親分
私とフランは商船を降りると、波止場を通って島の奥へと向かった。
あちこちに見張りの海賊が立っていて、まあ海賊なんだから当然なんだけどむさくるしい。
肩も腕も出ている毛皮のぼろきれみたいなの着ていて、それお腹丸出しだけど冷えないの? 着てる意味あるの? って感じ。
強さアピールのためか帽子代わりに魔物の頭蓋骨を被ってるのが、めっちゃ重そう。別にカンカン照りってわけじゃないから帽子は要らなくない? 兜のつもりだとしても、海から敵が来たときはすぐ分かるんだから、ずっと被ってなくてよくない? みたいな。
そんなことを思いながら歩いていると、海賊たちが野次を飛ばしてくる。
「今日の行商人はやたらチビだなぁ!」「おつかいかぁ?」「チビすぎて虫かと思ったぜぇ!」「ガキは帰ってママに甘えてな!」「剣士のねーちゃんはイイぞ! イイケツ!」「オジサンらと遊ぼうぜー!」
などなど、ホントに大人なのか疑問になるくらいの大騒ぎだ。
フランの額に青筋が走る。
「……ネネ様。斬ってきてよろしいですか?」
「だめだめ!」
「ですが、ネネ様に対してあれほどの侮辱……到底許されることではありません。微塵切りにして魚の餌にしましょう。その魚で美味しいカルパッチョをこしらえます」
「海賊の肉で釣った魚とか夕ごはんにしたくないからね!?」
長いこと傭兵やってたせいか、この子は血の気が多い。ひょっとしたら海賊よりもバイオレンスなんじゃないだろーか。
「戦わなくて済むならそれに越したことはないんだから、平和が一番だよ。残酷なことはダメ! 命は大事なモノなんだよ!」
とかなんとか言っちゃってみたりする! いのち……だいじ……だいじ……? うん! よく分かんない!
「ネネ様がそうおっしゃるなら……」
剣を抜こうとした手を止めるフラン。でもしっかり柄を握っているからいつでもノリで海賊を叩き切りそうだ。
私とフランは知能チンパンジー以下の海賊共にぴーぴー口笛を吹かれながら、親玉の屋敷にやって来た。ホントぴーぴーうるさくて、オウムの巣にでも入ってきたのかなってなる。
「こんにちはー! 親分に会いに来たよー!」
私は親玉に元気に挨拶した。
親玉は毛皮の上に置いたでっかい椅子に座ってる。もはや玉座みたいないかめしさだけど、散りばめられているのは宝石じゃなく魔物の骨や角。骸骨もいっぱい飾ってある。
海賊って骨大好きだよねー。わーかーるー! 骨って可愛くてイイよね!
「子供がこんなところになにをしに来た?」
筋肉ムキムキ筋肉お化けみたいな親玉が尋ねた。
「ちょっとお願いがあってー、親分さんに相談なんだけどー、だめ?」
「ダメかどうかは内容を聞かんと分からん」
「えっとねー、簡単なことだよ! あんたたちが持ってる海賊船、一つちょーだい! 一番かっこいーやつ!」
私は笑顔で手を差し出した。




