2話 解答への困惑
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解。転生先の状況について。
【試練のダンジョン】という魔素形成特殊建造物に、対象者の肉体をコピーした後、世界に合わせジョブに適合する様肉体改造を施し、特殊なアビリティを予め付与した魂を封入。
そこで生産された転生者に、敵性存在のいる環境における生存競争を行わせ、覚醒者の具象化実験を試みます。
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質 問 し た ら 分 か ら な い 事 が 増 え た 。
試練のダンジョン? 魔素? 肉体改造? 覚醒者?
絶対質問足りないんですが……。
紙に書かれた文章は俺が読み終わったからか、またゆっくりと消えていき、元のジョブ選択項目に戻る。
そして質問回数の数字が3から2へ変わっていた。
もう分からないものは分からないものとして本題を考えよう。
解答は成された。最初の「転生先の状況」のみについて答えたのか、すべての質問を要約したのかは分からないが、複数の文で喋ったとしても一回としてカウントしてくれるらしい。
さて、肝心の内容についてだが、全てについて考察するとキリがないので生存を軸に考える。
この場合重要な情報は「敵性存在がいる場所で生存競争をする事」、そして「ジョブに合わせ肉体改造する事」、この二点だ。
明らかに何かと戦わせる、もしくはサバイバルさせることを前提としてこの転生は行われる。
すなわち、生存に必要なのは金銭や交友といった社会的適応能力ではなく、身体能力などの原始的な自然適応能力が必要と考えられる。
そしてそれを今から得られるのは……ジョブ。
肉体改造とか字面だけで恐ろしいと感じるが、どうせ改造されるなら俺にとって有利な改造であってほしい。
次は、ジョブについて聞いてみるとしよう。
「【質問】…………ジョブによって行われる肉体改造にはどのような違いがある? 各ジョブのメリットデメリットについて詳しく教えてほしい」
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解。各ジョブの詳細について。対象者に許された閲覧権限内の物のみ記述。
・無職
……職の無い状態。
【特徴】 あらゆるジョブへの可能性を持つ。
【ステータス】 強化補正無し。
【スキル】 獲得不可。
・奴隷
……非支配階級。
【特徴】指導者からの学習に補正。
【ステータス】身体能力に若干の強化補正。
【スキル】精神耐性系に獲得補正。
・村人
……普遍的ジョブ。
【特徴】無い。
【ステータス】身体能力に微細な強化補正。
【スキル】獲得補正無し。
・学徒
……学問をする者。
【特徴】指導者からの学習に補正。
【ステータス】強化補正無し。
【スキル】情報処理系に獲得補正。
・商人
……商売をする者。
【特徴】交渉と情報処理に補正。
【ステータス】強化補正無し。
【スキル】情報処理系、交渉系スキルに獲得補正。
・魔王
……。
【特徴】
【ステータス】全能力に大きな強化補正。魔法能力に極大強化補正。
【スキル】魔法系スキルに獲得補正。補正。補正。
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「疑問を際限なく増やすのやめてくれませんかねぇ!?」
特徴は分かる。ステータスもまあゲーム的な意味で考えて、基本的な各能力値のようなものだろう。
スキルってなんだ。常識的な技能を表すのか? いや、魔法とか言ってる時点で超常的な意味を持ちそうだ。
思索を一旦ストップ。
生存、生存を優先だ。一個ずつ判断。
まず無職。可能性とかいう言葉に惹かれるが、敵がいるとかいう場所でジョブとやらの恩恵無しは怖い。可能性を示す前に死ぬのは勘弁だ。次。
奴隷。字面最悪だが、身体能力への補正が嬉しい。精神耐性も心の強さが増す可能性を考えれば良い。保留
村人。無職よりマシみたいな内容。次。
学徒と商人。サバイバル出来そうにない内容。次。
魔王。ジョブの説明と特徴と、あとスキル獲得補正が明らかに不自然。多分最初の説明にある閲覧権限とやらに引っかかるんだろう。
全能力に大きな補正とか言ってるし明らかに強そうではある。だが、圧倒的な地雷臭がする……。
結局残ったのは、奴隷と魔王。
「究極の二択にも程があるだろ……」
考えているうちに紙に書かれていた文字は消えていき、元のジョブ選択文に戻る。
肉体と精神に恩恵があり、辛うじてサバイバルでも生存出来そうな奴隷を選ぶか。
生存には一番役に立ちそうな能力でも、一部の閲覧が出来ずどんなデメリットが有るかが分からない魔王を選ぶか。
……第三の選択肢として、質問の答えへの深読みを行い、異世界とやらで行われる肉体改造にデフォルトで強化が掛かることを祈り、他のジョブにするか。もちろん最悪、素のままサバイバルをさせられることになるが。
3つ目の質問を肉体改造の詳細に使ってもいいが、結局デフォルトで強化があるにしても、敵性存在とやらの強さが分からない以上、ジョブの恩恵がいるかどうかの判断が出来ない。
「はぁぁぁぁぁ……」
考えることが多すぎて頭が痛くなってくる。
ジョブのことは一旦置いておくとして、最後の質問だ。
これで俺に許された質問は終わり。その後はジョブを選び、異世界へ飛ばされることになるだろう。
疑問点は、聞くべきことは、いくらでもある。その中で俺がした質問は……。
【ダンジョン】
直訳で地下牢。しかし、英語の本来の意味で使われることは日本では余り聞かない。作者はどれがきっかけなのか知らないが、多数のゲーム等で「特殊な迷宮」という意味合いで使われる。今回使われる意味もそれ。
この言葉はいわゆるゲーム用語と言えるが、一般に広く意味が伝わっているため、ニュース等でも使われる事があり、だいたいの人に通じる。
【ジョブ】
直訳で職業。そのままの意味でも多少通じるが、一部「いやそれ職業って意味じゃ無理があるでしょ」という内容もあるため注意。
今回登場した単語もゲーム用語であり、イメージの違いとしては
「その職業をしているからその仕事が身につく」職業、
「そのジョブに就くという事はこの能力を自動的に得られる」ジョブ、
とジョブはある程度過程を無視して結果を得られる傾向がある。
あとこの後書き用語解説はwikiとか辞書とか参考にしますが、主に自分が捉えている意味を書くので大きく間違っていた時は指摘して頂けると助かります。