第1話 間違って死んでしまったようなので、チートをもらって異世界転生。
1作目もモタモタしてるのに、2作目を書き始めてしまいました。
どうぞ生温かくよろしくお願いします。
俺の名前は遠坂優人。
今、俺はなんか浮いています。
そして目の前に爺さんが一人いる。
意味が分からないって?あぁ、俺も分からない。
もう少し詳しく言うと、なんかフワフワした白っぽい空間で俺は浮いているんだ。そして目の前に仙人のような爺さんがいる。以上だ。
そして爺さんが口を開いた。
「すまんのぅ。手違いで死なせてしまったお前さんに、別の世界で新しい生を与えようと思う。」
何を言ってるんだこの爺さんは。ボケているのか。
いや、まてよ?よく思い出せ俺。
そういえば俺は某巨大イベントに、コスプレイヤーとして参加していた。漫画やアニメが好きだった俺は、コスプレにも多少の興味があった。
そんな俺の背中を押したのは、高校生になってレイヤーとして活動していた幼馴染だった。
レイヤーデビューのこの日、俺は恥ずかしい思いをしないように、持てる時間と技術を全て注ぎ込んだ自作の衣装を着ていた。
イベントは盛り上がり、俺も写真を求められたりして大成功だったと思う。幼馴染の方は何十倍も写真を撮られていたが。
もう少しでイベントも後半に差し掛かった時、事件が起きた。
何万人もの人でごった返す会場で、一人の男が叫びながら暴れだした。手には刃物らしきモノを持っている。
男の周りからは沢山の人達が、悲鳴をあげながら逃げ惑い、俺達の前にぽっかりと空間が出来上がった。
その時、男と目が合った。
男はこっちに刃物を握りしめ走り寄り、そして刺された。
幼馴染の悲鳴がやけに遠くに聞こえ、そして意識を失った。
そして目が覚めたら今の状況というわけだ。
うん、手違いとは?
「本当はお前さんの幼馴染が刺されるはずだったんだがのぅ。コスプレ?だったか、変装をしていたせいで間違いが起こってしまったようだ。」
何を言ってるんだこのジジイ!
確かに俺達の衣装は同じゲームのキャラで、仮面を着けた衣装だが、俺は男でアイツは女だ!どこでどう間違ったらそうなるんだ。
口ぶりからどうやら神様の類いのようだが、性別まで違う人間を間違えるとか能力雑だなオイ。
それと聞き捨てならないのは、アイツが死ぬ予定だったってことだ。なぜアイツがあの若さで死ななければならない。
「爺さん、アイツが死ぬ予定だったってのはどういうことだ。」
「爺さんって・・・口が悪いのぅ。儂、一応神様・・・。」
名乗っていないんだからしょうがないだろう。ジジイと言わなかっただけマシだ。
あと、やっぱり神様だったんだな。
「で?死ぬ予定ってなんだ?」
「う、うむ。本当は人間に伝えてはいけないんじゃが、まぁもう死んでおるし問題ないじゃろう。」
雑だなぁ。
「人間は元々生まれた時点で寿命が決まっておるんじゃ。この寿命というのは老衰だけではなく、事故や事件、病気などで死亡する事も含まれる。まぁ、寿命というよりは余命じゃな。その寿命を迎えたものを、儂の部下達が理由を作って処理するんじゃ。」
「処理・・・、その死に方はどうやって決まるんだ?」
「それはこう、大量の紙が裏返して置いてあってじゃな、寿命を迎えた者の名前を言いながら捲ると、表に書いてある死因で死亡するんじゃよ。今回は暴漢による刺殺と出ておったが、ちょうどそのタイミングで、人が大勢集まっているところにおったからのぅ、大事件になりそうじゃ。」
「裏返した紙って、アナログすぎんだろ!あと雑すぎんだろ!」
「しょうがないじゃろぅ。人間は大量にいるからのぅ。いちいち神様っぽく決めておったら間に合わんのじゃ。」
「神様っぽくない自覚はあるのか・・・。」
寿命を迎えたら、名前を呼ばれて紙を捲られたら死ぬのか。
「というかその方法で、どうやったら間違って俺が死ぬんだ?」
