中国人について
そして村松は話し始めた。
「いや実際はよ、俺結婚したときバイトだったじゃんか、今は事業主ってか社長みたいなもんでさ。きっと自分で勘違いしちまったんだよな。
今の自分は今の家族を作った時のバイトの自分とは違うってさ。金はあるだろ、だから離れても仕送りとか慰謝料払えばそれでいいんじゃないかってさ。
前マホーンも言ってたろ、中国にいる単身赴任の駐在員は小銭持ちになるから愛人と暮らすってさ。愛人も金が貰えて、いい家に住めてそれで幸せなんだって。けど男の方は理想家だから、そこら辺盲目でってよ。ほんとに相思相愛だって勘違いするんだ。
んで日本に残した家族と離婚して、その娘と結婚したら田舎町から家族が10人位やってきて一緒に暮らしつつ、その娘の親戚の子の学費とかまで面倒を見ることになるって・・・。しまいに任期が終わって日本に帰ったら、家族はともかく嫁まで中国に残るってさ。ほんとそんな感じだよ。
俺リンリンと武漢まで行ったんだ。市内からバスで7時間の村なんだけどさ、村中すげー大歓迎なんだよ。赤い垂れ幕があってさ、「ようこそ村松先生」だよ。笑っちゃうだろ。そんで毎日親戚らしき人と酒飲んでさ、寝て起きて畑手伝ってってさ。
毎日そんなんなんだよ。で俺気付いたんだよ。俺のこと好きになったのってか、気に入られたのは村にだってことにさ。リンリンじゃねーんだよ。ちょっと小金のある労働力として気に入られてるんだってさ。結局、俺じゃなくてもいいんだよ。誰でもいい。金があって畑仕事が出来ればさ。
俺のロックは終わったって。気がついたんだ。
・・・したらさ、大切なものが見えてきたんだ。そんなメガネを手にしたんだ。