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神様は明後日帰る 第4章(帰郷篇)  作者: ロッドユール
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抵抗

 雅男はもう、歩けるまでになっていた。でも、まだ刺されたところが痛むのか、ベッドから立ち上がるのには苦労していた。

 雅男は、病室に入って来る私を見つけると、いつものように小さく微笑んだ。私も少し微笑み、ベッド脇のいつもの丸いパイプ椅子に座った。それはいつもの、何の変哲もない、もはや日常になりつつある自然な流れだった。

 そこから私たちは何の気ない会話を交わし、いつものように、お互いのことを語り合った。

 今日の雅男は、気分が良いのか、いつになく饒舌だった。私もそれに影響されたのか、いつになく話しに力が籠った―――。

 ふと会話が途切れ、雅男がベッドから立ち上がろうとした時だった。私は雅男を支えようと肩を寄せた。

「!」

 その瞬間、雅男が突然私を抱き締めた。

 一瞬、時が止まった。思考が止まった。ありとあらゆる全てが私の中で止まった。

「・・・」

 私は抵抗しなかった。それが、してはいけないことなのだとどこか頭の片隅に感覚として強くあった。でも、私は抵抗しなかった。

 雅男は、私を抱き締め続けた。窓の外には太陽がさんさんと降り注ぎ、病院業務の日常音が、何の変哲もなく流れていた。

「・・・」

「・・・」

 私たちは微動だにせず、黙っていた。お互いの内に、共通の罪悪感と、何に対してなのか分からない恐怖を秘めながら―――。

「あなたはまたどこかへ行ってしまいそうな気がするんです」

 雅男が呟くように言った。

「あなたを抱き締めていないと、しっかりと抱き締めていないと・・」

 私は雅男の胸の中でその言葉を、どこか遠い夢の中で夢を見ているように聞いていた。

「僕は・・、僕は・・」

 私の手に力がこもった。もう私の理性はどうしようもなく抗えなかった。

「抱き締めて」

「えっ?」

「あの時みたいに・・、しっかりと・・」

「・・・」

 雅男は力いっぱい私を抱き締めた。

「僕は・・、君のお兄さんを・・」

「言わないで」

「それは言わないで・・」

 私たちはキスをした。お互いの内に共通の苦しみと、抵抗できない熱い思いを感じながら―――。

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