「部下が名簿のページを一桁間違って、お前さんの名前を言ってしまったんじゃ。」
「よし、その部下は懲戒免職の上で市中引き回しだな。」
「ちゃんと罰は与えておる。一週間の便所掃除じゃ。」
「小学生かよ!俺の命、便所掃除一週間かよ!」
「だからすまんといっておるじゃろう・・・。」
今の話で判ったことは、神様たちは結構ボケていて雑、そのせいで俺は死んだ。
「よし、そこまでは判った。」
「物分かりがいいのぅ。」
「で、別の世界で新しい生っていうのはなんなんだ?」
正直こっちが気になる。
俺だってコスプレするくらいには、アニメやゲームが好きだ。もちろんラノベも嗜んでいる。
これは所謂、今ラノベ界を席巻している『転生』という奴ではなかろうか。
「それについての説明もせんといかんのぅ。」
そうそう、死んでしまったことも大問題なのだが、神様にそうだと言われたら受け入れざえるをえない。
「新しい生と言っても、赤ん坊で生まれるわけではない。」
「え?そうなのか?」
「赤ん坊の未成熟な脳では、今の記憶をほとんど持っていけんぞ?それはお前さんも望むことではないじゃろ?」
「確かに。記憶がなかったら死んだのと何も変わらない。」
記憶がなかったらただの生まれ変わりだ。輪廻転生だ。俺自身何も楽しくない。
ただこれで「幼児の頃から色々やって、10才を超える頃にはチート戦闘力だぜ」が出来ない事が確定した。
「で、具体的には?」
「具体的に言うとじゃな、魔法というものが存在する世界でお前さんの体を再構成してから、お前さんの魂を入れるということじゃな。」
「ということは、死んだその時のままの年齢で、見た目もそのままってことか?そんな事が出来るなら、なんでもとの世界じゃないんだ?」
「お前さんの世界には魔素が無いからのぅ。神とはいえ、魔素の無いところで人間を構成するというのは大変なんじゃ。」
大変なだけで出来ない訳じゃないのか。面倒臭がったな、ジジイ。
まぁ、いい。それよりも魔法だ。
テンプレのような異世界転生だ。
これはテンションが上がって来たぞ。
「それでじゃ。こちらの落ち度というわけで、体を再構成する際いくつか体をいじることが出来るんじゃが、お前さんの希望を聞こうかと思っておるのじゃ。」
「それはどういうことだ?」
「体の能力をこうしたいとか、見た目を変えたいとかじゃな。」
マジか!「最初からチートでした」パターンかよ!
「で、なにかあるかの?」
「じゃあまず、現地の言葉を理解できるようにしてくれ。読み書きを含めてあとステータスウィンドウとかアイテムボックスとか。この辺は異世界転生お約束セットってことでいいよね。」
「図々しいのう。だがまぁ、そうじゃの。それくらいはくれてやるわい。」
「後は魔力だな。やっぱり魔法がある世界だから使いたいし、どうせなら色々やりたいから誰にも負けないような力が欲しいな。」
「いきなり凄いこと言いおるのう。まあ、希望を聞くと言った手前、仕方がないじゃろう。」
「そんじゃ次に身体能力だな。やっぱり転生チートモノとしてはこれがないと。世界最強の強さ!攻撃力!やっぱり夢だよね!」
「・・・お前さんは一体何になるつもりなんじゃろうか。」
「だめか?」
「ええい!仕方がない。持っていくがよい!」
「よっしゃ!じゃあ、つぎは・・・。」
「これで三つの願いは叶えてやった。さぁ、行くがよい。」
「は?いやいや、三つとか言ってなかっただろ!?何処の龍神様だよ!」
俺の叫びは虚しく、視界は暗転した。
目を覚ますと俺は、開放的な草原の上に横たわっていた。
「ここは・・・。」
見渡す限りの草原、遥か遠くに標高の高そうな山々が連なっている。
空を見上げると太陽が二つある。馴染みのある大きさの太陽の横に、小さな太陽。
その空を、飛行機くらいの大きさの鳥が飛んでいる。
日本では少なくとも見たことの無い光景。
「きた・・・。異世界キターーーッ!!」