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第20話 俺の魔法は本当にチートだった。当たればの話。

ちょっと間が開いてしまいましたので、いつもと違う時間ですが更新しました。

できれば明日も更新します。

「リンディ達の前で使ったときは、何も言われなかったんだが。」


 そう言ってリンディの方を見る。


「氷のようなものを飛ばしているのはわかっていたが、まさかあんな威力の魔法だったとは知らなかった。」


 リンディはそう言い訳をする。まあね。当たってないからね。あれ?ゴブリンには当たってたような・・・。


「それで?氷結魔法以外は何が使えるんだ?」


 暴風さんは興味津々で聞いてくる。どうしよう。しかし、この一族も冒険者一家だ。冒険者の能力を言いふらすようなことは無いだろう。


「一応、手の内をあんまり知られたくないんですが。」

「確かに。冒険者の能力を詮索するのはタブーだったな。それで、何が使えるんだ?」


 暴風さん、わかっていて全力でタブーを蹴破ってきた。


「えーと・・・。」

「そうか。」


 俺が躊躇っていると遂にわかったようで、リリーは俺から離れた。

 そして何か指示を出すと、鍛練場に集まっていた使用人や騎士がぞろぞろと出ていく。


「よし、これで余計な目は無くなったな!」


 そう言って戻ってきた。わかってなかった。


 見ると鍛練場にはリリー、リンリル、リンディ、領主、執事だけになっている。

 領主夫人は屋敷に戻ったようだ。


「母上は冒険者ではないからな。ああ、執事のヘリオスなら問題ないぞ。彼も元冒険者だ。」


 人払いをして外堀を囲われた。領主も興味深そうに見ている。

 それにしてもあの執事、ヘリオスって名前だったのか。勝手に心の中でセバスチャンって呼んでたよ。

 まぁ、口外する気は全くないというのがわかるのでいいかな。


「えーと、一応属性魔法は全部使えると思います。後は回復魔法とか収納魔法とかですかね。」

「使えると思う?」

「氷結と土以外は使ったことが無いんですよ。」

「使ったことが無いのに使えるのか?」

「たぶん。」


 俺の言葉に半信半疑のリリーは、取り敢えず見せてくれと言ってきた。


「そういえばオーガとの戦いで使っていた、あの爆発するのはなんなんだ?初めて見たんだが。」


 そうだった。そういえば火魔法の応用でそんなこともしたなぁ、っていうかリンディさん、よく覚えてますね。


「なんだそれは?見たい。見せてくれ。」


 それじゃあと、俺は的に向かって魔法を飛ばす。


「ん?ファイヤーボールの魔法じゃないか。」


 リリーが言うと同時に着弾。爆発を起こし、的を粉砕して破片を撒き散らした。


「な、なな、なんだそれは!何故ファイヤーボールが爆発するんだ!」


 リリーがなにやら言っているが、原理なんて知らん。ただそうなるように考えて撃ったらそうなるのだから。

 そういえば・・・。


「リンディが盗賊に撃たれたのってファイヤーボールなのか?」


 最初に出会ったとき、リンディは火魔法をくらって重傷だった。


「そうだ。爆発なんかしないやつだ。それでも攻撃に使える魔法となると中級レベルだからな。まさか、盗賊が使ってくるとは思わなかった・・・。」

「油断していたのか。やっぱり騎士団は弛んでいるのかもな。これはしっかり鍛え直さないと。」

「!?」


 リンディの発言に、リリーが騎士団の再教育を上げる。リンディは息を飲んだ。

 すまん、リンディ。俺が振ったせいで。でも口を滑らせたのはリンディである。

 しかし、中級からしか攻撃魔法はないのか。青級の魔術師とかって何してるんだろうか?

 少し聞いてみると、連れていると初級魔法でも火を起こしたり色々便利らしい。因みに水は出せないらしい。さっきもチラッと言っていたが、水を操作するというのが水魔法の基本らしい。

 取り敢えず俺はそれを聞いて、水魔法でバケツ一杯分程の水を空中に出してみた。俺の知識にはよく出てくるウォーターボールである。当然リリーはまたあんぐりしていた。


 その後、土魔法でリンリルの像を作ってみたり、風魔法で竜巻を起こしてみたりした。貴族の女性が口をあんぐりさせるバーゲンセールだった。

 余談だが、リンリルの像はそのまま残される事になった。領主の意向である。リンリルは猛反対していたが無駄だったようだ。しかし、鍛練場の真ん中にこんなのがあって邪魔ではないのだろうか?


