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3話 異世界へ

 



 ============

 ジョブの選択が確認されました。

 これよりアビリティの付与を行います。

 ============



「はぁぁぁぁぁ……終わった……」



 紙に指示された3つ目の質問を終え、ジョブを選択し、必要な思考は終わった。

 3つ目の質問は、盛大に無駄に使用した。生存とは関係ない、異世界にも関係ない、今回の事には全く関係のない、単なる私情によって使った。

 推定、超常の存在である解答者なら何かしらの解が示されるのではないかと淡い期待をして、感情に流されるまま聞いた。

 結果は、まあ無駄だった。終わり。

 他の解答とは違いやけに丁寧だったのは気になるところだが……!



「なんだ!?」



 唐突に灰色の壁が崩れていく。机や椅子や紙がボロボロに崩れ、形を失っていく。


 俺の体はフワッと浮き上がり、崩れた壁や地面の向こうには暗くてなにも見えない闇の世界が広がっている。


 そして、どこからともなく白いモヤのような煙でできたような、不定形の無数の触手が俺の体に巻き付き始める。



「や、やめ! なんかきめぇ! 触るな!」



 なんとなく生理的嫌悪感をしめし、全力で逃れようと暴れるが、空中に浮いた体は暴れても移動できないし、触手は叩いても腕が通り抜け触った感触すらない。暖簾に腕押しそのものだ。


 そして体に巻き付いた無数の触手は不意に光りながら脈動し……!



「嗚呼ああああああああああああああああああああああああああああああああァアアアアアアッ!!! 触るな! 離せ!!」



 致命的な、決定的な、何か触られたくないものに触れられている感覚がある。例えるなら内臓を撫で回されるような、脳を揉み込まれるような感じたことのない(おぞ)ましい感触。


 何が行われているか分からない。ただ俺の中を巡る激情は、ただただ触られたくないという拒否感だった。


 どれくらいの時間がたっただろうか、あまりの気持ち悪さで長かったように感じたが、実際はほんの数十秒程度だったような気がする。

 不意に、何かを押し付けられ、何かを繋げられたような、そんな気がした。


 体に巻き付いていた白いモヤの触手が一斉に引いていく。



「はぁ……はぁ……」



 いつの間にか部屋も机も何もなくなって、星の瞬きすらない真っ暗な宇宙空間に放り出されたような状態。

 何も感じることのない空間で、俺は息を荒げる。


 すると、目の前の暗い空間に、白文字で文章が浮かび上がった。


 ============

 アビリティの付与が完了いたしました。

 これより異世界へ転送いたします。

 ============



「ちょ、ま――――」



 ============

 貴方の覚醒を期待します。

 ============



 俺の意識は闇に飲まれた。




 ◇ ◇ ◇




「んっ……んあ……?」



 硬い地面の感触。土の臭いと青臭い葉っぱの臭い。

 チョロチョロと水が流れる音がして、ぼんやりした違和感を覚える。


 ふと、何かがおかしい気がして目を開けた。



「ハッ……!? ここ、どこだよ……?」



 目の前に広がるのは……一言で言うなら、朽ち果てた遺跡のような風景。

 ボロボロに崩れた灰色の石壁。その壁や地面に縦横無尽に駆け巡っている植物の(つる)

 地面は石畳で整備されていた名残があるが、所々剥がれたりして土が見えている箇所がある。

 俺のいる場所の真上は天井までしっかりあるが、それ以外の場所では大きな穴が空いていて、日の光が差し込み幻想的な雰囲気を醸し出している。


 気温は少し肌寒いが、我慢できない程ではない。俺の暮らしていた街中では考えられない程空気が澄んでいて、排気ガスなんて無く、嗅ぎ慣れない草の濃厚な臭いが少し鼻につくぐらいだ。



「あー……どういうこと?」



 未だ頭が回らない。混乱。困惑。未知の事態に把握がままならない。

 だがそれも時間が経つにつれて、直前の状況を思い出していく。



「あーここは……異世界?」



 目に見える光景事態は地球でも秘境に行けば見つけられるもの。もちろん直接見たことはないが、テレビなんかで数千年前の遺跡! なんて見出しで放送されているのを見たことがあるようなもの。

