第2話。心霊体験①
あれは僕がまだ『ひきこもり』ライフを満喫していた頃の話だったと思う。
大学を卒業して就職しなかった僕は(就職する気は全くなかった)最初の頃は不安だった。
特に朝起きた時、世の中が動いているのに自分だけが世界から取り残されているような気分は憂鬱だった。
何もすることがない恐怖。
しかし、次第にその感覚は薄れていった。精神崩壊の防衛本能みたいなものなんだろうか。
一切、悩まなくなったのである。
それどころか、有り余る自由と時間を楽しむようになっていった。快適な生活。
元々、本が好きだった自分は図書館に通ったり、詩を書いたりして過ごしたりしていた。
また、この頃が最も人との交流が多かった時期でもある。
社会人になると明日の朝も早いから今日はもう寝よう、とほとんど誰もが行動に制限をかけるようになってしまう。無茶ができるのは学生の頃までだ。僕らは社会の鎖に縛られている。
しかし、働いていない僕にとって、明日の心配などある意味では不要だった。
朝まで徹夜したって、朝から寝ればいいのだから。
ネットやライブハウスなどで知り合った人と朝までファミレスや居酒屋で人生を語り合ったりした。
『果たして人間に生きる意味、生きる価値』はあるのか?
それが僕にとって最大の関心事であり、友人たちとの会話の中で重要なテーマであった。
彼らもまた将来の見えない、『ひきこもり』たちであった。
『なんとか、就職しないで生きる方法ってないもんかねぇ?!俺、絶対、会社勤めなんか向いてないし、会社勤めなんかしたくねぇよぉ。』