報酬
洞窟に行くと、本物のジュニアはすぐに見つかった。魔物がさらってきた人間たちの(元人間たちの)怨霊がうようよいたから、ちょっと聞いたら秒速だった。
「おねーちゃんたち、ありがとう! ボク、ずっとずっと怖くて、もうダメかと思ってた……」
ジュニアは震えながらも感謝してくる。いちおー調べてはみたけど、偽物とは違って邪気ゼロ。ちゃんと人間の子供だ。
フランが笑う。
「良かったですね、ネネ様! さあ、町長のところへ連れて帰りましょう!」
「ん……? あ、待って。この子を人質にしたら、普通に返すよりもっと報酬ぶんどれるんじゃ……?」
「家族が悲しみますよ!」
「でもさー、せっかくなんだしさー」
私はジュニアの意思を確認してみる。
「ね、このまま家に帰るのと、人質になるのと、どっちがいい?」
「え……? ひとじち……? それって、たのしい……?」
きょとんと問い返すジュニア。人質をよく分かっていない。
「うーん、私は楽しい!」
「じゃあ、ひとじちなる!」
「いいお返事ね! あんたのパパからとことんギャラ絞り取るよ!」
「うん! ボク、パパからしぼりとる!」
「ダメですよ!! ネネ様も冗談も過ぎます!」
冗談じゃないんだけどなー。まあいっか。
結局、私はそのまま町に戻り、残党の怨霊を回収して戦闘の後始末を済ませた。しばらくして住民たちも動き出した。
そして、町長の屋敷で。
ジュニア(本物)と再会した町長は、私とフランとジュニアから事情を聞くと愕然とした。
「あの優しくてワシの肩を揉んだりしてくれていたジュニアが、偽物だったというのか……」
「そゆこと」
「あの優しくて床のネズミを捕まえて引き裂き、それを目撃したワシにも分けてくれようとしたジュニアが、偽物だったというのか!?」
「いや気づきなよ!! 明らかにおかしいじゃん!!」
「息子からの初めてのプレゼントが屠りたての生肉、食うべきか断るべきか、ワシは迷ったというのに…………食った」
「食べちゃったの!?」
愛は盲目ってやつなんだろーか。愛なんてよく分かんないけど。
私は腰の後ろに手を組んでぴょんと跳ね、町長を見上げる。
「とりあえずそーゆーわけだから、報酬もたくさん出るよねっ?」
「もちろんだ! 言い値で出そう! いくら欲しい?」
町長はどーんと頼もしくお腹を叩いた。
「ふとっぱらー! じゃーじゃー、この屋敷と町の家ぜんぶと、町の予算ぜんぶ! 百年分くらい!」
「そ、それはさすがに厳しいが……」
「言い値で出すって言ったのに?」
「それは……そうだが……勘弁してくれ」
町長、涙目。
「んー、じゃあ、船をちょーだい!」
私は笑顔で手を差し出した。




