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おぺれーしょん

 匂いを頼りに、深夜の墓地をうろつき、新鮮な死体の埋まっているところを捜す。

 できれば男じゃなくて、女の子、それもフランと同じくらい可愛い子のパーツがいい。


「私、なにしてんだろー!?」


 自分で自分に呆れながら、スコップざくざく。


 ちょうど良さげなパーツを見つけると、宿に引き返した。


 照明の落ちた部屋の中、フランのベッドに忍び寄る。


 ポシェットからハサミを取り出し、ゆっくりと近づけ……。


「……ネネ様?」


 ようとしたところで、フランがぱちくりと目を開けた。


「あらら……起きちゃったんだ」


 残念。寝てるあいだに済ませようと思ったのに。


「ずっと起きてました。最近あまり眠くならなくて。ネネ様はどちらにいらっしゃったんですか」


「いいから、目を閉じて」


「はい」


 私の右手のハサミは気にもせず、素直なものである。


「んーーーーっ……」


 フランは言われた通りに目を閉じると、胸元に手を組み、唇を丸めて待ち構える。


「あんたはなにをしているの……?」


「え? ネネ様にキスされるのを待っていますが……?」


「キ、キスなんかするわけないでしょ! なに勘違いしてんの!」


「そうなんですか……」


「なにしょんぼりしてんの!?」


「いえ、ちょっと覚悟してしまったもので」


 頬を赤らめるフランに、私までうなじが熱くなる。


「そういう覚悟はしなくていいから! あんたがしなきゃいけないのは、もっと別の覚悟だから!」


「別の覚悟とは……?」


「知らない! もーめんどくさいからさくっと済ませちゃう!」


「きゃっ!?」


 私はフランの顎を鷲掴みにすると、唇を寄せ……なんてことはせず、ハサミを寄せる。


 はい、ちょっきん。




 翌日。


 昨日の高級レストランに再チャレンジした私たちは、昨日より豪華なコースを頼んでテーブルに陣取っていた。


 おかげで軍資金は目減りしちゃったけど、まあ、仕方ない。


 舌パーツを新しく交換したフランは、甲殻類のポタージュをすすって目を丸くする。


「おいしい……です。こんなおいしいもの、私、生まれて初めて食べました」


「ふふん、そうでしょー。見てるだけより、絶対いいでしょ?」


「はい、ありがとうございます。おいしいのも、嬉しいんですけど……ネネ様と一緒に楽しめるのが、すごく嬉しいです」


「そ、そうなんだ?」


「ネネ様と同じものを同じときに味わって、感じて、共有できるの……素敵ですから」


「よ、よかったね。じゃ、じゃあ、食べるよ」


「はいっ!」


 フランの笑顔が、眩しい。


 困ったな、こんなキラキラしたものは、闇のネクロマンサーには毒だ。


 赤くなってるだろうほっぺたを隠すようにして、私はスープをすすった。

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