巨人
「おらあああ!!」
巨大ジュニアが大地に拳を振り下ろす。
「ネネ様!」
フランが私を抱き上げ、とっさに飛び退いた。
拳の突き刺さった地面が大きく陥没し、土砂の嵐が吹き上がる。
「おらおらおらおらおら!! 死ね死ね死ねええええい!!」
巨大ジュニアはまるで虫を潰す人間のように、私とフランを潰そうと連打を食らわせてくる。
フランは強化アンデッドの脚力でジュニアの攻撃をかいくぐり、広場の方まで避難した。
「凄まじい破壊力ですね……。ネネ様、どうしましょう?」
「うーん、そだね。やっぱこーゆーときは、でかいのぶつけるのが一番かなー」
私は左手を掲げて呼ばわる。
「ポチー! おいでー!!」
「え!? わ、わんっ!!」
フランが私の前に膝を突いて両手を犬のように持ち上げた。
「あんたじゃない!」
「す、すみません!」
ポチと呼ばれて瞬時に反応するとか、この子才能ありすぎ。なんの才能かは分からない。
町の外から轟音が響いた。
土砂を撒き散らしながら浮上してくるのは、隠しておいたスケルトンドラゴン。
「なんじゃありゃー!?」
ジュニアがあんぐりと口を開ける。
「ふふーん、ドラゴンだよ。見たことない?」
「ガキの頃に見たことはあるが! なんでてめえがドラゴンを飼ってるんだ!?」
「ドラゴンくらい飼うよー。そのうち世界中の全存在を飼育するのが私の仕事なんだからー」
「オレはその世界には居たくない……今のうちに死にたい……」
「お?」
「いやまだ死ねるかー!! てめえをここで殺せば済む話だー!」
気を取り直して突撃してくるジュニア!
それより早くスケルトンドラゴンが到着し、体当たりで吹っ飛ばす!
ぶっ壊れる大通りの家!
「あんまり無駄に暴れるな! 被害が増えるだろ! オレの餌場があー!」
「えー、別によくない? 誰も私のせいとは気づかないんだし!」
「この外道がああああああ!」
ジュニアがスケルトンドラゴンに掴みかかる。
スケルトンドラゴンは尻尾をぶんぶん回して辺りの家を薙ぎ倒す。
「あっあっ、もう少し大人しく戦え! やばいから! マジでやばいから!」
「くふふ、住人を守りながらじゃ全力出せないでしょー? もっと本気でかかってこなきゃー」
「おかしい……なにかが逆な気がする……どうしてオレが人間を守る側なんだあー!!」
ジュニアは嘆くが、そこは失うべき者を持った者の定め。私みたいにナッシング・トゥ・ルーズな美少女とは違う。
「さあポチ、やっちゃって! 究極奥義『町ごと全滅ボンバー』!!」
「やめろー!! ここにどれだけの人間が暮らしていると思ってるんだー!!」
スケルトンドラゴンがかっと顎を開き、ジュニアは両腕を広げて我が身で町を守ろうとする。
「なんてね! もう準備いーよ! 足下見てみなよ!」
「……は?」
ジュニアの足下、その地面には、幾つもの魔法陣が描かれていた。
ジュニアがスケルトンドラゴンに注意を惹かれているあいだに、私が儀式用のコンパクト頭蓋骨をばらまいてこしらえた魔法陣だ。
一斉に魔法陣から鎖が伸び、ジュニアに襲いかかった。
本日、『ネクロマンサー少女』書籍版の第一巻が発売です!
新規キャラを追加して大幅に改稿しておりますので、どうぞよろしくお願いいたします!
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