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第5話 幼女のパンツも万能ではないようで・・・。

 ブラッドウルフと対峙した俺は、ブラッドウルフを鑑定してみることにした。

 グレイウルフの時もやればよかったが、今思い付いたんだから仕方がない。

 倒せたんだからいいだろう。

 さて、ブラッドウルフとやらは・・・。


『ブラッドウルフ』

危険級。

特徴 森などのに希に発生する魔物。グレイウルフなど一般級の魔物の群れを引き連れている場合が多い。

ステータス

体力 177

魔力 66

攻撃力 246

防御力 188

素早さ 318


 ふむ?自分を鑑定したときと項目が違うな。

 しかし、問題は攻撃力と素早さか。

 素早さの値が圧倒的に俺より高い。グレイウルフはなんとかなったが、まさかこいつがグレイウルフより下ってことはないだろう。

 それと気になるのが攻撃力だ。

 ミリィのパンツの防御力を超えている。はたしてこいつの攻撃を、ミリィのパンツで受け止めた場合どうなるのか。

 ヤバい。カッコよく対峙してみたものの、逃げ出したくなってきた。

 しかしもう後には引けない。


「アイスバレット!」


 俺は先手必勝とばかりに魔法をぶっ放した。

 今度は氷の弾丸を放射状に飛ばした。アイスランスはさっき軽々と避けられたからだ。

 しかし、無数の氷の弾丸を、ブラッドウルフは易々とかわしてみせた。


「マジかよ!どうなってんだ俺の魔法チート!」


 攻撃をされたことで、様子を見ていたブラッドウルフが一気にトップスピードに乗り、こちらへ向かってきた。


「くっそ!結局おパンツさま頼りか!」


 俺はパンツを固く握り締めた。

 速い!

 ブラッドウルフのスピードは、グレイウルフとは比べ物にならなかった。

 僅かに反応が遅れる。

 咄嗟にパンツを噛ませることを諦め、横に跳んだ。脇腹を爪が掠める。


「あああ!苦労して作った衣装を!」


 幸い爪は浅く、コスプレ衣装を引き裂いただけですんだ。

 しかし、全力で寝る間も惜しんで作り上げた衣装を切り裂かれ、精神にダメージが入った。


「くそう!」


 俺は強化した脚力で、今度はこちらからブラッドウルフに向かって走る。

 パンツを巻いていない方の拳で殴りかかるが、当たり前のように当たらない。

 拳をかわしたブラッドウルフは、隙だらけになった俺に鋭い牙で襲いかかってきた。


「よしっ!ここだ!」


 俺はブラッドウルフの牙を、パンツを巻いた拳で受け止めた。


 バキン


 今までと違う音と共に、拳に鋭い痛みが走った。


「!?」


 俺は攻撃する事も忘れて、慌ててブラッドウルフを振り払った。

 熱く痛みが走る拳を見た。


「嘘だろ?」


 そこには牙の数だけ穴の空いたパンツと、そこから血が吹き出す自分の拳があった。


「くそっ!ハイヒール!」


 慌ててかけた回復魔法で、拳の痛みが引いていく。

 傷が塞がり、穴の空いた血塗れのパンツが残った。


「どうする・・・。やっぱり思った通り、防御力を超えた攻撃じゃ、いくらおパンツさまでももたないのか。」


 ブラッドウルフは、拳を噛み千切れなかった事に警戒したのか、グルルと唸りながら様子を見ている。

 パンツでなんとか緩和したとしても、この状態じゃあと一回が限界か。


「痛いのはいやだなぁ・・・。」


 そう呟きながらもやらなければ死んでしまう。それは痛いのよりもいやだ。

 俺は拳に巻いていたパンツを取り、丸めて握りこんだ。

 そしてギッとブラッドウルフを睨む。


「俺の衣装とおパンツさまをこんなにしやがって。後悔させてやる!」


 俺はブラッドウルフのやや後方にアイスバレットを放ち、同時に走り出した。

 ブラッドウルフは軽くアイスバレットを避け、向かってくる俺に対し走り出した。

 チャンスは一回だ!

