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第29話 ダンジョン攻略は初心者でも安心設計らしい。

 リチャードさんに色々店の中を案内されて、くたくたになって宿へ帰ってきた。

 まさか何時間もかけて閉店時間まで連れ回されるとは。

 武器コーナーでのリンディの言葉がよほど悔しかったのか、色々なところで自慢の逸品を紹介された。

 中にはおおっと思う物もあって、リチャードさんに色々質問していたら機嫌が直ったようだった。



 翌日、ちょっと早めにギルドへ顔を出した。

 なにかいい依頼が出ていないかと思っらからだ。折角王都まで来たんだから、王都っぽい依頼を受けたいよね。

 ギルドの中は早い時間だというのにそれなりに賑わっていた。流石に王都だけあって冒険者が多いのだろう。若い冒険者が多い。等級の低い冒険者は割りのいい依頼を求めて早くから行動するんだろうな。


 俺たちも依頼表を見に行く。

 昨日とはまた違う新しい依頼が貼り出されている。見ているだけでも楽しい。

 端から順番に確認していると、一つの真新しい依頼表に目が止まった。


『ダンジョン攻略・ダンジョン産アイテムの入手』


 昨日リチャードさんに散々自慢されたダンジョン産アイテムの捜索だ。ダンジョンを捜索し、入手したアイテムを依頼主が買い取るということらしい。


「なぁ、これって個人で行ってアイテム取ってきた方が儲かるんじゃないの?なんでわざわざ依頼を受けて行くんだ?」


 すごい魔法の武器とかが出たら自分で使いたいかもしれない。しかし、この依頼では入手したアイテムの所有権は、基本的に依頼主にあるとなっている。


「それはこの王都近くのダンジョンは、国が管理しているからだ。だから依頼主も国のお偉いさんだろう?」


 リンディにそう言われ、もう一度依頼表を見る。依頼主の所には国の名前と、貴族っぽい名前が書かれていた。


「ふーん。でもそれって兵士とか使って探索したらタダじゃないのか?依頼を出したら余計な金がかかるだろ?」


「そういうこともあるが、部署によっては軍部と仲が悪かったりするからな。そういうところからの依頼なんだろう。」


 まぁ、国も一枚岩じゃないってことか。


「で、それにするのか?」


「面白そうだけど、俺たちって青級なんだけど。ダンジョンって危なそうだけど大丈夫なのか?」


「国が管理するダンジョンだ。浅い階層なら危険は少ない。青級でも十分潜れる難易度だ。」


「でもそれって浅い階層は管理されてて、アイテムなんかもう既に取り尽くされてるってことじゃないのか?」


「ダンジョンのアイテムは、一定周期でダンジョンの中に湧く。それに危険は少ないが、ここのダンジョンは少し変わっていてな。」


「ふむふむ。」


「トラップというか、謎解きのような物が多数あるんだ。だからアイテムが出現してからまだ誰も解いていない物なら十分に残っている可能性がある。」


「オンラインゲームのダンジョンみたいな仕様だな。」


「オンラインゲーム?」


「まぁ、こっちの話。」


 でも、そうか。低等級からでもダンジョンって潜れるのか。危険は少ないみたいだし興味はあるな。


「ダンジョンにするか?フィーユ様もダンジョンは未体験だからいい経験になるだろう。それにユートは試験で座学は満点だったらしいじゃないか。ダンジョンの謎解きもいい線いけるんじゃないか?」


