訓練の成果
訓練開始から6ヶ月くらい経ったの今日、僕たちは訓練場に集められている。そして僕らの前にはテオ団長とレーネ副団長が立っている。
「えー、諸君等が訓練を始めてから6ヶ月が経った。そして、近々ダンジョン攻略遠征の話が持ち上がっている。そこで、現時点での実力を見るために勇者同士で神器と魔法と武器ありの模擬戦を行う。呼ばれた者から俺の方に来てくれ」
もうそんなに時間が経っていたのか。僕はあれから毎朝に体力作りをし、魔法を教えて貰ってからは毎晩魔法を使い続け、魔力欠乏症を繰り返して無理矢理魔力を増やした。訓練は六日間の内四日は体術をウィリアムさんに教えて貰い、残りの二日はこの王都の冒険者ギルドに行ってテオ団長の知り合いのレティナさんと言う女性の冒険者に短剣術を教えて貰った。レティナさんは目のやり場に困る服に加えて素晴らしい体型をしていて少し気まずかったが、それよりも眼福で幸せな気分になった。最初の方だけはだが。
そんな事は置いておいて僕のステータスは6ヶ月で結構成長した。これを見てくれ。
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・名 前・ソウシ キクモト
・年 齢・17
・種 族・人間
・性 別・男
・魔力量・44,500
・神 器・夢物語(解析鑑定)
・魔 法・夢幻魔法【無;精神体】【無;夢旅】【補;幻影】【移;夢渡り】
【創;幻顕現】【無;悪夢】【無;夢幻結界】【回;夜明け】
・神 器・幽蘭(隠密補助)
・魔 法・透過魔法【補;透視】【防;攻撃透過】【無;物体透過】【補;防御貫通】
【補;透明化】【補;存在歪曲】
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見てくれ。攻撃魔法が一つもないのだ。異世界まで来て攻撃魔法が使えないとか何か泣きそうになってきた。
「じゃあ、最初の対戦は白崎VS福山だな。二人とも出てこい」
お、クラス長VSムードメーカーだ。さて真の勇者たる白崎の実力見せて貰おうか。その前にこいつらのステータスを見ておこう。僕の神器の能力、解析鑑定は“対象を解析し鑑定する”というそのまんまの能力で人間ならばステータスを見れる。対象はこの神器を中心に半径100mの球体以内のもので且つ僕の視界内にいるものだけだ。
神器を使っている間は魔力が減っていくので、まだ先かも知れないが試合を控えているので万全な状態で挑みたい僕としては魔力を使いすぎるのは避けたい。さっさとステータスを見てしまおう。
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・名 前・ハヤト シラサキ
・年 齢・16
・種 族・人間
・性 別・男
・魔力量・52,400
・神 器・勝利の剣(鼓舞)
・魔 法・光魔法【功;光線】【功;光の雨】【回;聖光】【創;光剣】
・神 器・白騎士(超集中)
・魔 法・神速魔法【移;瞬歩】【補;刹那】【補;残像】
・神 器・願矛(感情察知)
・魔 法・友情魔法【補;一致団結】【支;友情の証】
・神 器・先刻(直感)
・魔 法・予知魔法【無;予知夢】
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・名 前・ソウシ フクヤマ
・年 齢・16
・種 族・人間
・性 別・男
・魔力量・46,600
・神 器・迅雷(麻痺)
・魔 法・嵐魔法【功;雷針】【功;乱風刃】【功;放雷】【功;爆風弾】
【移;伝雷】【補;纏嵐】
・神 器・疾風(風殻)
・魔 法・加速魔法【補;加速】【補;瞬間加速】【補;加速連鎖】【支;速度上昇】
【補;急加速】
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ステータスが羨ましいな、くっそー。攻撃魔法多過ぎだろ。僕にも分けろ。
「位置に付いて」
白崎の装備は神々しい細身の両手剣、白銀で金の線が所々ある全身の騎士鎧、赤い宝石の付いた指輪と紫の宝石が付いた指輪だけ。多分、全部神器だろう。
対して福山は稲妻模様が入った双剣とゲームで言う所の盗賊職の様な急所だけを守るような軽装備。これもどちらも神器だろう。鎧の下に来ているのは学校の制服では無く王様から全員が頂いたこの国の服だ。多分、装飾からみてこの世界では高級な物だ。
「それじゃあ試合開始!」
その言葉と同時に福山が自分の魔法を活かし特攻を仕掛ける。普通じゃ出せない速度なので加速魔法の瞬間加速と加速を連続で使ったのだろう。しかも無詠唱で。僕も先刻みたいに魔法を無詠唱で出来るが、覚え立ての魔法はどんな魔法なのか想像できないからどんな人でも絶対詠唱が必要だ。無詠唱が出来る人はこの世界では結構才能がある人か人並みならぬ努力をした人しか出来ない高等技術らしい。この世界に無い知識を知っている僕たちは想像力がカバーできているみたいで、殆どの人達が無詠唱が出来る。
その福山の速度に反応して攻撃する白崎。神器の剣を降り下ろす。それを福山は双剣の右手の剣で受け流し、左手の剣で攻撃をする。それを両手で持っていた剣を右手だけに持ち直し、空いた左手を使い光魔法の光剣で福山の攻撃を受け止める。一瞬の拮抗の後、二人は一気に間合いを取った。先刻から魔法名を的確に言っているが、ステータスを覗いた時に魔法の効果も調べてあるからだ。
