第2話 神様!防御力を忘れてますよ!?
前回のあらすじ。
なんやかんやを経て、俺は異世界にやって来た。
終わり。
だって詳しく話している余裕なんて無いんだ。
俺は今、異世界に来た感動に震えているんだ。
「異世界・・・。」
俺は一通り感動したあと、自分の体を確認する。
「うん、何も変わりはないな。しかしこれは・・・。」
異世界にやって来た俺の格好は、コスプレイベントに参加していた時と同じ格好だった。
元の世界で人気だった、玄人向けのRPGのキャラで魔法剣士。
格好だけ見ると、この世界の腕利きの戦士に見えるだろう。
「まぁ、学生服とかで放り出されて、『見かけない格好だな?』みたいなテンプレは起きなさそうだな。」
次に俺は、神様のじいさんから貰った能力を確認してみる。
「よっ!」
手を開き、炎をイメージすると、掌の上に拳大の火の玉が現れた。
「おおっ、すごい。俺、魔法使ってる!」
掌の上の炎を見て、一気にテンションが上がる。
「えーい!」
俺は振りかぶって、掌の上の炎を前方の草原に投げつけた。
ズドオオォォォン
「うおおっ!?」
炎が着弾した草原の一部は、直径3メートルほどのクレーターが出来、周りにサークル状に炎が上がった。
「やばっ!そおい!」
俺はあまりの威力に慌てて、燃え上がる草原に向けて水の魔法を放った。
バッシャアアアン
大きな水の塊が落ち、燃え上がる炎をきれいさっぱり消し去った。
炎が収まった跡には、直径3メートルほどの大きな水溜まりが出来上がったのだった。
「あんな小さな火の玉で威力おかしくない?」
俺は出来上がった水溜まりを見つめながらそう呟いた。
その時---
ガササッ
「!?」
突然背の高い草の陰から、ウサギのような動物が飛び出してきた。
ただ、普通のウサギと違うのは、額に角の様なものが生えていた。
「な、なんだ?モンスターか?」
角ウサギは先程の魔法の影響か、大分興奮しているようだった。
「よし、こい!俺の強さを見せてやるぜ!」
俺は神様に貰ったチートのお披露目とばかりに、角ウサギに向かって構えた。
と、同時に歯を剥き出しにした角ウサギが飛び掛かってきた。正直ウサギといえども全く可愛くはない。
俺は飛び掛かってきた角ウサギをギリギリでかわす。いや、別にわざとギリギリでかわそうとしたわけではないんだ。あれ?思ったより体の動きが・・・。
そんな事を思っていると、向きを変えた角ウサギが再び襲い掛かってくる。
またもギリギリでかわしつつ、俺は角ウサギにパンチを叩き込んだ。
スカッ
「あれ?」
角ウサギは見た目からも強そうなモンスターじゃない。
それなのにチートを貰った俺の攻撃が簡単に避けられた。
「あれ?あれ?」
俺は何度もパンチを繰り出したり、キックを浴びせたりする。だが当たらない!
「何故だ!」
俺の動きは、この弱そうなモンスターの動きにまるでついていけない。
「魔法、魔法はっ!」
俺は風魔法を発動する。
鎌鼬のような半透明の刃が角ウサギめがけて飛んでいく。が、しかし当たらない!
「くっそー!なんなんだよ!」
それなら慣れない魔法よりもう一度接近戦だと、俺は角ウサギ目指して走った。
その時、角ウサギがこっちに突進してきた。
勢いを殺しきれなかった俺は、なんとか角は避けられたものの、角ウサギの頭部が脇腹にめり込む。
そして吹っ飛んだ。
「ぬおおおおお!いてえええええ!?」
俺はその場に踞り、脇腹を押さえて悶絶した。
当たったときに鈍い音がしたから、あばらが何本かいってしまったのかもしれない。
「ヒール!ヒール!ハイヒール!」
俺は無我夢中で自分に回復魔法をかけた。
魔法の効果はチート性能なのは間違いない。痛みは完全に無くなった。
「ちくしょう!なんなんだ!?」
俺は神の爺さんの話を思い返してみる。
思い返してみる。
思い返して・・・。
「あっ!?」
爺さんとの約束はこうだ。
『異世界お約束セット』
『すごい魔法』
『すごい攻撃力』
・・・。
そうだっ!
その後に防御力やら素早さやらを言おうと思ってたら、話をぶった切られてここに飛ばされたんだった!
俺は角ウサギを警戒しながら、自分のステータスウィンドウを開いてみる。
名前 遠坂優人
種族 人間
年齢 17歳
性別 男
ステータス
体力 84
魔力 9999
攻撃力 9999
防御力 0
素早さ 28
・・・・。
いやいや!まてまてまてまて!