 目と鼻の先まで来たところで、ブラッドウルフは鋭く低い体制から飛びかかってきた。

 よく目を凝らし、ギリギリで爪をかわす。直ぐ様牙で噛みつこうとして来たところでなんとかパンツを握った拳で受け止める。

 強烈な痛みが全身を襲った。

 丸めたパンツは手のひらの上。無防備な手の甲にブラッドウルフの牙が深々と突き刺さった。


「ぐっ!があああ!っ、だけどこれで!」


 パンツを丸めたことで上顎の牙はパンツで止まっている。

 とてつもない痛みだが、手を食い千切られることは無いだろう。

 俺はパンツごとブラッドウルフの上顎をしっかりと掴み、首に向けて手刀を振り切った。



「お、終わったのか?」

「すげぇ、倒したのか。」

「兄さん、大丈夫か?」


 戦いが終わったのを見て、柵の中から村人達が駆け寄ってくる。

 ブラッドウルフは俺の手刀で首と体がお別れしていた。

 痛みで加減が出来なかったが、命と素材を比べられるものでもないからまあいいだろう。

 俺は血塗れの手に回復魔法をかけ、念のため解毒魔法も重ねがけする。


「兄さん、すげぇ血だぞ。」


 マルスが俺の手を取り、傷を確認してくる。


「?傷がない。」


 血塗れなのに傷一つない俺の手を見て、マルスが不思議そうな顔をした。


「回復魔法をかけたんですよ。それがなきゃ、あんな痛い作戦やりませんよ。」

「回復魔法!?そんなものまで使えるのか!兄さん、やっぱりただ者じゃなかったんだな。」


 村人達も驚いているようだ。

 回復魔法ってそんなに凄いんだろうか?

 俺は近くに転がっている血塗れの布に目をやる。

 もはや原型を留めず、ボロボロの布切れになったおパンツさま。

 ありがとう。そう想いを込め、そっとおパンツさまに手を合わせた。


「とにかくなんだ。兄さんのお陰で村は無事だったんだ。おい、誰か村で待ってる奴等に助かったことを伝えて来てくれ。それと今夜は宴だな!主役の兄さんをもてなしてやらなきゃな!」

「おお!」


 村人達は誰もが嬉しそうにしていた。

 俺も戦いが終わり、無事だったことにホッとする。

 しかし、防御の要だったおパンツさまを失ってしまった事に、一抹の不安を覚えるのだった。



 その日の夜、村では盛大に宴が行われていた。

 あの後、何人かの大人は森に入り、宴のために角ウサギや短足鹿を狩ってきた。

 残った大人達は、吹き飛ばされ転がっているグレイウルフの死体を集め、解体をした。

 一般級の魔物でも、村にとってはそこそこの収入になるのだそうだ。

 え?俺が倒したのに村の収入になるのかって?

 そこはあれだ。アイテムボックスの事を黙っている事にしたから、こんなに多くのグレイウルフの素材を持ち歩けない事になっているのだ。

 俺はとりあえず、ブラッドウルフだけもらうことにした。

 広場のような場所に、村の女性達が作った料理が並ぶ。


「お兄さん!これミリィが手伝ったんだよ!」


 ミリィが俺に元に皿を持ってやってきた。

 皿の上にはなにやら肉のようなものが乗っている。


「そうか、凄いな。ミリィちゃんは料理も出来るのか。ところでこれはなんの肉なんだ?」

「えっへっへ。これはねぇ。短足鹿のお肉です!」


 得意そうにぺたんこな胸を張り、テーブルの一つを指差した。

 そこには皿に乗りきらず、テーブルの上にひいた葉っぱの上に横たえられた巨大な塊が。鹿だ。角は素材になるらしく切り落とされているが、その顔はまさに鹿だ。その丸焼きが乗っていた。


「なるほど。短足だな。」


 短足鹿は、足は切り落としたのかな?と思えるほど、よく見ないと分からないほど小さな足をしている。

 一体あの足でどうやって行動しているのだろうか。

 それよりも、あんなサイズの丸焼き、ミリィは何を手伝ったのだろうか。

 そんなことを思いながら、短足鹿の丸焼きに囓りつく。

 うまい。

 野性味溢れる風味の中に、深い旨味がある。これが異世界の飯か。


「どう?美味しい?」

「凄く美味しいよ。」


 心配そうに聞いてくるミリィへ本心を告げる。ミリィも嬉しそうだ。


「兄さん!飲んでるか?」


 そこへ既に出来上がりつつあるマルスが、酒の入った木のジョッキを持ってやってきた。


「飲んでるかって、俺は高校生ですよ?飲めるわけないじゃないですか?」

「コウコウセイ?なんだかわからんが、飲めないって兄さん下戸なのか?」

「いやそういうわけではなくてですね?飲んではいけない年齢というか・・・。」

「年齢?なんだそりゃ。ミリィ、飲んでるか?」

「飲んでるよー。」


 マルスの言葉に振り向くと、そこには小さなカップに入った果実酒をチビチビ舐めるミリィが・・・。


「ぎゃああ!ミリィちゃん!」


 俺は身体強化をして、ブラッドウルフを超えるような速度でカップを奪い取った。


「なにするんですかー!お兄さん!」

「ミリィちゃんはダメ絶対。こっちの果汁にしなさい。」

「えー・・・。」


 不満そうにしながらも、ミリィは果汁を飲みながら肉を食べだした。

 これでよし。


「兄さんは飲むんだろ?ほらほらグッといけ。」

「え?いや、俺は・・・。」


 よくなかった。

 無理矢理飲まされたエールは生ぬるく、苦いだけのものだった。

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