5.炎の魔法剣
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
部屋の中でフレイムソードを構えていた俺は、ニーナからそんなものを部屋の中で振り回すなと怒られ、とりあえず俺たち3人は小屋の外へ出ることにした。
ニーナの家は巨木の枝の上に建てられていた。
小屋から枝へ、枝から枝へ、階段が続いていて、それを順番に降りてゆく。
地面まで降りてから辺りを見回す。
ニーナの家のある巨木は、森の中の少し開けた場所に立っていた。
倒れた俺をあんな上まで運んだのか。いや相手は魔法使いと吸血鬼。何も不思議なことはない。
そんなことを考えているとニーナが話しかけてくる。
「さあ、バーン。もう一度剣を構えてみろ」
ニーナに言われるがままフレイムソードを構える。
そしてさっきと同じように、もう一度剣の名前を唱える。
「フレイムソード!」
ボッ!と、再び刀身に炎が燃え上がる。
「やはり魔法剣を使えるのか……しかし……」
「確かに彼に魔力は感じないわ。でも剣自体の魔力を使うのであれば使用者が魔法使いである必要はないのかも?」
怪訝そうな顔をしたニーナとパンドラが二人でぼそぼそと話している。
「一番理解不能な俺にもうちょっと説明をくれ。」
「お前は理解せずに刀身に火を宿してるのか?」
ニーナからの問に、俺は少し考えてから答える。
「理解せずというか……こう、イメージっていうの?頭ん中で剣に火が付くイメージが湧いてきて、その通りになってる感じかな?」
そう言われてみると、なぜだか俺はこの剣を振るうときのイメージが湧いてくる。
素振りをすれば刀身から斬撃が飛ぶような気がするのだ。
「なあニーナ、あそこの木を1本切ってしまってもいいか?」
「あ、ああ……。」
ニーナの了承を得て、俺は剣を構える。さっき俺が指さした木からかなり離れた距離で。
そう、さっきの斬撃を飛ばすイメージで木を切断してみようと思ったのだ。
黙って見守るニーナとパンドラ。
頭の中に斬撃の呪文が浮かぶ。呪文というか、技の名前だ。
しかし、もしこれで何も飛ばなかったら非常に恥ずかしい。
恥ずかしいから練習は一人でした方がいいんじゃないか?
いや、大丈夫だ。
なぜだか自信がある。
できる気がする。
行くぞ!
「バーニング……」
俺は剣を大きく振りかぶる。刀身の炎が一段と大きくなる。
「スラッシュ!!!」
力いっぱいフレイムソードを振り下ろす。俺の頭の中のイメージ通り、炎をまとった斬撃がゴオと音を立て正面に飛んだ。
直後、斬撃のぶつかった木は両断され、大きな音を立てて倒れる。バチバチと燃えていた切り口を炎は、まもなく静かに消えた……。
「出た!」
ちょっとホッとした表情で俺はつぶやいた。
横でニーナとパンドラが目を丸くしている。
「見たか?」
「見たわ……。」
「火焔剣が正式な使用者として認めたという事か……」
「ニーナ、この剣はすごいな。本当にもらってもいいのか?」
今さらダメだと言われても困るが、これほどの魔法の剣など伝説でしか聞いたことがない。国宝級の武具だ。売れば一生遊んで暮らせるだろう。だが手に持って確信した。これほどしっくりくる武器はない。これは俺の一生ものだ。
「バーン、返せとは言わないが扱いには十分気を付けろ。炎の精霊は暴走すると止められない。さっきはたまたますぐに火が消えたからいいものの、もし森に燃え移ったら大惨事になってしまうところだぞ。」
「ああ。アドバイスありがとう。でも何というか、今のは木を切ったらすぐに火が消えるように切ったんだ。こう燃え広がるようなイメージじゃなくて。」
別にニーナに逆らうつもりではなく、思っていることを素直に言った。
「コントロールできるのか?」
ニーナは目を丸くしている。
「認めるしかないでしょうね。」
「ああ……。」
ニーナとパンドラの二人はなにやら納得したような顔をしているが、俺はいろいろと理解できていないので質問してみることにした。
「ニーナ、これは魔法剣なんだな?」
「その通りだ。それは古代超帝国の秘宝の一つ。炎の魔法剣、火焔剣。さっきお前がその剣を出した箱の中は、私の魔法で過去・現在・未来とあらゆる全ての空間を繋ぎ、お前の求めるものと時空を繋いだ。その剣は今でなくてもいずれお前が手にする運命だったものだ。」
「俺が強い武器が欲しいと念じたからこの剣が取り出せたって事?」
「そうだ。いささか私も驚いたが。まさかそんな大物が出てくるとは。」
「でもなんでもいろいろ知ってんだな。古代超帝国って何千年も昔に滅びた超文明のことだろ?今でも古代遺跡とかからたまにこういう未知のアイテムが発掘されることがあるって聞くけど、それがどういうものなのか調べるのも大変だっていうのに……」
「そりゃ私たちは実際に目で見てきたしな。」
「え?」
「だから私たちは古代超帝国の時代に、実際にその火焔剣や様々なマジックアイテムが使われているところを見てきたんだから、知ってて当たり前だってこと」
「え?」
ということは……あなたたち何歳なの?!