熱く生きる
松村はまたビールを飲み干した。もう10杯目くらいだと思う。そして吐き捨てるように言った。
「基本みんなつまんねーんだよ世の中なんて、仕事しなきゃいけねーだろ。楽しいとかやりたい仕事って後付なんだよ。俺パスタとか別に好きじゃなかったぜ。むしろラーメンだな。タバコと酒とラーメンさ。昔の俺はそうだった。けどパスタ屋始めて楽しかった。いい仲間が出来たからさ。そういうことだろきっと。俺は楽しいぜ、今若い店の女の子とアイドルの話したりよ、たまに店の酒勝手に飲んだりよ。マホーンは仕事つまんないって勝手に思い込んでる分、自分でつまんなくしてんじゃねーのか?」
「いやっ、熱くなれないってことです。熱中できないんです。」
松村は黙った。ちょっと悲しそうな顔をした。そして大爆笑。目は涙目である。
「俺マジうけんな?今の俺熱くないだろ?」
マホーンは笑いながら答えた。
「モチロン、むしろドン引きっす。いいおじさんがバイトの子とおしゃべりして、店の酒勝手に飲んじゃったり結構犯罪ですよそれ。楽しそうですが。キャバクラ?」
そして続けた。
「一緒になんか商売やりませんか?」
マホーンには金があった。6年も駐在員として海外勤務をしていたためである。
松村がこういった。
「いいけどよ、何やんだよ。」
「・・・・・たこ焼きです。」
「ラーメンにしようぜ。同級生の河西入れてさ。」
「やるからには儲からないとだめなんです。松村さんにはたこを焼いて家族を養ってもらわないと」
「おい、俺が焼くのか?マホーンは会社どーすんだよ?」
「俺は会社辞めません。いろいろ考えても結局また大人の敷いたレールから外れることが出来ないっすよ。今度は最初からはっきりしときます。んで、別に松村さん焼かなくてもいいけど、誰か信用の置ける飲食経験者知ってますか?」
「ちょっと待てよ、たこ焼きもラーメンもおんなじ様なもんだろ。ラーメンにしようぜ。俺ラーメン屋でバイトしたことあるしよ。」
「えーっと、どっちでもいいっちゃいいんですけど、何のために商売を始めるかをまず決めませんか?」
「ほら、たこ焼きって原価が安いんすよ。ラーメンだと3割位でしょ?」
「そうだな、人件費とか店舗賃借料含まずって話だよな。」
「そこがポイントらしいんですよ。たこ焼き屋って食べる場所いらないでしょ。んで必要なのは鉄板と材料置き場くらいで。」
「4平方メートルくらいだろうな、したら1ヶ月10万円くらいかもな。確かに社員もいらねーしな。1人でもやれそうだよな。
月25万以上稼ぐには何個売ればいいんだ?ってか小麦粉っていくら位する?」
マホーンはなんかすんなり話が進んでびっくりした。というか動揺した。
「藤森に聞いてみましょうよ!」