表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/23

【元婚約者視点】“取り戻さなければ”


モーリーと婚約破棄してから数ヶ月。

相変わらずキャロラインは、仕事を手伝ってはくれない。

それどころか、“構ってくれない”とドレスに宝石にと散財したり、他所に恋人を作り始めた。

他所の恋人に入れあげてるのか、毎日のように小遣いをせびってくるせいで、家の財産が少し危ない。


……しかも、最初は、全てを包み込むようなバスト、くびれたウエスト、つきあがったヒップが

ここ数ヶ月でだらしない胸、もう一つ胸ができたのかと思わせる腹周り、垂れ下がった尻……

丸々と肥えた家畜にしか見えなくなってきた。

「“早く、結婚式を挙げましょ!”」とキャロラインから強請られているが、とてもじゃないが、そんな気になれない。


モーリーは、文句も言わずに僕に任せられた仕事を、黙々とこなしてたのに……

彼女ができてたのなら、おれにもできるはずと彼女の書類を見てみたけれど、ちっともわからなかった。

モーリーは勝手に書き換えてたんだろうか?

……こんなことならお父様たちの言う通り、キャロラインを“恋人”のままにした方が良かったのか……?


数日後、表彰式の招待状が送られてきた。

「論文発表会で、優秀な成績を収めた“マーノ・コノシェンツァ”を表彰する……」

キャロラインが「“パーティ!?行きたい、行きたい!!”」と騒いでいたが、一緒に登城したくなかった。

さすがに、その体型で着れるドレスなんてないだろうとは言えなかった。


―――


表彰式の会場で、料理が並んでいるテーブルになんだか見覚えのある顔を見つける。

……髪の長さは違うけれど、モーリーじゃないか?

これはきっと“運命”だ、日頃がんばっているおれに、神様が「“もう一度モーリーとやり直しなさい”」という思し召しだ!

クマの獣人が邪魔だな……

なんて思っていたら、クマの獣人が離れていった。やはり!神の思し召しだ!

後ろからそっとモーリーに近づく。

「……モーリー?モーリーじゃないか、どうしてこんなところに?君が来れるような場所じゃないだろ?誰かの付き添いかい?でも、君と会えたなんて、おれは神に見放されてなかったんだね!

聞いてくれ、モーリー。キャロルは魔女だった。

おれの仕事の手伝いもせずに、今は醜い家畜に成り下がっている。

お父様やお母様は、最初こそおれを褒めてくださったのに、「“モーリーよりも仕事をしない!”」と責めるけど、僕のせいじゃない!

君ならわかってくれるだろう?」

モーリーはおれの話を遮らず、うんうんと聞いてくれる。

キャロラインは、「“そんなことより、ヘイズさまぁ”」と遮るから、話した気になれないんだよな。

やっぱり、“モーリー”は“おれ”じゃなきゃダメなんだ!

「モーリー、おれは……君のことを許すよ。戻ってきていいんだ!“魔女キャロル”は、いつか必ず追い出してあげるからね!どんな醜い本性を隠している君でも、おれだけが君を愛せるんだ……!」

真剣な眼差しで、モーリーを見つめる。

こんなに真摯に“君に慈悲をかけてあげる”と言ってあげれば、彼女も戻ってくるだろう。

「……?あの、大変申し訳ないのですが、どちら様でしょうか?」


「へ?」


つい、間抜けな声を出てしまった。


「確かに、私はモーリー“でした”。ですが、貴方を知りません。」


本気でわからない、という顔をしているモーリーが無性に腹立たしく思える。

「……バカにするのも大概にしろよ!いつもおれを見下しやがって!!」

どうやら彼女は、拗ねているらしい。

まだおれの事を想ってくれてるだなんて、思ってなかった!

しかしモーリーは、おれを怒らせてしまった、ならば“お仕置”しないといけない。

昔は、「“ごめんなさい、ちゃんと言うことを聞きます”」と素直だったのに……

自分の立場を分からせなければ!


振りかぶった右手は、何者かに掴まれた。

「おれの邪魔をするな!!」

誰だ!おれは公爵家跡取りだぞ!おれに刃向かっていいやつなんていないんだぞ!!

「君は、“パーティの邪魔”だから出てってもらおうか。」

やたら顔のいい護衛かと思ったが、護衛とは明らかに違う、きらびやかな正装。

若緑色の髪に、珊瑚の目の色……

第二王子だった。

クソ、権力しか取り柄がないくせに……ヒーロー気取りかよ。


警備隊に引き渡され、出口へと連れて行かれる。

「あのぉ、すみません。どうやら酔ってたみたいで、酔いがさめてきましたぁ……

それでですね、ちょーっと飲みすぎたみたいで、その……お手洗いをお願いしても……?」

酔ってたなんて嘘だ、しかしそんなことはどうでもいい。

警備隊は嫌な顔を隠さず、舌打ちをしながらも、お手洗いの前で「“さっさとしろ”」と拘束を解く。


一刻も早くこいつらから逃げ出して、モーリー“取り戻さなければ”!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