体力と素早さは基本がどれくらいか知らないからいいとして、防御力ゼロってなんだ!?
いや、本当になんだ!?
わざとか!?忘れたのか!?こんなモンスターがいる世界で防御力ゼロでどうしろって言うんだよ!
くそう!じじいめ!
そんなことを思っていても、角ウサギの攻撃は止まらない。
俺は必死に避けながら、なんとか隙をついて攻撃を試みる。
だがやはり当たらない。
ガサッ
その時、また草が擦れる音がした。
新手かと思い、音のした方を見ると・・・。
手に篭を持った幼女が口を開けて固まっていた。
「そ、そんな!角ウサギがこんなところにっ!」
角ウサギの名前は角ウサギというようだ。
その時、大きな声に反応した角ウサギが幼女の方へ走り出した。
危ない!しかし間に合わない!
幼女が角の餌食に!と思った瞬間、幼女は体を捩り角を避けた。しかしそのまま角ウサギの頭部が、幼女にクリティカルヒットした。
さっきの俺と同じだ。
俺は慌てて幼女に走り寄る。
「いたた・・・。」
角ウサギの突進を食らった幼女は、攻撃された部分をさすりながら起き上がった。
「!??」
何故だ!?俺が死ぬかと思った角ウサギの攻撃を、幼女は耐えた。
バカな!?致死レベルの攻撃だったはずた。それともこの世界の人間はそんなにもタフなのか。もしくはこの幼女が只者ではないのか。
しかし、すぐに思い当たる。『防御力0』という事実。
俺はその場でorzと崩れ落ちた。
まさかこんな幼女に耐えられる攻撃で死にそうになるとは・・・。
これはますます不味いかもしれない。
そんなことを考えながら、俺は幼女に目を移す。
するとそこにはこの場から逃げようとしている幼女がいた。
俺は咄嗟に幼女のスカートを掴む。
幼女と俺はバランスを崩してその場で転けた。
しかし俺はスカートを離さない。
「なにするんですか!」
振り向いた幼女は、プンスコ怒りながらスカートの手を振りほどいた。
すかさず俺は幼女の足首を掴む。
「ぎゃあああ!助けて!お母さん!」
助けを求めて逃げようとする幼女の足を掴んで離さない俺。
うん、アウトだ。
「離してください!角ウサギは角さえ気を付ければその攻撃は大したこと無いとはいえ、私の力ではどうしようもありません!出会ったら逃げるのが常識です!」
「いやいや、待ってくれ!置いていかないで!殺される!」
「何を言ってるんですか!お兄さんくらいだったら角ウサギくらいなんとかなるでしょう!?その立派な装備はなんなんですか!」
「違うんだ!これはコスプレなんだよぉ!」
「意味がわかりません!」
二人でギャーギャー言いながら転げ回る。
幼女のスカートは捲れ上がり、かわいいパンツがこんにちはしていた。
「ぎゃああ!変態変態!」
幼女は地面の土を掴み、俺めがけて投げて投げて投げまくってきた。
俺の両目にクリーンヒット!
思わず足を離してしまう。
「やった!」
幼女は今だとばかりに這いずり逃げ出そうとした。
「ま、待って。」
俺は奪われた視界の中、手探りで幼女を掴もうとして・・・。
「ぎゃああああああああああ!」
今日一番の幼女の悲鳴と共に、何かがすっぽ抜けた。
幼女を離してしまった。だけど手の中には何かほんのり温かい物を掴んでいる感触が。
俺は涙で濡れる目をうっすらと開いて確認した。
そこにはさっき見た物が・・・。
おパンツさま。
幼女のおパンツさまがすっぽ抜け、俺の手の中に収まっていた。
アウトもアウトだ!
どうする?これをどうする!?
紳士的にお返しするか、それともそっと履かせるか。いや、どっちも変態っぽい!
ピュィィィ!
突然の鳴き声にはっと我に返ると、角ウサギが目前まで迫っていた。
今の体勢ではかわしきれない。
咄嗟に手で角から体を守りに出た。その手にはおパンツさまが。
ガッキィィィィン!
角ウサギの角とおパンツさまが接触したその時、およそこの温もりのある布から出たとは思えない硬質な音が響いた。
角はパンツ越しに手の平で止まっている。体に衝撃はあったが、角の先は手に傷一つ付けていないようだ。
チャンス!
そう思った俺は、パンツ越しに角を鷲掴みにした。
流石は攻撃力カンスト。角ウサギは激しく暴れるが、俺の手は振りほどけない。幼女に振りほどかれたのは油断だ!
暴れる角ウサギの首元に、俺はスッと手刀を落とした。
ピギュッっという鳴き声と共に、角ウサギは絶命したのだった。