そこから先は説明できないほど激しい戦いになった。二人の速さは見えているが、言葉に出来ない。結果的には白崎の魔法で福山が傷を負い白崎が勝った。
その後も模擬戦は続き、6試合目。今度は僕の幼馴染みの安原と風紀委員の古館の女子対決だ。何か事件が起きてくれないから。ああ、僕に幸運が降りてこないかな。某史上最大のハーレム主人公のようにラッキースケベが起きないかな。そんな事はさておき、この二人のステータスはこんな感じだ。
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・名 前・レイ ヤスハラ
・年 齢・16
・種 族・人間
・性 別・女
・魔力量・50,700
・神 器・黒絶(魔纏)
・魔 法・斬撃魔法【功;飛刃】【功;遅れ傷】【功;獣爪】【防;置き太刀】
・神 器・鳳凰(自動回復)
・魔 法・再生魔法【支;不死鳥の巣】【回;再生の羽衣】
・神 器・波(聴覚強化)
・魔 法・振動魔法【補;高周波剣】【支;大地の怒り】【功;衝撃波】
・神 器・周(獣の感覚)
・魔 法・感知魔法【補;魔力感知】
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・名 前・スミレ フルタチ
・年 齢・17
・種 族・人間
・性 別・女
・魔力量・47,900
・神 器・鎌鼬(不可視の刃)
・魔 法・空間魔法【移;縮地】【補;心眼】【防;隔離】【功;断裂】
【功;鎌鼬】
・神 器・倉敷(支援魔法強化)
・魔 法・付与魔法【補;鋭化】【補;硬化】【補;魔法強化】
・神 器・戻加(魔力吸収)
・魔 法・蓄積魔法【無;魔力蓄積】【無;蓄積解放】
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空間魔法や再生魔法が羨ましい。
「位置について」
安原の装備は鞘に納めた刀と桜型のピアス、三つの輪が同心円状に並んだネックレス。けど、神器が四つってことは刀と鞘で別々なのだろう。
古館の装備は安原と同じく鞘に納めた刀と百合の花型の飾りの付いた水色のヘアピン。こちらも安原と同様に鞘と刀で一つずつの神器なのだろう。
二人が腰に吊した鞘から刀を素早く抜き、しっかりと両手で正眼に構える。
「それじゃあ試合開始!」
瞬間、古館が消え安原の背後に現れる。あれは空間魔法の縮地だろう。それに安原は反応してかろうじて避けて間合いを置く。だが、腕に切り傷があったので完全には避けられなかったのだろう。しかし、その傷を癒やしもせずに斬撃魔法の飛刃を連続で飛ばす。
古館はそれに対して空間魔法の隔離で防御する。隔離は自身を中心に半径10mの膜を作りその膜から内側と外側を隔離する防御魔法。弱点としては、自分がその空間から出られず攻撃が出来ないことだろう。その隔離内で刀を大上段に構える。そして、安原の飛刃が途切れた所で隔離を解き刀を垂直に降り下ろす。すると地面が裂けていき、それは安原に向かっていく。空間魔法の断裂だろう。それを安原は右に跳んで避けた。
だが、安原の背後にはもう古館がいて首に刃が添えられていた。よって安原の負けだ。敗因は簡単。安原に人を殺す覚悟がなくて古館にはあった。幼馴染みの僕は安原がとても優しいのは知っている。だが、相手が悪い。人を殺す覚悟が無かったかも知れないが、剣道という武道を嗜む古館には武器を取るという意味を良く理解しているからだ。
この訓練に参加しているのは25人。つまり12試合あり1人余りだ。安原の試合から試合は進み現在は12試合が終わった所。最後の一人は僕である。しかも、相手はレーネ副団長。試合場に向った。
試合場の開始位置に来て立ち、神器を装備して開始の合図を待つ。
レーネさんも蒼い双剣と所々鎖の付いた茶色の革のロングブーツを装備し、胸当てなどの防具は一切無しで僕らが王様から貰ったような服を着て僕と同じく試合開始の合図を待つ。
僕はこの試合に負けるつもりだ。しっかりと負け方にはこだわる。じゃないと僕の実力がバレてしまう。バレたら不味い理由は僕はこの手加減しているレーネさんに上手くいけば互角に渡り合える自信があるからだ。手加減していても副団長に勝つということは僕は他の勇者より強いことになり、公式に勇者として認められている白崎よりも強い事で危険分子として認識され最悪殺されかねない。考えすぎかも知れないがそれだけは避けたいのだ。因みにレーネさんのステータスはこうだ。
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・名 前・レーネ=クリス
・年 齢・23
・種 族・人間
・性 別・女
・魔力量・57,900
・神 器・時雨(天候予測)
・魔 法・水魔法【功;水弾】【功;水刃】【功;弾の雨】【防;逆滝】
【回;命の雫】【移;流水の歩法】【無;夜霧】【創;水分身】
【支;氷結世界】
・神 器・連(強化連鎖)
・魔 法・鎖魔法【支;束縛】【無;咎人の枷】【功;蛇鉈】【防;鎖の牢獄】
【無;封印】【支;限界解除】
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魔法の数が多いな。でも上手くいけば引き分けにはできる自信がある。けど今回は完敗しなければならない。いい負け方を模索しなければ。
「位置について。・・・それじゃあ試合開始!」