表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/23

大切な名前


頭が真っ白になる。

―――どうして、“マーノ・コノシェンツァ”で論文を出したはずなのに、“モーリー・トレバー”なんだ!

所長が、わざわざ苗字を使わせてくれたのに!

招待客も“モーリーってあのモーリー?”“なんか雰囲気変わったな”とザワザワしている。

満足そうな顔で、花束を渡してくるアラン“王子”に怒りしか湧いてこない。

以前、婚約破棄された王家主催のパーティのことを根に持っていて、その仕返しだろうか?

王子に一歩近付き、“あとで話があります”と小声で話す。

より一層、柔らかい笑みを浮かべたアラン王子に、周りが頬を染めたり、ほぅと息を漏らす。

こちらはそれどころではない、不敬罪に問われない程度の暴言を選んでいるからだ。


表彰式が終わり、アラン王子の控え室に案内される。気持ちを落ち着かせるために息を深く吐き、アラン王子に問いかける。

「……何故、正体を隠して研究所に入り込んだのでしょうか?」

「以前、王家主催のパーティで、公爵家と伯爵家の婚約破棄騒動があっただろう?あの時に、君を見つけてね、気になってたんだ。」

少し照れたような顔で答えるアラン王子。

……あの時の不愉快な視線は、この人だったのか。

「表彰式の時、私の名前が違ったのはどうしてですか?」

「そろそろ君も、社交界に帰ってきてもいい頃だと思ってね。」

“それにしても、名前が変わってるだなんて思いもしなかった”

後半の話は、耳に入ってこなかった。

それよりこの人は、私がもらった大切な名前を勝手に変えた!私の断りもなく!

私が“不要”だと切り捨てたものを勝手に拾い上げて、また私に押し付けようとしてきた!

なんで、私が望んでいないことを、『私が望んでいる』と勝手に思い込んで、行動するんだ!私の意思はどうなる!?

怒りで震える声を振り絞る

「……機会をいただき光栄です……ですが、大変迷惑ですので、金輪際私に関わらないでください。」

あまりにも怒りにとらわれると、言いたいことが出てこない。

何を言われているの理解していない顔で、私を見ている。

それさえも腹立たしい!

「どうして、そんなことを言うだい?僕は君のことを思って―――」

「……不愉快極まりない!貴方の自己満足を、私に押し付けないでください!私は、そんなこと望んでなかった!」

アラン王子が“違う”とか“こんなはずじゃ”などぶつぶつ言っている。

“お返しします”と言って、装飾品を全てテーブルの上に置く。

本当は投げつけてやりたかった。

ドレスも、クリーニングしたあと、送り返す予定だ。

顔がみるみるうちに青くなり、口を開けたり閉じたりを繰り返している。

まるで陸に打ち上げられ魚のようだ。

同情を誘う魂胆だろうか?

そんなアラン王子を無視して、控え室から出ていく。


なんだか無性に、研究所のみんなに会いたい。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