第六話 笑顔
忠義にあつい武将、周泰は命を懸けて主君を守り続ける。その論功行賞に一部の武将からは不満が出てくるが…。中国の三国時代を舞台に、熱き男達の物語が紡がれる!
本小説は、三国志を題材としたオンラインゲームをネタにした筆者のブログ「今日も二泉に月は映えて」にかつて掲載したものを再編集したものです。
「泣くな、泣くな、酒は笑って飲むもんだぜ?」
甘寧の言葉に、もらい泣きしていた幕僚たちは、我に返った。
「お、おおぅ、そうだな。」
「今日はめでたい日じゃ!ささ、存分に笑って飲もうぞ!」
甘寧は周泰に近づいた。
「おめぇさんも、たまには笑って飲んだらどうなんでい?」
周泰は甘寧を横目でチラリと見た。
「ふん。そういう貴殿こそ、泣いているではないか?」
甘寧が泣いているところなど見たことの無い幕僚たちは、一斉に注目した。
「るせぇなぁ。俺は、こういう義理人情には弱えんだよ。」
「鬼の目にも涙か?」
「な…!?」
このやりとりに幕僚達は噴き出した。
「がっはっは。ひとたび戦場に出れば鬼神のごとしと言われる甘寧がのぅ、一本とられたのぅ!」
孫権が笑いながら言った。
「ったくよぅ、周泰、おめぇ、いつから冗談言うようになったんだ?」
甘寧が顔を赤くし、頭を掻きながら言った。
「たまにはよかろう。皆、笑っておる。」
「む…。」
「無礼講だ。許せ。」
そう言って周泰はニッと笑った。
それは「甘寧の泣き顔」よりも珍しい「周泰の笑顔」であった。
甘寧は初めて見た周泰の笑顔にびっくりして、目をまるくした。
宴は明け方まで続き、周泰が帰宅した頃には空は幾ばくか白みはじめていた。
「ふぅ…。さすがに飲みすぎたか…。」
周泰は床にどっかりと腰を下ろした。
「笑う…か。私ももうすこし皆と関わることをしたほうがいいのかもしれぬな…。」
不意に戸が開いた。
「あー…旦那様ぁ、今お帰りでしたかぁ…。」
眠い目をこすりながら、侍従の小蘭が言った。
「うむ。小蘭、まだ寝ていてよいぞ。」
「ふわぁーい…。でも、だいじょーぶでーすよぉー。水、お持ちしますねぇ…。」
「あぁ、頼む。」
小蘭が水を汲みに行っている間、周泰は回想していた。
宴もたけなわの頃、甘寧が赤ら顔で近づいてきた。
「おめぇさんにはよぅ、感謝してんだぜ。」
「うん?」
周泰は何のことかわからず、怪訝な顔をした。
「おめぇさんがよぅ、孫権様の護衛についてくれてたから、俺は孫権様のことは、なーんも気にせず突っ込んでいけたんだからなぁ。」
「ふん…。」
「ほれ、飲め。」
そう言って甘寧は杯を渡し、酒を注いだ。
「うーんと、なんだっけ、ああ、友の出立に、乾杯!だ。」
「友?俺と、お前が?」
周泰は首をひねった。
「あぁ。呉のため、孫権様のため、命をかける者同士なんだから、友だろ?」
甘寧はさも当然だと言わんばかりの表情を浮かべた。
友とする理由が周泰には今ひとつわからなかったが、酔った甘寧に何を言っても聞くまいと思い、「うむ…。」と相槌をうった。
甘寧は無邪気な笑顔を見せた。
庭でスズメが鳴く声がした。
「甘寧め、勝手に友などと…。」
「でも、悪くはないな。」
どことなく清々しかった。何か、いままで押さえ込んでいたものが少しずつ解き放たれるような感覚に満たされた。
「あれれれー??」
小蘭が素っ頓狂な声をあげた。
「周泰様?今、笑ってましたよね?いえ、ぜーったい笑ってました!」
「な、小蘭、馬鹿を言うな。」
「私、初めて見ましたよ!もう一度、もう一度見せてくださいよー!!」
「ちょっと、こら、やめぬか。」
「いーじゃないですかー!」
戦乱の渦中にあって、束の間の平穏な一日がはじまりを告げた。
呉国ニ猛キ者アリ
ソノ者熱キ闘志ヲ秘メ
冷静沈着ニ事ヲ成ス
ソノ武ハ、ヒトタビ刀ヲ振ルエバ天ガ裂ケ
ソノ勇ハ、万の兵ニモ怯マズ
ソノ忠義ハ、誰ヨリモ厚イ
ソノ者ハ周泰
字ヲ幼平ト言ウ
マサニ万夫不当
国士無双ノ英傑ナリ
こんな、つたない小説を最後までお読みいただいた方、おられましたら本当に感謝感激です。
私は子どものころから作文とか全くダメで、本も活字よりは漫画派でした。
そんなある日、ネットで知り合ったお友達が、ブログでとっても上手に小説を書かれるのに刺激を受けて「あたしも・・・」と思い、筆をとった次第です。
自分のブログにとどめておくだけでよかったのかもしれません。
ここに投稿させていただくのが良かったのかどうか、今もって悩みます。
ただ、あんなにも活字嫌いだった私が2万字くらい書けたというのは、これからの私の人生において、何らかのプラスになるものと思っています。
素人も素人、しかも処女作ですので、間違いやおかしな点が多々あるかと思いますが、お手柔らかにお願いいたします。