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表彰式


「アンタ、あれって私の為なわけ?」

生活費をまかなうために、短くなった私の髪を

受賞パーティに行くために、整えてくれているヴォーチェさんが聞いてくる。

「“あれ”とは?」

「前に、橋渡し役の人間に、“下等生物にんげんを用立てろ”って言ってたじゃない。」

そんなことも言ったなぁ。アランさんへのカマかけの意味もあったけど……実験動物になりたくないしな、私。

「それもありますけど、私のためでもあります。私も見てみたいんです。人間が幻想種になるところ。」

ヴォーチェさんの手がピタッと止まる。

「アンタ……“いい性格”してきたわね。」

「おかげさまで。」

「本当、妹に似ても似つかないわ。……ほら、できたわよ。」

髪型を鏡で確認する。

「それにしても、橋渡し役の人間ってば、すごいわね。“独占欲”丸出しじゃない。」

いま着ているドレスやアクセサリーは、アランさんからのプレゼントだ。

“ドレスも装飾品も、全て売ってしまってパーティに行けない”と出席を断ろうとしたら、後日、研究所宛に届いたのである。

「あいつの髪色きみどりの様なカラードレスに、瞳色サンゴのアクセサリー。ま、パーティの主役が不参加なんて、ありえないわよね。」


――――


パーティに会場入りし、表彰式の前に飲食や歓談を楽しむ。

……のは、一般的(?)な貴族のすごし方だ。

研究所のみんなは違った。

「タダで食べれるほど、美味いものはない!みんな、胃袋がはち切れても、食べる手を休めるんじゃないぞ!」

「「サー!イエッサー!!」」

テーブルにある食べ物を全て食べ尽くすんじゃないかと思う勢いで食べていく所長、ヴォルペさん、そしてヴォーチェさん。

「オルソさんは、食べないんですか?」

「うん。お腹いっぱいになって、吐き出したらもったいないし、タッパー持ってきたし。」

強かである。

“飲み物取ってくるね”とオルソさんが離れて数分、私に近づく“誰か”

「……モーリー?モーリーじゃないか、どうしてこんなところに?君が来れるような場所じゃないだろ?誰かの付き添いかい?でも、君と会えるなんて、おれは神に見放されてなかったんだね!」


ピーチピンクの髪色に、くすんだ青い瞳の青年が、ニヤニヤと気色悪い笑みを浮かべながら

“キャロルは魔女だった。今は醜い家畜に成り下がっている”だの、

“お父様やお母様は、おれを責めるけど、おれのせいじゃない!君ならわかってくれるだろう?”と延々と、一方的に自分の近況をまくし立ててくる。

「モーリー、おれは……君のことを許すよ。戻ってきていいんだ!“魔女キャロル”は、いつか必ず追い出してあげるからね!どんな醜い本性を隠している君でも、おれだけが君を愛せるんだ……!」

ギラついた目で青年が、私を見つめる。

「……?あの、大変申し訳ないのですが、どちら様でしょうか?」

「へ?」

間抜けな声を出す彼。

私にこんなパサパサの髪で、ギョロギョロとした目に、コケた頬をしている知り合いはいないと思うんだけど……

「確かに、私はモーリー“でした”。ですが、貴方を知りません。」

本気でわからない、という顔を見せると、彼の眉間にものすごい勢いでシワが寄った。

「バカにするのも大概にしろよ!いつもおれを見下しやがって!!」

そう言って、彼が右手を振りかぶる。

振りかぶった右手は、何者かに掴まれた。

「おれの邪魔をするな!!」

「君は、“パーティの邪魔”だから出てってもらおうか。」

“正装”をしたアランさんが青年を止めてくれ、警備隊に引き渡す。

「危ないところだったね、マーノさん。いや、モーリー嬢。」

「……どうして、私の名前を?」

「それは、“王子特権”ってやつさ。オルソさんが戻ってきたみたいだね。それじゃ、また後で。」


表彰式で国の偉い人達から、言葉を送られる。

そして、アナウンスの言葉で、より一層会場が盛り上がった。


―――今回の主役である、“モーリー・トレバー”さんへ、我が国の第二王子、アラン様より花束の進呈です!



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