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スペシャルゲスト

   

   スペシャルゲスト


「うーん……話がややこしくなってきたな」

 と、京が独り言を言っていると、今日のスペシャルゲストが客間にやってきた。

「何かあったんスか?」

「噂じゃ人が殺されたとか……」

 先程、赤石の話に出てきた――配達員アルバイトの岩井と石田である。タヌキみたいなのが岩井、キツネみたいなのが石田である。スペシャルゲストと(しょう)したのは、さっきの話を受けて急遽容疑者に追加したからである。

「停電時に赤石さんに呼び出されたのは君ら?」

 と、京は疲れてきたのか、少し投げやりに質問した。アルバイトの二人は高校二年生のため、美女と野獣より年下。緊張感も薄れてくる。

「突然呼び出されたんで、怒られるのかと思ったんスよ」

 そんなことは訊いていない。

「人手が足りないから来てくれって言われたんです」

「午後六時ぐらいに?」

 と、京は(話がわかる)岩井に訊いた。

「はい。それからずっと石田と赤石さんの三人で作業してました」

「この家、都会の外れにあるんっスよね。だから、すごい大変だったんスよ」

 この二人、外見も対照的だが性格も正反対のようだ。

「それで、七時にみんなで寝室の様子を見に行ったんだね?」

「そうっスね。(ふすま)開けたら死体っスよ! 死体!」

 と、石田は興奮しながら言った。

「そのすぐ側に、鋏を持った飛田さんがいました」

 と、岩井は冷静に話した。

「何か変わったことは?」

 と、京は二人に訊いた。

「赤石さんが色々持って来いって言ってたんスよ。ガムテープ、鋏、カッターナイフ、輪ゴム、麻紐――まぁ、肝心の懐中電灯を忘れたんっスけどね」

「懐中電灯は頼まれてないだろ? それと、停電が直る少し前に大きな音がしましたよ」

 と、二人は各々(おのおの)意見を述べた。

「ご協力ありがとう。それじゃこれで――」

 と、京が手短に事情聴取を終わらせようとした時、石田が何かを思い出した。

「あ! 大きな音が鳴る前、寝室に誰か入っていったよな?」

 と、石田は岩井に問い掛ける。

「そういえばそうだね……遠目からだけど人影を見たような気がする」

 と、岩井は頷きながら答えた。

「その人影って、飛田さんっぽかった?」

 と、京は試しにそう訊いてみた。

「いや、赤石先輩だったっスよ」

「え? 飛田さんでしたよ」

 目撃証言まで正反対にされちゃ困る。

「絶対赤石先輩だった!」

「飛田さんだよ!」

 というように、いつまで経っても意見がまとまらないので、京は事情聴取を終わらせた。でこぼこコンビはすぐに部屋から出て行った。やがて綾女が客間に入ってきて、

「随分時間が掛かりましたね。何か重要な証言でもありましたか?」

 と言った。

「どこ行ってたの?」

「父と電話をしておりました」

 宇治川綾女は名家の御令嬢。綾女の両親は京を護衛に付けさせるほど過保護なのである。九時になると京の携帯電話に連絡が入る。いつものことだ。

「帰って来いって?」

「京が傍についているなら安心だ、と申しておりました」

「おじさんはアタシのことを過大評価しすぎだよ。ボディガードじゃあるまいし」

 と、京は後ろ首を掻きながら言った。続けて、

「とりあえず、アルバイトの二人は犯人じゃないよ」

「どうしてそう言い切れるのですか?」

「話を聞けばわかる」

 と、京は綾女に事情聴取した内容をかいつまんで説明した。綾女が納得した顔をした。

「確かに犯人ではなさそうですね。二人は停電中しか現場にいませんでしたし、ずっと三人で作業してたと証言しています」

「一つ気がついたんだけど……赤石さんもアリバイが成立するんじゃないか?」

 と、京はメモ帳にシャーペンを歩かせながら言った。

「いいえ。赤石さんのアリバイが成立するのは停電中だけ。この家にはもっと前からいましたから」

「そうか――赤石さんだけじゃなく、飛田さんにしても、奥羽さんにしても、木曽川さんを殺す時間は十分あったってことだよね」

「そう……やはり犯人はあの三人の中にいるのです」

 飛田、奥羽、赤石――誰が人形師を殺したのか……謎は深まるばかりだった……。


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