくる。


「これは?」

「ギルドへの紹介状だ。君が試験に落ちるなんて考えられないが、これを見せれば実力を証明してくれるだろう。」

「そうなんですか。ありがとうございます。」


 俺がサリオスから紹介状を受け取っていると、馬車の方から声がかかった。


「お待ちになってください。」


 そこには馬車の前に立つ一人の幼女がいた。

 動きやすそうだが高級そうなドレスを来た、金髪のかわいい幼女。

 後ろに老紳士が控えている。執事だろうか?


「助けていただきありがとうございます。私はこのトリアーノ子爵領領主の次女で、リンリル・トリアーノと申します。」


 領主の娘来たよ!

 いや、領都騎士団とやらが隊長付きで護衛してるから、なんとなく予想はしてたけどさ!


「トリアまで行かれるそうですね。よろしければお礼も兼ねて一緒に馬車で参りませんか?」

「え?」


 いいのかそんなんで?幼女と言っても領主の娘だろ?それが得たいの知れない男と、護衛の手が届かない馬車の中で一緒なんて。

 そう思ってリンリルの後ろに控えている執事を見ると、優しく微笑み頷いた。

 いいのか・・・。


「では、ありがたく提案に乗らせていただきます。」


 そうして俺は執事に促され、馬車に乗り込んだ。

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