あれっ、たこ焼き美味しくないぞ
翌日の夜、藤森とマホーンは大衆居酒屋で食事を取ることにした。
ビールを一杯飲み終えたところでマホーンは藤森に聞いた。
「あのさ藤森、最近松村さんに会った?」
「いやぁ、俺忙しくて全然会ってもないですよ。てか物件そろそろ内装完了っすよ。手続き関係も後は食品営業許可書だけなんで、早ければ後2週間っすね。」
「凄いな藤森!さすがだよ。」
と、マホーンはとりあえず藤森を褒めてはみたが、どうも自分の気持ちが乗ってこないのを感じていた。
「あれっ、マホーンさん何か心配事でもあんの?今日急に呼び出したりさ。」
藤森はさすがだ。既に勘付いていた。
「松村さんのタコ焼き食べたんだけどさ・・・。」
マホーンはことの経緯を藤森に話した。
「・・・。」
沈黙が続く。
藤森が口を開いた
「そのリンリンって子を雇いませんか?」
「俺今からたこ焼きやく練習してもオープンまで間に合いませんよきっと。もちろんやる気はあるんですけど、現実的に考えてさ。まだ店も完全に出来てないし、広告とかも準備した方がいいっすから。」
「なあ藤森、松村さんって味音痴なの?パスタ屋でずっとやってたじゃん。」
「えーっと、味音痴っていうか松村が働くパスタ屋って全部マニュアルがあるんすよ。マホーンさんも昔やってたから良く知ってると思いますけど、例えば麺をゆで始めて6分したら茹で上がりブザーが鳴ったりさ。材料もオリーブオイルは1スプーンとか、トマトソースは2スプーンとか。しかもソース類は全部本部からパック詰めされてくるのを使うだけじゃないっすか?だから誰でも作れるんですよね。工場みたいな感じですか。」
「工場なぁ・・。たこ焼きは職人技が必要だったってわけか・・。」マホーンは落ちた気持ちがどこまでも落ちていくのが分かった。そしてビールも止まらない。
「たこ焼きが普通に作れない人がいるってのは、俺もノーマークでしたね。だってチェーン店だってあるじゃないですかたこ焼き屋って。」藤森もひたすらビールを飲んでいる。
「ねっ、ほんとだよね。たこ焼きがそんなに奥の深いものだったとは。」




