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僕が小説を、書こうと思ったワケ  作者: 豊田健一郎
7/8

忘れられた物語たち

僕の小説の舞台はある田舎町だった。当然架空の町だ、どこにも存在はしない。

ただし、フォークナーの創造したヨクナパトーファ州とは重みが違う、僕の創造した町はただただ、僕が住みやすいだけの町だ。何の信念もない。


幼い頃、多くの人がそうであるように、僕の脳内には様々な人物がいた。幼い頃の創造力は本当にすごい。何人もの人物を僕は創造していたし、そのひとりひとりにきちんと名前があった。

しかし、今同じように創造しろと言われるとすごく難しい。もう何人もの人物を創造することはできない。


たまに、町を歩いていると、急に昔僕が創造した登場人物に遭遇することがある。僕は彼らに自分自身が課した運命を、もう覚えていない。

彼らはたまにうらめしそうに僕を見た。「あの人たちはだれなの?」

彼女は聞いた。

「さぁ、わからないな」

「あなたは」彼女は大きな目で何回も瞬きしながら言った。「あなたは私のこともいつか忘れてしまうわ」

「なんでそんなこと言うの?」

「あなたが忘れたら私はこの世の誰にも認識されなくなる。それだけの存在なの」

「だから僕は君を忘れないようにする」

「それは、どうかな」

彼女はまた寂しそうに微笑んだ。

「だから僕は君を存在させる為に、誰も君を忘れないように小説を書くんだ」

僕がそう言うと彼女は、ありがとう、と言った。

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