あやしいうらないし
町長の屋敷は、四階建てのでっかい建物だった。
もはやお城。どんだけ町からお金吸い上げてんのって感じだけど、これならいくら絞り取っても大丈夫な気がする。
私とフランはご立派な門の前に立って、屋敷を見上げた。
「ここが呪いの中心……ですか? きっと中はドロドロのぐちゃぐちゃ……今すぐ斬り込みますか?」
しゃきーんと聖剣デュランダルを構えるフラン。すぐにも門を真っ二つにしそうな勢いだ。
「斬らなくていいよ! 中はけっこー普通だから!」
「普通……?」
「うん。むしろ普通なのが……逆に厄介なんだけどね」
私は門をくぐると、玄関のノッカーを鳴らそうと手を伸ばした。
「んーっ! んーっ! んーっ!」
届かない。そっか、一周目では私はパーティの前を歩いたことなんてなかったから気づかなかったけど、身長が足りないんだ。ていうか英雄はノッカーなんか使わずドアを殴りまくってたし。
「私が代わりに鳴らしましょうか……?」
「だめ! 私がやるの! 負けた気がするから!」
「ですが……」
「主人に任せて使い魔は後ろで待ってなさい!」
一度手を伸ばした以上、引っ込みがつかない。私は頑張って背伸びしてみるが、やっぱり無理。後少しというところで、指がノッカーに触れない。
「じゃあ、抱っこさせていただきますね」
「ひゃっ!?」
いきなり後ろからフランに両脇をすくい上げられ、私の手がノッカーに届いた。私は力強くノッカーを握り締め、ガンガンガンと叩き鳴らす。
「ほら、できたでしょ!」
「はい、ネネ様はすごいです!」
素直に喜べない。なんか、母親から「すごいねえ」って褒められてる子供みたいな感じがする。
私とフランが玄関の前で待っていると、中から執事長が現れた。
「ん……? 子供か……当家になにかご用かな?」
「知らないの、私のこと。私は都で今大評判の占い師なんだよ。この町のことを占っていたら、呪いの元凶の場所が分かっちゃったから、教えに来たの」
「占い師……?」
「そう。町の住民たちに気づかれたら大変なことになるからあんたたちは秘密にしてるけど……呪いの中心は、この屋敷だよね?」
「……!! なぜそれを」
執事長はあからさまに動揺する。
「私が凄腕の占い師だからだよ。最初の兆候はそう、町長の奥さんが倒れたとこから始まったんだよね。次に乳母が倒れて、召使いたちも倒れて、それから住民たちにも呪いが広がっていった……でしょ?」
一周目で英雄パーティの隅っこで聞いていた情報だけど、矢継ぎ早に繰り出すと執事長の顔が青ざめていく。
「と、とにかく、こんなところで話すことではございません! どこの占い師様かは知りませんが、ぜひ当家の中へ!」
「……よしっ!」
執事長から招き入れられ、私はガッツポーズを取った。