鉄板ゲット
それから1ヵ月後藤森からマホーンに電話が入った
「マホーンさん、俺見つけましたよ鉄板。」
「鉄板って何?」
「ほら、たこ焼き屋やるって話でしょ。俺今店の子と河口湖来てるんですけど、鉄板捨ててあるんですよね、たこ焼きの。これ要りますか?相当でかいですけど、大体100個は焼けますよ」
マホーンは胸が躍った。
「ちょっと持って帰ってきてよ。」
「じゃあ持ってきますよ、マホーンさんちに」
マホーンは半分あきらめていたたこ焼きの話が、実は藤森が覚えてくれていたことが嬉しかった。飲み会の席ではキャバクラに流されてしまって終わったと思い込んでいただけに、嬉しかった。
ただ、マホーンはこのことを自分の嫁には話し出せずにいた。自分は会社を辞めないにせよ、何百万円という出資は必要だし、それにこの出資が会社から副業と見られた場合解雇されるリスクも抱えなければならなかったからだ。
だから実際は実現に向けて動き出せば出すほど、動き出さないで欲しいという逆の感情が強くなっていき、動き出さないで欲しいという動きが勝っていくのを感じた。
というわけで、もやもやしながらもマホーンはもやもやと考えた。
「実現出来るか分からないけど、実現できないと思うけど・・・実現できないと思うから嫁に話そう。」
「いやっ、実現はしたいんだけど、投資のリスクとかあるし、これに家族を巻き込みたくない。」
「いやっ、たこ焼き屋をやる夢を見ているのは自分だけでなく、既に松村さんや藤森まで巻き込んでしまっている。ここで辞めるのは失礼になるから、言い出したからには最後までやらなければ・・・」
こんなことをもやもやとマホーンの嫁に話すと一言返ってきた。
「何が言いたいのか良くわからないけど、会社を辞める前には相談してね。何より飲食なんて大変だからサラリーマンがいいって。」
まさにその通りだとマホーンは思った。ますます自分はどうするべきなのかさっぱり分からない。そして家にたこ焼き用の鉄板が藤森から届けられた。