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【アラン視点】僕は彼女の運命


「―――モーリー・トレバー、お前との婚約を破棄する。」


家の繋がりのための政略結婚、よくある話だ。

互いに愛なんてない、外に恋人を作っている。

これもよくある話だ。

――本当に、最近流行りの物語のようなことをする愚者バカがいるとは思わなかった。


婚約破棄を言い渡された令嬢は、絶望した顔をした後に、全てを諦めたような顔へ変わっていった。

泣き叫んだり、それこそ流行りの物語では、笑顔になったりなど、感情豊かな表現がされているのに

彼女はそれのどれにも当てはまらなかった。


彼女が気になる。


元婚約者に言いたいことを言った彼女は、その場を去っていった。

一瞬だけ、彼女と目線があった。

……この見つめ合いで僕は、彼女の運命になれるだろうか?


パーティが終わってすぐに彼女のことを調べさせる。

領地の場所、家族構成、元婚約者との婚約の経緯、家族の中での彼女の扱い。

調べるほどに、モーリーは“優秀”だ。

しかし、周囲の人間から“凡人以下”の扱いを受けている。

一番酷いのは、元婚約者からの扱いだな。

ヘイズは、自分の仕事をほぼ彼女に丸投げしていたくせに、「“自分に構ってくれない”」と外で恋人を作ったらしい。

彼が愚かで良かった。

モーリーにもっと相応しい場所を、僕が用意しよう!

彼女もきっと喜んでくれるはずだ。


モーリーの消息を掴めなくなって数週間が過ぎ、やっと居場所を突き止めた。

“魔法道具研究所”という所で今は過ごしているらしい。

研究所か……なら、王家と合同研究という事で話を持ちかけてみよう。

研究所に派遣されるのはもちろん僕だ。

合同研究の発表の場を設けて、そこでモーリーが表彰されれば、彼女は僕の隣にいてもおかしくない存在になれる。

一石二鳥だ!


モーリーは“マーノ”という偽名を使っていた。

道理で居所が掴みづらいはずだ。

「で、所長。隣の方は?」

クマの獣人が所長に僕の紹介を促す。

「忘れてた、王国の研究所と、ここの橋渡し役をしてくれる“エレン”さんだ!」

「“アラン”です。」

「……アランさんだ!」

モーリーの瞳に僕が映る。君の運命ぼくが迎えに来たよ。


研究所での彼女もやはり優秀だった!

こじつけた研究テーマの課題を明確に視覚化し、独自の視点で、周りにヒントを与える。

輝く彼女の役に少しでも立ちたくて、魔石に魔力を注入する役目を請け負う。

込めた魔力量が少し多かったのか、暴発してしまった。

危うく彼女に怪我をさせるところだった!

オルソさんには感謝しないといけないのに、僕がモーリーを庇いたかったという嫉妬が渦巻く。

「……お気遣い感謝します。……マーノさんも、あとから不調が出てきたら、すぐに教えてください。“責任”を取らせていただきたい。」

「“私を傷物にしたのだから、身請けしてください”」ということなら喜んで引き受けるのに。

言われた要望は「“貧困街の人間を一人”」

彼女がそんなものを欲しがるとは思えないから、誰かの研究のために用立ててほしいんだと、すぐに気づいた。

早く研究所からモーリーを連れ出さなければ、思考がここに侵食されている。


論文発表会で“発表賞”をとったモーリーのために、表彰式が行われる。

しかし彼女は「”髪の長さもこんなですし、パーティに出れる様なドレスもアクセサリーもないので、不参加ってできませんかね?“」なんて言ってきた。

急いで国一番の仕立て屋と、宝石商を呼んでモーリーに似合いそうなものを選んで研究所に送った。

僕の色に身を包んだ彼女はきっと、素敵なんだろうな。


表彰式の前

見るに堪えない姿の元婚約者ヘイズに襲われているモーリーを今度は助けることができた。

「危ないところだったね、マーノさん。いや、モーリー嬢。」

「……どうして、私の名前を?」

「それは、“王子特権”ってやつさ。オルソさんが戻ってきたみたいだね。それじゃ、また後で。」

今の言葉で、彼女にも僕の正体がわかっただろう。

あともう少しだ。会場にアナウンスが流れる。


――今回の主役である、“モーリー・トレバー”さんへ、我が国の第二王子、アラン様より花束の進呈です!

舞台は整った。

僕との新しい人生の幕開けだよ、モーリー!


僕の控え室に来てくれた彼女の、開口一番のセリフは、僕の思い描いたものではなかった。

「表彰式の時、私の名前が違ったのは、どうしてですか?」

「そろそろ君も、社交界に帰ってきてもいい頃だと思ってね。それにしても、名前が変わってるだなんて思いもしなかったから、探し出すのに苦労したよ!でも大丈夫、これで心置きなく社交界に戻ってこれるよ!そのために、がんばって論文も書き上げたんだよね、モーリーは本当にすごいよ!」

少し俯いていた彼女の顔が上がる。

ああ、このドレスとアクセサリー一式を贈って良かったな。まるで僕の婚約者みたいだ!


「……機会をいただき光栄です。」


やっぱり僕が思い描いてた通りに――

『“こんな機会をいただき光栄です。まさか貴方が、第二王子だなんて……知らなかったとはいえ、数々の御無礼お許しください。どうか、こんな私をこれからもお側に置いてください!”』

――と言ってくれるんだろうか!


「……ですが、大変迷惑ですので、金輪際私に関わらないでください。」


……モーリーは一体何を言ってるんだ?


「どうして、そんなことを言うだい?僕は君のことを思って―――」

「……不愉快極まりない!貴方の自己満足を、私に押し付けないでください!私は、そんなこと望んでなかった!」

――違う!僕のモーリーは!僕に向かってこんな事を言うはずない!

照れてはにかんだ様な目をしているはずなのに、怒りに満ちた目で僕を見てるなんて、こんなことあってはならない!

ハッと我に返った時には、モーリーの姿はなく、贈ったはずの装飾品一式がテーブルの上に置いてあり、後日ドレスも送り返され、また、深い絶望に沈むこととなった。



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