サルベージ
一度は吸血貴族の館を離れたけど、大事なことを忘れてた。
そう、強奪だ。
せっかく館の主を倒したのに家財道具一式をかっさらわないなんて、頑張って戦った意味がまったくない。
ので、私は吸血貴族の館に引き返し、主の部屋を物色する。
「なんかイイものないかなー? 金目のものー!」
上等なチェストの引き出しを開け、タンスを奥まで探り、やたらキンキラした洋服を引っ張り出す。
フランは落ち着かない様子で辺りを見回している。
「ネ、ネネ様……人の部屋に勝手に入ってはいけないのでは……?」
「だいじょーぶ! もう持ち主は死んでるから!」
「勝手に持っていくのは泥棒なのでは……?」
「だいじょーぶ! 魔族のモノを持っていっても泥棒にはならないから! 魔族だから……仕方ないよねえ……人間じゃないしね! ってみんな思うから!」
「そうなんですね……?」
どうもフランはちょっと真面目すぎるタイプらしい。
「そうだよー! 私が保証する!」
「ネネ様の保証! つまりそれは永久保証ということですね! お得です! フラン覚えました……魔族からならいくらでも強奪して問題ない!」
「よしよし」
「きゅんきゅん!」
私が頭を撫でると、フランは犬のように目を細めた。ついでにこの子はちょっと素直すぎる性格らしい。勇者のパーティに入ったら一瞬で傷物にされてたかも。私が拾って良かった。
「なんて思ってないんだからね!!」
「……ネネ様?」
私が恥ずかしくなって声を上げると、フランはきょとんとした。まあ意味が分からないのは当然だけど、分からなくていい。むしろ分からないでほしい。
「うーん、吸血貴族は家具にお金かけるタイプかー。タンスとかはさすがに街まで持ってけないよね?」
「いえ! ネネ様のご命令とあらば、タンスでも本棚でもベッドでも、それこそ屋敷でも、たとえ体が潰れても運んでいきます! どうぞ私の体を潰してください! ネネ様のために!」
などと高らかに宣言しながらフランは巨大なベッドを持ち上げた。
「おおーーーー……」
ぱちぱちと私は手を叩く。すごい筋力。
が、次の瞬間、フランはベッドの下敷きになった。ぐちゃっと危ない音がした。
「……大丈夫?」
私はベッドの下に挟まったフランを覗き込む。
「大丈夫です! 痛くもかゆくもありませんから!」
「うん、それはあんたがアンデッドだからなんだけどね?」
結構大変な感じに潰れちゃっているから、どうも無理があったっぽい。
とりあえず軽そうなものだけ掻き集め、フランに山積み背負わせて、吸血貴族の館を後にする。
「これ、どうするんですか? キセルとか、ネネ様がお使いになるのですか?」
歩きながらフランが尋ねた。
「もちろん売るんだよ。勇者たちがよく使ってたお店があるんだよねー。リサイクルショップみたいな感じのお店」
「りさいくるしょっぷ……?」
フランは首を傾げた。




