4.魔法の箱
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「それで、バーン。これからどうする?」
「怪我を治してくれてありがとうニーナ。俺は盗賊から荷物を取り返しに行かなければいけない。」
怪我が治ったのだから、いつまでもここの世話になるわけにはいけない。
「今度こそ殺されるぞ?」
「だけど西の街まで届けるよう頼まれた大切な荷物があるんだ。」
「私がその盗賊を全員殺してあげようか?魔力付与剣なんかじゃ私を傷つけることはできないわ。」
物騒なことを軽く言うパンドラ。しかし丁重に断りを入れる。
「いや君はさっき人間には極力関わらないって言ってただろ?それにこれは俺の仕事だ。自分で何とかするよ。魔力付与剣って最初から分かれば対策の取りようもあるはず。」
そうだ。剣を受けようとしたからまずかったのだ。攻撃を避けて交わすことに専念すれば反撃のチャンスもあるはず。剣術で負けたのではない。武器の強さで負けただけだ。
「ふむ……ちょっと待ってろ。」
そう言うとニーナは別の部屋へ出て行った。戻ってくると、その両手には一つの箱が抱えられていた。
40センチ四方のその箱の上部には丸い穴が開いており、中が見えないよう切り込みの入った紙が貼られていた。いわゆる…その…箱の中身はなんだ?的な……
「そ、それは何ですかニーナさん?」
なんだか悪い予感しかしない俺はつい敬語になってしまう。
パンドラは爆笑している。
「お前、剣も失って盗賊と戦う術もないだろう?だから武器をやろう。さあ、手を入れてみろ!」
そう言うニーナの眼は、好奇心でキラキラしている。
「えっと……?」
そんな小さい箱の中に、どんな武器が入っていると?
「バーン!危ないから気を付けて!噛まれるかもしれないから!」
腹を抱えて笑いながら、中にカニとかヘビとかが入っているのを期待しているかのようなセリフを言うパンドラ。
「さあ、早く!」
ニーナさん、ワクワクしないでください。
だけど傷を治してくれたり驚きの連続のため、俺も思考回路がマヒしていて、それ以上深く考えることをやめた。
俺はニーナが抱える箱に近寄ると、勢いよく右腕を箱の中に突っ込んだ。
「……あれ?」
箱の中の底にぶつかるかと思ったが、底に触った感触がない。
肘まで箱に手を突っ込んでいるのだけど。
おかしいと思い横から覗くが、箱の底はなんともない。
あれ?俺の腕はどうなっちゃってるの???
「何かあったか?」
ニーナの質問に、「いや何も……」と答える。
「もっと奥の方まで手を突っ込んでみろ。そして強く念じるんだ。強い武器を」
もう何も疑うまい。ニーナの言う通りにする。強い武器を念じながら上腕部まで腕を突っ込む。すると箱の中に剣の柄のような感触があったため強く握りしめる。そして剣を抜くイメージで箱から腕を引き抜く。
箱のふたの穴よりも剣の鍔が大きかったため、ボコッとふたが壊れて剣と一緒に抜けてしまう。そう、引き抜いたそれは間違いなく剣だった。こんなに大きな剣がどうやってこんな小さな箱の中に入っていたのだろう?いや、深く考えまい。
ふたが壊れた箱の中がちらっと見えたのだが、真っ黒な渦が渦巻いていた。見てはいけないものを見てしまったようだ。忘れよう。
「それは……?!」
俺が引き抜いた剣を見つめるニーナとパンドラ。
そして俺も両手で剣の柄をしっかりと握り、改めて観察してみる。
刃は両刃で非常に大振りな両手剣だ。1メートル以上ある刀身はどんな材質でできているのか、半透明でうっすらと向こう側が透けて見える。柄には丸い宝玉が飾られていた。見るからにそれは上等な武器だと分かる。
「これは……すごいな……」
言葉を失う俺。
そしてこの武器をくれたはずのニーナ自身も驚いているようだった。
「まさか……いや、間違いない。それは……火焔剣!」
「フレイムソード?」
ニーナの言葉を繰り返す俺。すると次の瞬間、ボッと剣の刀身に炎が点火した。
「うお?!」
俺が持つフレイムソードの刀身全体が燃えている。なんだこれは?
「まさか?!フレイムソードを使えるのか?!お前に魔力は感じなかったぞ?!」
一体何が起こっているというのか?
ニーナさん説明願います!!!