 その後、領主邸で夕食を一緒に食べた。

 さすがに領主だけあって豪華な食事だったが、言っていたようにマナーなどは特に何も言われなかった。領主も豪快に食ってたしね。

 どうやら俺は、パーティメンバーとして合格のようだった。

 リリーは鍛え直した後、再戦を申し込んできたが、正直普通に戦ったら絶対に勝てないので、なんとか有耶無耶にならないかと頑張った。

 泊まっていけという誘いもあったが、宿に何も言ってきていないということで帰る事にした。宿に使いを出すと言われたが、頑張って阻止したのである。


 と、言うわけで、俺は今、宿に向かう道を歩いている。

 馬車で送ると言われたが、少し酒を飲んだこともあり、夜風に当たりたいなどと適当なことを言って丁重にお断りした。


「あのう、すみません。」

「?」


 突然声をかけられ、振り替えるとそこには小さな女の子がいた。

 水色の髪を後ろでまとめ、服も靴も水色の女の子。しかし、注目すべきはそこではない。女の子の周りを小さなイルカが回っている。30cmほどのイルカがふわふわと・・・なんだこれ?


「冒険者ギルドって何処でしょうか?」


 イルカに気を取られていると、そう質問された。

 どうやらギルドを探しているところらしい。こんな時間に?


「この道の先に広場があるから、その広場にある大きな建物が冒険者ギルドだよ。」


 俺は今歩いてきた道の先を指す。


「そうですか。ありがとうございました。」


 そうお礼を言って女の子はパタパタと行ってしまった。背中にはくくりつけられた猫がプラプラ揺れていた。猫!?いや、猫型のバッグかなんかだろうと、じっとそれを見ると目が合った。猫と。そして俺はそっと目を逸らした。

 彼女も冒険者なのだろうか。いつかまた会ったら今度は勇気を出して猫の事を聞こう・・・。


 宿へ付き、ライラちゃんに軽く挨拶して部屋に入る。

 洗浄魔法で体と服を綺麗にし、ベッドに横になった。

 そういや、今日は冒険者活動していないな、まあオーガの代金があるから1日くらいいいか。

 そんな事を考えていたら、自然と瞼が重くなってくる。

 夜風で酔いもさめた気でいたが、どうやら体には残っているようだ。

 自然と目を閉じる。


 暫くすると外の喧騒で目が覚めた。

 部屋の中は真っ暗だ。窓の外も同じ。そもそも寝起きの体が大して時間が経っていないことを教えてくれる。


「なんだ?こんな夜中に。」


 外からは怒号や悲鳴なども聞こえてくる。それも一つや二つではない。酔っぱらいの喧嘩などでは無いようだ。

 俺は外の様子を確認するため、窓の外を見ようとしたところで部屋の扉が荒々しくノックされた。


「お客さん!非常事態です!開けますよ!」


 そう言って入ってきたのはジェンティさんだった。

 しかしいつものエプロン姿ではない。

 動きやすそうな革鎧を付け、手には弓を持っている。

 なんだ・・・?嫌な予感がする。


「街に魔物が流れ込んでいます!私とシーザスは宿に魔物が近寄らないように外に出ます!お客さん達は部屋から出ないで下さい!」


 なんだと!?


「街に魔物が!?どういう状況です!?」

「スタンピードのようです。しかし、その予兆は全くなかったようで、その上、通常のスタンピードでは、進行方向にある街や村が運悪く被害を受けるものですが、今回のは真っ直ぐこの街に向かってきたらしいんです。」

「な、なんだそりゃ?」

「とにかくお客さんは大人しく部屋にいてください。」

「ライラちゃんは?」

「地下の倉庫にいます。騒ぎが収まるまで決して出ないように言ってあるので大丈夫です。じゃあ、私は他の部屋を回って、早く外のシーザスに合流しないといけないので。」


 そう言うとジェンティさんは、足早に部屋から出て行った。

 俺は急いで窓の外を確認する。


「これは・・・。」


 街のそこかしこに魔物がいる。

 あちらこちらで冒険者らしい人達や、騎士団が魔物と戦っていた。

 しかし、一番目を引いたのはそこではなかった。

 広場より更に奥。

 高級そうな店や家が並んでいた区画の更に奥。

 領主の館の辺りから煙が上がっている。

 ここからではよく見えないが、煙の下の方が微かに明るい。火が出ているのかもしれない。


 それを見た俺は、部屋から駆け出した。

 部屋から出たところでジェンティさんと鉢合わせした。


「お客さん!?部屋にいてもらわないと!」

「領主の館辺りから火が出ている!リンリルは俺のパーティメンバーだ!俺だって一応冒険者だし、部屋で隠れているわけにはいかない!」

「しかし、まだなりたてでしょう!?」

「こうみえて、昨日はオーガだって倒したんですよ!」

「え!?」


 驚くジェンティさんを置いて俺は宿から飛び出した。

 視界の端に、剣を手に戦うシーザスさんが映る。


 みんな!無事でいてくれ!


 俺は喧騒に溢れる闇夜の街を、全力で領主の館に走った。

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