 これを見ただけで俺は異世界に来た、なんて発想になった訳ではない。

 ここに来る直前の出来事。灰色の部屋の紙との問答をしっかり覚えているからこそ、そんな発想になったのだ。



「はぁぁ……やっぱりマジだったのか。夢とかじゃなくて」



 県外にすら余り旅行も行かず、行ったとしても修学旅行以外じゃ街中をぶらつく事すら無く、目的地のみにしか行かないような性格(タチ)だった。

 当然海外になんて行ったこともないし、知らない環境で生きていく心得もない。


 心細さや不安ばかりが募っていく。何をすればいいか分からず、棒立ちしていると――。


 眼の前に、半透明の電子画面のようなものが浮かび上がった。



「は!?」



 何もしていないにもかかわらず発生した画面に仰け反るように驚く。

 画面にはこう書かれていた。


 ============


<<リードミー>>


 ステータス

 クエスト

 交流掲示板

 掲示板まとめ

 フレンド

 ============


 リードミー……? Readmeか!


 スマートフォンを触るような感覚で、リードミーを押す。

 なんとなく触れた気がしたところで、画面が切り替わった。



 ============


 異世界転生が完了いたしました。生存活動を開始してください。



 メニュー項目の説明を致します。


 ステータス……現在の名前、性別、ジョブ、ジョブレベル、ジョブスキル、アビリティ等を表示します。


 クエスト……試練。完了するとボーナスを贈与します。


 交流掲示板……転生者達との交流が可能です。


 掲示板まとめ……交流掲示板の内容を転生者達がまとめる事が可能です。


 フレンド……直接出会った人と個別に連絡を取れ、生存確認が可能です。



 初回のみメニューが自動展開されましたが、次回からは「メニュー展開」と声に出す、または強く念じて開いてください。

 ============



「相変わらずとても簡潔だな。しかし交流掲示板……?」



 リードミーは俺が読み終わると自動的に閉じ、最初の画面に戻る。そこにはリードミーが無くなり、更に簡潔になったメニュー画面があった。


 交流掲示板。そして転生者達。

 つまり、俺と同じ環境に置かれた人が複数いるということか?

 今の状況に不安を感じていた俺は、同じ境遇の人を求めて、まず交流掲示板をタッチした。


 今度は、掲示板を開設する、掲示板を探すという項目が現れ、俺は掲示板を探すの項目にタッチした。


 ====================

 検索「」

 表示 人気順


【異世界転生】 雑談スレpart1 


【生き残れ】 異世界攻略part1 


【三つの質問】転生時の出来事について語るスレpart1

 …………

 ……

 ====================



 検索「」をタッチすれば、どうやら自分の見たい掲示板を詳細に探せるらしい。かなり細かく条件を設定して探すことが出来るようだ。


 自動的に表示されている下の掲示板はスマホで動かすようにスクロールを出来るらしく、さらに下にいくつかのスレッドがあった。しかしまだ二桁にならないぐらいの数しか無い。


 俺は一番人気らしい雑談スレを開いた。



 ====================

【異世界転生】 雑談スレpart1 


 1:名無しの学徒

 取り急ぎたてました。

 誰か居ますか?


 2:名無しの村人

 いるぞ


 3:名無しの剣士

 どうなってんだ!誰か説明出来ないのか?


 4:名無しの商人

 意味が分からない!

 今日も仕事あるんだぞ!

 返せよ!


 5:名無しの無職

 誘拐だろこれふざけんな


 6:名無しの学徒

 どうすればいいの。どうすればいい。

 何すればいい


 7:名無しの僧侶

 意味分からなすぎて怖いここどこ


 8:名無しの大工

 誰か助けてくれよ! なんだよここ!



 …………

 ……

 ====================








今後掲示板内容ではネットスラング「草、www」などを使う予定です。苦手な方は申し訳ありません。


www

ワールドワイドウェブ……ではなく、面白いという感情表現の時に使われるネットスラングの一つ。

wwwは(笑)と同様に、嘲笑うような使われ方をされていた時もあったが、ネット上に広まり過ぎて今では単に面白い時に使われる事が多い。

また、 草 という簡潔な表現をされる事も多い。これはまるでwwwwwwが草が生い茂っているように見えることから、このように呼ばれるようになったと言われているらしい。


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