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強いひと


食堂で解散し、与えられた自室のベッドに倒れ込む。

久しぶりのちゃんとした寝床だ。

そういえば、朝は何時に起きればいいんだろうかと、考えていたら、いつの間にか寝落ちしていた。


日が登り始めた頃、パッと目が覚める。

習慣というのは、なかなか抜けない。

のそりと立ち上がり、部屋を出てみる。

食堂に明かりがついてるのが見えたので覗くと、オルソさんとヴォルペさんがコーヒーを飲んでいた。

私に気付いたオルソさんが、声をかけてくれた。

「どうした。」

「へ?…んぁ!マーノちん、おはよぉ〜寝れた?」

「眠れてないから、こんな時間に起きてきたんだろう。」

「えっ人間て、まだ寝てる時間なの?」

人間の生態に詳しくないのか、二人でああでもないこうでもないと話し合っている。

「昔の習慣で目が覚めてしまっただけなので、お気になさらず。……仕事の都合で、この時間に起きる人間もいますよ、ヴォルペさん。」

“個体別で起きる時間がバラバラなんて、不思議な生態〜”と伸びをしながら答えるヴォルペさん。

「お二人は?」

「オレっちたちは、夜行性だからさ、この時間が活動時間ってわけ!」

なるほど、クマとキツネだもんな。

「マーノもコーヒー飲むか?」

「いただきます。」

「オルソのコーヒーはハチミツ入りだから、砂糖は不要だぜ、マーノちん!」

……やっぱりハチミツが好きなんだろうか。

「…糖分入れると、頭が回るから入れてるだけだよ。気をつけて飲めよ、マーノ。」

「いただきます。」

……想像していたよりも、どろっとしてた。

ハチミツ入りのコーヒーというより、コーヒー入りハチミツと言われた方がしっくりくる。

「……“気をつけて飲め”って吹き出す可能性があるっていう意味だったんですか?オルソさん。」

腹を抱えて笑うヴォルペさんを横目に、オルソさんを見る。

「いや……すまん。人間は、もっと液体状じゃないとダメなんだよな、失念していた。」

申し訳なさそうに、ぽりぽりと自分の頬をかくオルソさん。

本当に人間に詳しくないんだな……少し疑問だったことを聞いてみる。

「この研究所って“人間種”は、いないんですか?」

「前は何人か居たが、別の研究所に移動になったり、地元に帰ったりして、今はマーノだけだな。」

「ヴォーチェちゃん、大の人間嫌いで、あたりが強いし、所長も“ほどほどにね〜”って言って、それっきりだったりするから、中々居着かなくってねぇ〜」

「ヴォーチェさん、人間に何かされたんですか?」

「そうそう、人魚の一種だと勘違いされて、一族ほとんど乱獲されちゃってさ、ヴォーチェちゃんも妹ちゃんと一緒に捕まって、違う研究所の“実験対象モルモット”だったんだよね〜」

軽々しく話す内容ではないと思うが、こういう話を他人から聞いても良かったんだろうか?

「ヴォーチェさん、壮絶な経験されてたんですね……」

「だよねぇ、先に実験“されてた”妹ちゃんの声とかさ、まだ耳の奥に残ってるって言ってたもん。オレっちだったら“人間嫌い”とかじゃなくて、“人間怖い”だよ、ホント。」

人間の私でも“人間怖トラウマい”になってしまう。

「……強いですね、ヴォーチェさんは。」

二人が少し驚いたような顔をした気がする。

「そ〜なの!ヴォーチェちゃんって強いのよ!」

「ああ、強いんだ。」

なんだか、二人とも嬉しそうだな。


少しだけ二度寝をして、八時くらいに身支度を整え、食堂に行ってみる。

今度は、エイブリー所長とヴォーチェさんが朝食をとっているところだった。

「マーノおはよ。そういえば、就業時間を伝えてなかったね。昼行性の種族は、朝の九時ぐらいから十八時ぐらいまで、夜行性の種族は、夕方の十六時から二十四時まで。昼行性と夜行性が被ってる二時間で、研究の進捗や情報を共有する。」

“まあ、時間はあくまで目安だけどね”と一言付け加える所長。

ふと、今朝のことを思い出す。

「でも、オルソさんもヴォルペさんも、今朝コーヒー飲んでましたよ?」

「アイツら〜!朝ふかしは、集中力の妨げになるからやめろって言ってんのに〜!!」

夜ふかしの朝バージョンということだろうか?


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