 試験の点数漏れてんじゃねーか。どこで聞いたんだよそんなこと。


「ダンジョン、行ってみたいです。」


 フィーユもそう言うので、王都での初依頼はダンジョン攻略に決まった。



 指定された広場に行くと、それなりの冒険者が集まっている。結構人気の依頼みたいだ。そんなことを考えていると、俺の考えを読んだのかリンディが補足してくれる。


「ダンジョン攻略依頼は人数に制限がないからな。一攫千金も狙えるとあって、低等級の冒険者には特に人気だぞ。」


 なんでもごく稀に、浅い階層からもレアなアイテムが出ることがあるらしい。そう言う場合は強力なボスモンスターではなく、難解な謎に護られているという話だった。

 若い冒険者パーティーを見渡してみると、確かにどのパーティーもスカウトや魔法使いがいる。罠や謎解き要員なんだろう。


「うちにはユートがいるからな。すごいお宝が狙えるかもな。」


「期待しています、ユートさん。」


 リンディがハードルを上げてくる。フィーユもそれに乗っかってキラキラとした視線を向けてくるので、これは少しばかり頑張らねばと思うのだった。


「しかし、集合場所がこんな街中の広場なのはなんでだ?ここからダンジョンまでみんなで行くのか?」


「ん?今回のダンジョンは街の中にあるからだぞ?」


「街の中に!?」


 リンディが言うには、この王都の中には二つのダンジョンが存在する。王都の外にもいくつかあるが、低等級向けはこの王都内のダンジョンということらしい。

 騎士が訓練などに使うため、浅い階層のモンスターが間引かれて、比較的安全が確保されているというのが理由らしい。


 しばらく待っていると、役人のような男が壇上に立った。

 いやにキラキラした服を着た、腹の出た男だ。ニヤニヤした顔が気持ち悪い。


「諸君、よく集まってくれた。今回のダンジョン攻略、わかっていると思うが、発見したアイテムの所有権は国にある。必ず全て報告するように。有用なものが見つかることを期待している。」


 と、それだけだった。

 特にダンジョン攻略についての注意点などはない。冒険者なのだから、それくらいは自分で調べろと言うことなのだろう。

 しかし、アイテムの所有権は国にある、ね。

 買い取りという形で報酬は出るらしいが、そのことには触れないんだな。なんだか嫌な言い方だ。


 役人の話が終わると、皆ゾロゾロと移動を始めた。

 広場の奥にある建物へと向かっていく。

 建物の入口には、受付のようなカウンターがあり、両脇に兵士が立っている。受付でパーティーの代表者の名前を告げると、今回の依頼を受けた名簿と照らし合わせ、確認が出きると中へ入れるようだ。

 中に入ると広間だった。

 その広間の奥に兵士に護られた穴がある。

 穴というより、地下へ向かう階段かな。

 石積壁で囲われ、しっかりとした階段が地中へと続いている。なるほど、ちゃんと整備されているみたいだ。


 名簿に載っていた全員が入り終えると、建物の扉が閉められた。

 受付にいたお姉さんが前に立つ。


「それでは代表者のお名前が呼ばれたパーティーから入場になります。呼ばれたパーティーは前へ出てください。なお、順番は依頼を受注した順になります。」


 なるほど。依頼を受注した順で入場するのか。

 早く入った方がアイテムも一杯ありそうだしな。


 順番に名前が呼ばれていく。大体5分おきくらいに呼んでいるようだ。

 どのパーティーも若いパーティーだ。

 ベテランは後から入っても、人の少ない深い階層に行くから、早い順番は低等級ばかりなんだろうか。

 そう思っていると、5番目に呼ばれたパーティーが前へ出る。年期の入った装備を着けた、いかにもベテラン・・・というよりは山賊のような男達だ。


 なんだ?ベテランも早い順番にいるにはいるんだな。

 俺はそんなことを考えながら、山賊パーティーを見送った。


「では次に、ユートさんのパーティーどうぞ。」


 6番目に名前が呼ばれた。

 残ったパーティーの数からしても、まぁまぁ早い方だ。

 俺達は前に出る。


「はい、ユートさんとパーティーメンバー2名ですね。では入場してください。お気をつけて。」


 階段の先を覗き込む。

 奥は思ったほど暗くない。何故だかわからないが、ダンジョン全体がうっすらと発光しているようだ。

 真っ暗だったら光魔法でも使わないとと思っていたが、これなら大丈夫そうだ。

 俺達はダンジョンの階段に向かって歩を進めた。


 にっこりと微笑むお姉さんに見送られ、俺達パーティーの初のダンジョン攻略が始まったのだった。

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