表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

1話 灰色の部屋

 



 俺は今、灰色の部屋にいる。

 部屋には灰色の簡素な椅子が一つ、灰色の学校机のようなものが一つ。

 窓は無い。灰色の壁だけだ。

 ドアは無い。灰色の壁だけだ。


 ……いや、丸い壁時計だけはある。

 6時の時刻を指す、時計だけは存在する。


 それから意識を外し、机に目を向ける。机の上には紙が一枚あった。



「これは……?」



 紙にはこう書かれていた。



 ===========

 おめでとうございます。あなたは選ばれました。

 好きなジョブを選び、異世界に転生します。

 さらに、転生時に特別なアビリティが構築されます。

 拒否権はありません。

 質問は三回のみ許可されます。

 ===========



「なん、だよ、おい……」



 異世界転生? いや、俺もネット小説やアニメ等、多少は見るし、その内容に齟齬(そご)が無ければ想像は出来る。

 しかし、この雰囲気は余りにも……。



「こんな部屋で紙切れ一枚に指示が書かれてて拒否権無しとか、どっちかっていうとデスゲームに参加させられそうに思えるんだが」



 状況に困惑し、乾いた笑いを漏らす。働かない頭のまま紙を見つめていると、文字がゆっくりと消えていく。



「お、おい! 待ってくれ!」



 目の前でインクが薄れていく超常現象に驚くよりも、混乱したまま話が進むことに怯え、思わず声を張り上げる。

 しかし、無情にも紙は新たな文章を浮かび上がらせた。


 ===========

 ジョブを選んでください。

 ・無職

 ・奴隷

 ・村人

 ・学徒

 ・商人

 ・魔王



 なお質問は紙に触れながら「質問」と発言の後、音声入力を行ってください。残り質問回数は三回です。

 ===========



「話進めすぎだろ!」



 この部屋を用意した奴は余りにもせっかちだ。まだ一つとして理解していないにも関わらず、強引に話を進めていく。



「っクソ! あー! 状況を整理しよう」



 自分を落ち着かせることを目的に独り言をつぶやく。それがどれほどの意味合いを持つかはわからないが、思考だけは加速していく。



「大事なことはまず、この紙を信じるなら俺は異世界に転生させられること。そこでジョブとかいう物と特別なアビリティを貰えること。質問は三回しかできないことだ。」



 文章が簡潔過ぎるがゆえに、ほぼそのまま一枚目の紙の内容を読み上げただけになってしまっている。ただ、その確認が俺には大切な事だった。



「拒否権は無いなんて念押ししてるぐらいだし、こいつは俺が何か要求しても聞く気なんて無いんだろう。質問は三回とわざわざ書いて制限をかけているところにも、それ以外を認める気はないという意思が見える」



 こんな簡潔な文章じゃ書いた奴の性格なんてわからない。事務的過ぎて威圧的に見えるという俺の主観的な感想ぐらいしか思い浮かばない。



「どうする? 何が目的だ、っていう根本的な質問をするか……? しかし、質問は三回しか出来ないんだぞ……」



 たった三回の質問。それが俺の頭を悩ませていた。

 現状は分からない事ばかりだ。


 異世界転生とは? どんなところにどんな状態で転生するんだ? 赤子か成人のままなのか、そもそもちゃんと人なのか、環境は地球の常識で考えていいのか? 記憶はどうなる?


 ジョブってなんだ? 職業? それによって何が変わるんだ? 魔王?


 特別なアビリティとは?


 なんで俺が選ばれた? 何の中から選ばれた?


 この部屋は一体なんだ?


 そもそも質問とはどの程度許されるんだ? 大きな範囲で聞いて答えは返ってくるのか?



 追い込まれた俺が第一に優先するのは……生存。



「とりあえず…………死ぬのは嫌だな」



 転生、という事は一度死ぬのかもしれないが、それは置いておいて。

 少なくとも自分に死んだ記憶などないし、当たり前だが死ぬのは怖い。

 転生した先ですぐに死ぬという可能性が一番恐れるべき事態であり、今、俺がするべきはそれを避ける事だ。


 論理的結論というよりは単なる生存本能。直感的な思考の終着点だった。



「とりあえず質問するべきは……環境か?」



 まずは全ての前提となる、転生後の環境を聞くべきだ。

 人がいて文化がありそこに転生するなら、それに馴染むことを優先して質問を重ねるべきだし、ジャングルに転生するならサバイバル目的の質問をするべきだ。

 俺は意を決して紙に触れた。



「すぅぅぅ………【質問】!」



 またゆっくりと紙の上の文字が全て消えていく。ここに回答が書かれていくという事だろうか。



「俺が転生する先の状況が知りたい。俺は俺のまま異世界に行くのか、転生先の環境や、生きるためには何が必須とされるのか。」



 どうだ? これは質問一回とカウントしてくれるのか? 最悪、文単位で質問としてカウントされてもいいようにはしたが。



 ============

 解。転生先の状況について。

【試練のダンジョン】という魔素形成特殊建造物に、対象者の肉体をコピーした後、世界に合わせジョブに適合する様に肉体改造を施し、特殊なアビリティを予め付与した魂を封入。

 そこで生産された転生者に、敵性存在のいる環境における生存競争を行わせ、覚醒者の具象化実験を試みます。

 ============




 ごめん、なんて?



後書き 

用語解説


異世界転生 現世より解き放たれ別世界に生まれ変わる事。どこからが転移でどこからが転生かがたまに議論される。

詳しくはなろうランキング上位やラノベなどを見よう。昨今流行っているのは間違いないが、ジャンル自体はかなり昔からあるぞ!


デスゲーム

某二刀流剣士の影響でVRMMO的なイメージが浮かびがちであるが、作中で主人公が上げた例はどちらかというと「クラスの皆で殺しあってください」とか「島の中で最後に生き残った者のみ生存できます」とかそういう類のデスゲーム作品である。


今後も冗長になりそうでカットした解説を気分次第で後書きに書く。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