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神様は明後日帰る 第4章(帰郷篇)  作者: ロッドユール
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両親

 父の容態は日増しに良くなっていった。

「これなら、もうすぐ退院できそうですね」

 若い看護婦さんが明るい笑顔で私に言った。

「そうですか。ありがとうございます」

 父の手術は無事成功し、もう立ち上がれるまでになっていた。

「いい娘さんですね」

 看護婦さんが、父の方を向いて笑顔で言った。私はどんなに忙しくても必ず毎日見舞いに来ていた。多分それを見ていたのだろう。

「ふん」

 父はそれには答えず、ベッドの上でふてくされていた。酒を飲まさないことが気に入らないらしい。

「ほんとバカですから」

 私がにこやかに看護婦さんに言うと、看護婦さんは、ふふふと笑って病室から出て行った。

「ほらっ、リハビリの時間だぞ」

「俺は父親だぞ」

「だからなんだよ」

「父親にはもっとやさしくしろ」

「やさしくしてるだろ」

「してない」

「立てるんだからどんどん歩く練習しないと、回復が遅れるってお医者さんも言ってただろ」

「虐待だぞ」

「なんでだよ」

「虐待だ」

「いいから立て」

 しかし、父はふてくされたまま、全く動こうとさえしなかった。

「全く」

 子供より質が悪かった。

「はあ、疲れるなぁ」

 ため息が漏れた。ほんとに心身ともに尋常じゃなく疲れた。

  

 家に帰れば帰ったで、心を病んだ母がいた。

 とりあえず、極端にふさぎ込むことはなくなったが、母は、以前よりもさらに熱心にあの巨大な仏壇の前で祈るようになった。それは、寝食を忘れるような勢いだった。

「母さん、体壊すよ」

 そう言っても、私の声が聞こえているのかいないのか、一心不乱にぶつぶつと何かを呟きながら祈り続けている。 

「・・・」

 あれから何があったのか、私には推し量るすべもなかった。あの三百万もどうなったのかすら分からなかった。

「・・・」

 最近では昔の母の面影すらも、私は思い出せなくなっていた。私が幼い頃の母は、よく笑う明るい人だった気がする。

 あの時の母は、もうここにはいない。それを思うと、私は堪らなく悲しくなった。

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