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第23話 怪しい話は聞いたけど、やっぱり行くのはテンプレでしょう。

大分遅くなりました。

 話が終わった後、別室にてリンリル、そして呼ばれてやってきたリンディと話し合いの場が設けられた。

 リンディは元緑級冒険者だが、よりよい意見をということでヘリオスが同席している。聞くところによると、なんとヘリオスはもう少しで虹級というところまでいった元赤級らしい。

 因みに緑までは比較的簡単に上がるらしいが、赤になるには高い壁が、更に虹ともなると遥か高みらしい。どこかの遊戯台の演出のようだ。ん?ゲーセンだよ?ゲーセン!


「でだ、そういうことで俺達は旅立つ事になりました。」

「はい。」


 俺は何故だか議長のようなことをやっている。何故か。

 俺は一応経験豊富そうなリンディがいいと思ったんだよ。だけど。



「じゃあリーダーはリンディってことで、話を仕切ってくれるか?」


 先輩冒険者であるリンディに取り仕切って貰おうと提案する。


「私は遠慮しよう。冒険者として、貴族などの立場は持ち込まないというのが暗黙のルールみたいなものだが、リンリル様は直接の雇い主だ。どうしてもリンリル様に対してリーダーシップを取るというのは憚られる。」

「私もまだまだ勉強中ですので、ここはユートさんが適任かと。」

「いやいや、勉強中って言ったら俺が一番素人だぞ?自慢じゃないが、冒険者登録試験の筆記は、算術以外はほぼ0点だぞ?」

「はい、本当に自慢ではないですが、この中では圧倒的にユートさんが一番強いです。それにヒーラーですし攻撃魔法も使いこないしますので、後ろから皆に的確な指示なども出来るのではないかと。」


 リンリルはそう言うが、オーガとの戦いでは素手でしたよ?俺が一番接近戦してましたよ?


「私もユートで異存はないな。本当はよくないことなのだが、やはり女がリーダーだと他の冒険者に嘗められる。」

「はあ・・・。そういうもん?」

「そういうものだ。」


 ということがあって、今の状態である。


 閑話休題。


「それで俺達はどこへ向かうべきか、みんなで話し合おうと思います。何か意見のある人は挙手してください。」

「はい。」


 リンリルが勢いよく手を挙げる。


「ユートさんは何故そんな話し方なのでしょう?」

「こういう場面ではこういうスタイルでいきます。気にしないように。」

「はい。」


 俺の委員長スタイルにリンリルの突っ込みが飛ぶ。ただなんとなくであるが、俺はやり方を変えない。もし今後、眼鏡少女でも仲間になったら代わってもらおう。


「では何か意見のある方はお願いします。」


 俺の問い掛けにリンディが手を挙げる。


「はい、リンディさん。」

「ここから東に国境付近に街がある。隣国との貿易で栄えた街で、中々に賑やかなところだ。他国の文化も味わえるし、見聞を広める為の修行の旅ならいいと思うが。それに国境が近い場所なら、刺客などの強硬な手段も使いづらいだろう。」

「はい、リンディさんから魅力的な提案を頂きました。他はありますか?」

「はい。」

「はい、リンリルさん。」


 ノリに即応したリンリルが挙手。


「北の方に行ってみるのはどうでしょうか。少し寒い地方ですが、海の幸が美味しいところですよ。」

「それはまた素敵な提案ですね。」


 海の幸か。そういえばこの世界に来てから、魚をはじめとする海のモノって食べてないな。さすがに冷蔵庫は無いし、魔法もそんなに一般的には使われていないようなので、海から離れた土地だと難しいのかな。

 日本人としてはたまに食べたくなるよね、魚。刺身とか海の街とかじゃないとさすがに無理か。


「ユートは何かないのか?」


 どんな魚がいるんだろうか、等と考えを巡らせているとリンディから聞かれた。

 そんな事を言われても俺、この世界の地理なんてわからないしね。冒険者試験の地理のテストは全部空想で書いたもんね。


「うーん・・・。」


 それでも何か言わなければと考える。

 そうだ・・・。


「王都なんてどうでしょうか。やはりその国の王都へ行くのはテンプレだと思うのですが。」


 と提案してみたところ、リンリルとリンディが驚いたようにこちらを見た。


「何を言っているんだ?テンプレというのが何かは知らんが、ロブロイ様の話を聞いていなかったのか?王都には我がトリアーノ家と対立する貴族、それも刺客を放ってくるような輩がいるんだぞ?私の意見と正反対じゃないか。」

「ユートさん、本気ですか?」


 あ、そうか。そんな貴族がいて、領内が怪しくなりそうだからって話だったな。さっきの今で忘れたなんて言えない。いや、でもまてよ。


「そうですね。もちろんわかってますよ(嘘)。しかし、私の国には『木を隠すなら森の中』という言葉があります。多くの人で賑わう王都に紛れるというのもありではないでしょうか。それに相手もあんなことの後にわざわざ王都に来るとは思わないでしょう。」

「む、そう言われればそうなのかもしれないと思ってしまうな。」


 おれの適当な言い訳を、真面目に聞いて考えるリンディ。

 ここでずっと壁際で黙って話を聞いていたヘリオスが口を開いた。


「確かにユート殿の言うことには一理ありますな。それに万が一何かあったときにはそれも修行になりましょう。」


 なんか言い出した。え?執事も脳筋なの?領都が危険になるかもしれないから旅に出るんじゃないの?よりよい意見どこ行った!


「うーん・・・。」


 うんうんとリンリルが考え込んでいる。

 そりゃそうだ。一番関係があるのはリンリルだからな。自分が危険に遇うような場所は避けたいだろう。

 ひとしきり考え込んだリンリルは、答えを見つけたのかばっと顔を上げた。


「わかりました!行きましょう、王都へ。」


 なんで!?いや、俺が言い出した事だけど、ただ行ってみたかっただけだよ?リンリルを危険に晒すような事はしたくないよ?


「これくらいのことを避けていては、トリアーノ家の次女を名乗れません!それに私、王都って行ったことがないんです。」


 リンリルも脳筋なの!?できれば同じ『のうきん』でも、『能均』の方がよかったよ!?

 俺が薄ピンク色の髪の女の子に想いを馳せていると、どんどん話が進み始めた。


「よく言いました、リンリル様。しかし冒険者として活動すれば多少ながら目立ってしまいます。冒険者登録している名前を変えるのがよろしいかと。」

「そうですね。私もその方がいいと思います。」

「え?名前って変えられるの?」


 リンリルの名前を変えると言う話が出て来た。


「冒険者登録の名前だけでしたら変えることは出来ますよ。愛称のような名前で活動している方もいますし。」

「そうなのか。試験とかもあるし、もっと固いもんかと思ってた。」

「それで名前の方はどういたしますか?」


 ヘリオスの問にまた考え込むリンリル。


「うーん・・・。いい名前が思い浮かびません。そうだ、ユートさんが決めてください。」

「え?俺?俺が人の名前を決めるなんてそんなのできないぞ?」

「本当の名前が変わるわけではありません。あくまで愛称のようなものです。それにとても強いユートさんに決めてもらった名前なら、私も強くなれる気がします。」

「え、えー・・・。」


 リンリルが期待を込めた目で見てくる。

 名前?女の子の名前?え、えーと。

 ゆかり・・・、ゆかり、違う!何故か前に呼んだラノベの影響でゆかりしか出てこない!

 うーん・・・。

 リンリルを見ると期待に満ちた目で見てくる。


「うーん・・・。ゆか、じゃない、そうだな・・・『フィーユ』なんてどうだろうか。」

「フィーユ、いいですね。どういう意味ですか?」

「女の子って意味だったかな?」

「まんまじゃないですか!まぁ、響きは気に入りました。それで行きましょう。これからはユートさんにつけていただいた名前に恥じない活躍をしないとですね!」


 ふんすと聞こえてきそうなほど気合いを入れて、リンリル、改めてフィーユは拳を握るのだった。


「それで王都までってどうやって行くんだ。」


 議題が一段落したので口調を戻す。ちょっと前から戻っていた気もするが気にしない。


「乗り合い馬車か徒歩か。冒険者なら王都へ行く商隊の護衛をしながら、っていうのもありますね。」

「商隊!それ冒険者っぽい!」

「?、私たちはぽいんじゃなくて冒険者ですよ?」

「そうだな。じゃあ早速そういう依頼がないかギルドへ行ってみるか。」

「王都行きは人気がありますからね。この時間にそんな依頼があるかどうか。」


 なるほど、フィーユの言うことももっともだ。誰もが王都へ行ってみたいだろう。うんうん。


「王都行きは多いですので、タイミングが良ければこの時間でも出されたばかりの依頼があるかもしれませんよ。」


 ヘリオスから助言を貰った。

 なるほど。そういうこともあるのか。


「じゃあ、とりあえず行ってみるか。」

「そうですね。行ってみましょう。あ、名前の変更も届けないといけません。」


 王都行きが決まった俺達は、3人でギルドへ向かうのだった。

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